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訓練はすればするほど良いわけではありません

リハビリテーション科診療をしていると、
「徐々に体が動かなくなってきた○○さん、リハビリをお願いします」と依頼があります。
高齢の患者さんで自粛や家庭内の役割の喪失、自粛などで過度に安静をとっていると廃用症候群、フレイルという状態になり、エキセサイズや活動を加えることで、少しづつ改善していくことがあります。

一方、ALS,ポストポリオ症候群のようにむやみに訓練を勧めてはいけない疾患があります。リハビリテーション訓練をがんばれば良い結果がでるとばかりに。次の日に疲れが残っても訓練を行うと運動神経が疲労、消耗して筋肉は委縮し、マヒは進行します。


今回はポストポリオ症候群についてご紹介します。

ポリオ(小児麻痺)の方で高校生ではテニスや剣道していた方でも50-60歳台になり、以前のように動けなくなるときがきます。不自由だった足が再度麻痺が進行していくのです。ポストポリオ症候群と言われます。
その時にもともと頑張り屋さんのかたです。おそらく、軽微であっても障害があり、親御さんも熱心にリハビリテーションに協力したり、本人も頑張った。
歩きにくくなった時に、過剰な筋トレを勧められて、本人家族も良かれと思って頑張り、マヒが進行する事例があります。

ご家族は普通に働いているように見えたお父さん(あるいはお母さん)が、幼少のころ機能訓練を受けていたことは知らずに、運動会で走っているお父さん、いつもにこやかで子供を支えてくれたお母さんのイメージがあり、「年をとったからと言って怠けている」、「動かなくなったから動けないんだから年に負けないで」など、見当はずれの励ましの言葉はかけてしまいがちです。

患者さん達も、障害があったこと、それを克服して学業や仕事を全うしてきたことを、子供たちに十分に伝える機会がなかったかもしれません。

ポストポリオ症候群については当事者の声を見つけました。患者さんの会も活動しています。

http://www.zenkokupolio.com/pdf/kowakunai-hakkaniyosete.pdf

リハビリテーション科医師の対応

患者さんへの生活指導と環境設定になります。
重いものを持って歩かないこと、健康のために毎日散歩して疲れるのであれば、週2回に減らす、手すりやベッドの設置、装具作成などです。
装具や手すりに頼るのはいかがなものかという家族の方もいますので、上記のように説明を繰り返すことになります。
今まで頑張ってきたので、お休みが必要です。これからも長く暮らしていくために。

訓練処方だけがリハビリテーション科医師の仕事ではありません。
リハビリテーション科医師は障害がある人の生活を支えます。

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