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これがいい、これでいい。

叶えられなかった夢のこと

「大きくなったら何になりたい?」
幼稚園や保育園では定番の質問である。
パン屋さん、お花屋さん、警察官、最近ではYouTuberなど。
初志貫徹、夢を叶える子供もいるのだろうけど、大概は成長するにつれ、現実を知り、視野が広がり、未就学児だった頃の夢の職業とは異なる職業で生計を立てているのだろう。自分もそのうちのひとり。今回はそんな、夢の職業のことについて。


書店にて

なんでもない休日、ショッピングモールの書店で日本史の資料集を読み漁っていたら、館内アナウンスが流れた。どうやら、15分後に地元出身の漫画家がトークショーを開催するらしい。この後の予定もないし、どんなもんかと覗いてみることにした。
看板の名前を見て、もしやと思う。登場して顔を見て、確信へと変わった。高校の同級生や。

トークショーは進行役の店長が質問役で、漫画家、編集担当がそれぞれ答えていく流れで進んでいく。漫画家になろうと思ったきっかけ、その後上京、下積み時代の苦労、デビューする経緯などを語っていた。

確かに、高校時代は自分の方が勉強ができた、と思っている。ただ、同級生は勉強よりも大事な芯を自分の中へ持っていて、世界で1番自分が絵が上手いと信じて信じて信じ続けて、夢を叶えたのだろう。元から見ている世界も向いてるベクトルも違っていたのだろう。凄いなあ、いいなぁ、羨望と嫉妬が混ざり合う感情。ちょっとだけ自分が嫌になった。

自己との対比

自分のことを考えてみる。
就職活動から新卒入社、転職で今の職業に至るまでは何かがうまくいった試しがあまりなくて、仕事面では良い思い出が少ない。就職活動では東京で心が折れ、新卒入社の会社では結果が出せず、合わないなあと思って転職。「これでいい」と、自分ができること、できそうなこと、僅かな自分のプライドが保てること、自分自身で納得できること、、、、いろんなことの折り合いをつけて、自分なりに納得した答えを出してきた。それはそれで幸せではあるけれど、自分が信じた「これがいい」という答えに対して向き合う前に逃げてしまった思いが付き纏っている、今でも。

それに対して同級生は、「これがいい」をひたすらに追い求め、折れることなく進んで、結果を出している。トークショーにゲストとして招かれている立場と、いち観客としての自分、そのコントラストが大きな溝のように思えて、向こう側が眩しかった。

あなたがいい、と必要とされ、作品を手に取ってもらえるのはどんなに幸せなことだろうか。
今の職業は別に自分がいなくなっても組織は回る。それもそれで良い面もあるけどね。


「東京で夢、叶えました」


トークショーの最後に言われた言葉。
俺も言ってみたかったよ、こんちくしょう。


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