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銀河売りハヤトさん #シロクマ文芸部

 銀河売りは月の形をした銀河瓜のことです。まあ、ちょっとした駄洒落、いえいえ、粋なネーミングと言えましょうか。むかしむかしそのむかし、瓜は一本の木になりました。その木の管理人はハヤトさんで、実をとって売り歩くことも任されていました。略して銀河売りハヤトと名乗っていました。なんだかかっこいいですからね。

 ところでこれは不思議な瓜でした。かといって魔法の瓜でも、魔性の瓜でもありません。それに、食べるとばちばち弾けるとか、そんなヒネリもありませんでした。ただ、月の満ち欠けと全く同じ形に実ります。三日月の晩には三日月形に、満月の夜にはまんまるにという具合です。そして翌朝、ハヤトさんがその実を売り歩くのです。月の形ですから、新月の晩には何も実らないとお思いでしょうね。新月の晩には特別な実がなります。それがね、その月になって見ないとわからない実だったんです。一期一会ならぬ、一月一瓜、一銀河一形ということになりますね。

 そんな新月の翌日はハヤトさんがやってくるのをみんな心待ちしています。何せ特別な実ですから、みんな欲しい気持ちになるのです。先月は星の形をしていました。その前の月は真っ黒けで中身はみどり、そして大きな種がありました。半年ほど前には茶色い毛をいっぱい生やしていて、割ってみると一番星のような模様がある瓜だったんですよ。

 そして今月は、外見はシマシマで、割ってみると真っ赤でした。そしてまるで星空のように黒い種が散りばめられています。買った人たちが瑞々しくて美味しい美味しいと口々に言うので、ハヤトさんは、年老いたお母さんに食べさせてあげようと、ひとつだけ持って帰ることにしました。せっせと家に向かって歩いておりましたところ、途中の木陰で座り込んでいる熊と出会いました。どうしたんだい?と聞いてみると、喉がカラカラで動けないというのです。

 よくある話だなと思いますが、ハヤトさんは大変優しく慈悲深い人だったので、迷わず銀河売り(瓜)を渡しました。熊は喜んで遠慮なくガブガブといただきました。ありがたいありがたいと何遍もいっていました。

 あっという間に月日はながれ、あれから一年が経ちました。いつものようにハヤトさんが銀河売りから帰る途中、熊が声をかけてきました。
「ハヤトさん、一年前はありがとうございました。これお礼です。」
そうして、一年前の銀河売りとそっくりのシマシマな瓜を渡してきました。そうしてこういうのです。
「うちの畑にあの星のような黒い粒々を埋めておいたらこんなふうになりました。」
ハヤトさんは持って帰ってお母さんと一緒に食べました。うまいうまいと言いながら。

 それからというものです。ハヤトさんが新月の日にできた瓜を熊に届けるようになったのは。そして、その珍しい実が熊のもとから色々な人のもとに輪を広げて伝わっていったのも。あなたも不思議なその銀河売りを手にしているかもしれません。

小牧さん、どうもありがとうございます。
今週は小旅行中でかけないかなと思いましたが、出席できてよかったです😊

書けば書くほど、勝手気ままでどんどんmarmalade節になっていっているような気がしますが、とっても楽しい時間になっています。好きなだけ想像できますもの。

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