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イギリス暮らし 「Perfect days 」という映画に出会った午後
(3月の出来事です。もうずいぶん経ってしまいました。現在日本滞在中)
私の誕生日プレゼントで、湖水地方に行った時、ことのほか映画館での時間を楽しみました。その頃、週を半分に分けて、2拠点で暮らしていた私たち、なかなか自分たちの時間を楽しむ余裕がありませんでした。
そんな時、トラオさんが、「これ観に行きたい?」と誘ってくれたのは、役所広司さん主演の映画「Perfect Days」です。
この日まで全然この映画のことは知らなかったんですが(きっと話題作なのでご存知の方が多いでしょうね)日本語で観れるし、あらすじを読んでもとても面白そう。ということで、行ってきました♪
ひとことで言い表すなら、本当に良き映画でございました。
映画「Perfect Days」とは
ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースと
日本を代表する俳優 役所広司の美しきセッション。
フィクションの存在をドキュメントのように追う。
ドキュメントとフィクションを極めた
ヴェンダースにしか到達できない映画が生まれた。
カンヌ国際映画祭では、
ヴェンダースの最高傑作との呼び声も高く
世界80ヵ国の配給が決定。
映画を見なくても、この公式サイトだけでも十分に堪能できるかもしれません。完璧な日々、が何なのか、それを味わう、そんな映画です。
この映画、小津安二郎監督の生誕120年に合わせて2023年12月22日に公開されたそうです。ヴェンダース監督は小津監督に大きな影響を受けたそう。
「1977年に東京に来て、私は空き部屋を与えられ、字幕も英訳もない状態の作品を2日間かけて12作品ほど見ました。2日目には日本語が話せるような気になっていました。理解しなくてはならないとは、もはや考えませんでした。いずれにせよ、私は理解できていました。50作ほどの小津映画は、私の記憶の中ではすべてがひとつの大きな映画になっています。大きな映画のなかに、さまざまなバリエーションがあるという感じです」
中でも「東京物語」に感銘を受けて「東京画」という映画まで作ったヴェンダース監督は、このPerfect daysの端々に小津作品を意識したそうです。
「主人公の名前が平山なのは、『東京物語』を意識しています。いろいろな意味で小津映画への敬意を込めています。平山はシンプルなものを愛し、自然や、ちょっとした出来事にこだわりを持っています。小津作品の登場人物には、他の誰かよりも優れている人などいません。すべての人を、尊厳と敬意のまなざしをもって尊重しています」
これを機に小津作品も見てみたくなりました。
映画のあらすじ
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、
静かに淡々とした日々を生きていた。
同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。
その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、
同じ日は1日としてなく、
男は毎日を新しい日として生きていた。
その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。
木々がつくる木漏れ日に目を細めた。
そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。
それが男の過去を小さく揺らした。
淡々とした1日は、近所の掃き掃除をするほうきの音で目覚めるところから始まります。規則正しく身支度をし、一本の缶コーヒーを買ってその日の気分で選んだカセットテープをかけながら早朝の東京を車で進んでいきます。仕事は東京の公衆トイレの掃除をすること。毎日同じようで同じではない時間が、穏やかに流れていきます。
そんなある日、平山の姪が家出をしてやってきます。穏やかな日々に束の間差し込んだ色彩。
この映画の好きだったところ
最初はこの淡々とした時間が流れていくだけなのかしらと思っていました。けれど、あっという間にその静けさに引き込まれていきます。平山の贅沢は、毎日撮り溜めて現像するフィルムカメラ。撮るのは木。そして、古本屋で求める文庫本。紙を捲る音が聞こえるような日々はまさに静謐です。その居心地の良さは、何かをそぎ落とし続けたからこそ生まれたもの。平山は一番大切なものだけを身の回りに残しています。
その時間の流れを映像を通してみるという贅沢が観客には許されます。トラオさんはこの映画を観た後で、
「彼の方が僕より幸せかもしれない」
と言いました。それはきっと、こんな風にいきたいと願っても追いかけてくる欲のようなものに振り回されていないから、なのかもしれません。私もそんなこと感じていたから、こういった感覚は文化や国を超えるんだなと思いました。
カセットテープからの音楽がいい
タイトルソングはこちら。
どの挿入歌もとても心に沁みます。
♪Just a perfect day...
どの曲も素敵ですが、歌詞がグッとくるんです。
イギリスでも多くの人が楽しんでいました
この映画のこの感覚はとても日本人っぽいと思いましたが、そんなことはなかったようです。仲間できている若い女の子たちも、カップルも、中年のご夫婦も、いろんな世代のいろんな人たちが、イギリスの映画館でそれぞれの思いを胸にこの映画を楽しんでいました。映画館の中に生まれる空気のようなものが、誰もが楽しんでいることを伝えてきました。それは私にとってはとても不思議な感覚で、自分のこと「異邦人」だと思っていたけれど、そんな風に思う必要ないのかもななんて思ったりもしました。
きっと誰もが、「完璧な一日」を過ごすことの、簡単さと難しさを思ったことでしょう。
🎥
映画というと淀川長治さんの名台詞が頭をよぎる私です。
この映画は今はU-NEXTで見られるようです。
とはいえ、まだまだ劇場でも見られます(公式サイトで確認してくださいね)
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始まる前のコマーシャルが
とってもファンキーだった。
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円に換算すると高いですが、
11ポンドは決して高くないです。
(イギリス人の物価体感としては)
いただいたサポートは毎年娘の誕生日前後に行っている、こどもたちのための非営利機関へのドネーションの一部とさせていただく予定です。私の気持ちとあなたのやさしさをミックスしていっしょにドネーションいたします。