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脱徒然 1話「それは、つるむらさき」

「夏はつるむらさきだけ食べるんよ」
はじめて、つるむらさきという言葉を聞いて全くもって想像ができなかった。
芋の一種?キャベツ?茄子?
気になってそれについて聞いてみた。

ねばねばしている、夏に食べる、納豆嫌いでも食べられる

?が増えると同時にそれに対して、俄然興味がわいてきた。
オクラじゃだめなのかそれだけ食べてもおいしいのか。
大学の帰り道のスーパーでそれを探した。
だけど、それは見つからなかった。
どうしても買いたかった僕は、自転車でスーパーマーケットにまわれるだけまわり、それを探した。

そして、それは売っていた。
ほうれん草よりも細く、アスパラよりもなよなよしていて、でもどことなく栄養価の高そうなそれは存在感があった。
いや、探していたからより存在感があったのかもしれないが、嬉々としてそれを買った。食べ方まで聞いてなかったが炒飯にして食べた。

シャリ、、、、ネバ、、ネバ、、、

なるほど、新食感であった。シャキシャキ感と粘り気が癖になる。

つるむらさき

なぞなぞを外したような敗北を感じながらも、初めて出会ったそれはもうつるむらさきとしてしっかりと頭に刻まれたのだった。
知らないと思ったものへの興味はどこまでも想像を掻き立てる。それでも興味が最高に掻き立てられるのは、出会い方しだいだと思う。僕が買い物をしていたとしてつるむらさきに出会ったとしても多分、「それ」としか思わなかっただろう。「それ」が名前に代わる瞬間は出会った瞬間ではなく、探し当てた瞬間なのだろう。

「それ、おいしいの?」
「探して食べてみてよ」

ググらせずに教えてくれた彼女に感謝したい。

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