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KOMA犬ストーリー(3)

吾輩は狛犬、某北国のある家の玄関を守っている。
生まれというかつくられたのは台湾で横浜でしばらく過ごして、この家の玄関前に祀られもう25年になる。
だれも吾輩に目を向けないし、気づかれないことが多い。

口の中に玉を含んでいる、石工は玉が動くように彫った。
牙があるため口からは吐き出せない玉を含んでいるのは、何でもかんでもぺらぺらと話してはいけないという戒めとされている。
阿形の狛犬である吾輩は、人の正しい生き方を諭すために玉を加えている。
でも、20年ほど前、吾輩にもう一つの玉を奉げてくれた女性がいた。

少女の泥団子

この家に小さい子供たちが遊びに来るようになった。
男の子も女の子も、庭を走り回る。
パーゴラに作られた鉄棒で逆上がり。
小さな砂場で穴を掘ったり、山をつくったり。
毎日10人くらいの子供が集まってくる。
その中で他の子とあまりしゃべらない女の子がいた。

この家のお母さんとテレビをみたりしている。同世代のことは遊ばない。
その少女がある日、小さい手で砂場の泥を使って泥団子を作っていた。
長い時間をかけて、硬くて丈夫な泥団子ができた。
本当はお母さんに見せたかったのかもしれないが、私の耳の中にそっと置いた。
少女の小さい手で作られた小さいけれど丈夫な玉。
口に含んだ玉がおしゃべりへの警告とすれば、耳におかれた泥団子の玉は噂好きに対しての戒めか?

少女が中学生になってからこの家に遊びに来ることも無くなった。
近くの中学校のジャージを着て友達と自転車で通り過ぎるだけ。
泥団子は3年くらいは私の耳においておかれたけれど、雪や風で少しづつ砂に戻っていった。

吾輩の耳にはもう玉はない。
でも、耳から聞いたことすべてが真実でないこと、自ら確かめることが大切なことは身動きできない吾輩も知っている。





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