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ペトラ遺跡によって物欲から解放されている

物欲の波が押し寄せたり、と思ったらとんでもなく遠いところまで引いて行ったりを繰り返す20代を送っている。だいたい半年くらいの周期で物欲がどっと押し寄せたり、逆になくなったりする。

今は物欲が引いている期間だ。1ヶ月前くらいまでは結構物欲があったはずなのだが、急に引いた。1ヶ月前からECの買い物かごに入れていたものを今眺めると、全然いらんな、なんでこんなもの買い物かごに入れたんだっけ、と思う。

ちなみに物欲がサーッと引くにもきっかけというものがある。「自分はこれにお金を使わないといけないから、いるかいらないかよくわからないようなものに迷いながらお金を使っている場合ではない」と思うような、細々としたモノへの物欲を圧倒的パワーでねじ伏せるお金の使い道、使うべき道を見つけたときだ。

こないだHISのサイトを見ていた。わたしは旅行が好きなので、ストレスが溜まっているとリラックスするために旅行サイトを眺めたりする。
HISには秘境ツアー専門デスクがある。秘境ツアーを眺めていて、ヨルダンのペトラ遺跡のツアーにビビッときた。絶対に行きたいと思った。
秘境ツアーはなにせ秘境ツアーなので基本的に料金が高い。秘境というからにはアクセスの悪いところにある。そしてアクセスの悪いところに行くには、乗り物を乗り継ぎ乗り継ぎする必要がある。乗り物のチャーター費用がかかったりするので必然的に金額が高くなる。

で、どれくらいの値段なのかというと、値段は日本からどれくらい遠い場所なのか、どれくらいの物価の国なのか、どれくらい乗り物をチャーターしなければならないかなど様々な要因によって左右されるが、例えばヨルダン(中東)だと、10日の日程かつひとり旅なら、80万円くらいだ。
あれ……?
80万円もペトラ遺跡に使うんだから、他のよくわからないものにお金使ってる場合じゃなくない……?
と気づき、それまでにあった有象無象の物欲がシュンと消えた。今や何が欲しかったのかすら全然覚えていない。ペトラ遺跡のことはずっと頭にある。

逆に、ペトラ遺跡に行くための装備にはお金を使わなければならないな、という気持ちになる。ペトラ遺跡は砂の上にあるので、砂の上をしっかり歩ける靴とか。ヨルダンの強い日差しから皮膚を守る帽子とか服とか。
逆に、ペトラ遺跡に関係ないものは全然欲しくなくなっている。楽天の買い物かごにはアクセサリーが入っていたけど、今や見れば見るほど必要だとは思えなくなっている。ペトラ遺跡に行くのにきらびやかなアクセサリーはいらないからだ。

これにお金を使う!(つまりこれ以外にはお金を使わない)という明確な指針があるとお金を使うことにストレスがなくなる。「これ買ったほうがいい……?」「これ買っちゃったけど、もしかして無駄遣いだった……?」といったような迷いがなくなるから。明確な指針による買い物は世界から祝福された買い物のように思えてとても気分がよくなる。人が滅入る大きな原因の一つが「自分で自分の行動を判断できない無力感」だ。まわりの目を気にして「これって買っといたほうがいい……?」と思いながらの買い物は気が滅入る。自分の判断ではないから。一方で「わたしはペトラ遺跡に行くことを決めたので、ペトラ遺跡に行くのに必要なものを買います」というポリシーのなんとシンプルかつ自分ごとなことか。全能感に満ち溢れてそりゃ世界に祝福されている気持ちにもなる。

次に物欲の波が再び来たときも、秘境デスクのツアーのサイトを眺めてみようと思う。もしかしたら今度はメキシコ古代文明の秘境ツアーとかに行きたくなって、また無駄遣いをしなくなるかも。

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