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大腿骨頚部骨折保存療法に暗い気持ちになる理由

脳卒中後自宅介護中だった母が大腿骨頚部骨折と言われて入院したのは約1か月前。
手術をせずに保存療法になりました。
リハビリしているそうです。

そう話すと手術をしないで済んで良かったわねという人もいます。
ところが、私は整形外科医としては暗い気持ちになるのです。

大腿骨頚部骨折は高齢者の女性に多い骨折です。
骨粗鬆症にある高齢者の女性に多い骨折としては
カラダの頭の方から
1.上腕骨頚部骨折(腕の付け根の骨折)
2.橈骨遠位端骨折(手首の骨折)
3.脊椎圧迫骨折(背骨の骨折)
4.大腿骨頚部骨折(足の付け根の骨折)

1から3は保存療法、つまり手術しないで保存療法が選ばれることが多いです。そして早く活動性も取り戻す。つまり歩くことが求められます。
ところが、4については、どんな高齢者でもまず手術が選択されます。
痛みが強く歩行ができないため、リハビリが遅れるからです。
いくらベッド上でを動かしたり、骨折しないほうの足を動かしたりしてくれても、活動性は高まりません。
寝たきりになっている高齢者は肺炎、褥瘡、認知症の進行を起こしやすく、食欲低下⇒誤嚥しやすい状態⇒肺炎
天井ばかり見ている⇒自発性低下⇒認知症の低下、生きる気力がなくなる
と一気に生き生きした状態からただの寝ているだけの人になるのです。

つまり、もう長く生きられない、手術する価値はないとの判断から保存療法が選択されるのです。整形外科としてはもうやることはないのでしょう(実際整形外科が主治医ではありません)

母は、入院前は要介護でしたが、家族や地域の支援者の人たちの働きかけでトイレに行ったり、お食事したり、生活を楽しんでいたのです。

毎週Zoom面会していますが、次第に言葉が少なくなり表情が無くなる母を見ていると病院での保存療法が母にもたらした影響は大きと感じています。

保存療法で、もう一度歩くまで入院したいなんて欲を出すよりも、穏やかに自宅での生活にもどることが大切になってきます。

さあ、これからは家族と介護の出番です。
お母さん待っていてね。
またお母さんの笑顔が見たいから。


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