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脱徒然 3話「卒業式に一本のごぼう」

某ウイルスによって大学の卒業式は中止となった。
大学の卒業式にはもともと参加するつもりがなかったの。中止自体はまったくもってどうでも良いというのが本音である。しかし、晴れ着をキャンセルした話をしていた友達の悲しげな表情やどこにぶつけたらよいかわからない怒りと悲しみが充満したSNSのタイムラインを見るとやるせない気持ちになる。

いや、僕はごぼうの話がしたいのだ。

そう、あれは高校の卒業式。式を終えて懇親会のようなものに向かうために友達を待っていた僕は、後輩からごぼうを渡された。花束でもなく、近くのスーパーで急いで買ったのだろう見覚えのあるレジ袋から取り出されたのは一本のごぼうであった。
サプライズされて心底驚いたのはこれが初めてであった。何かと相手の行動に対して裏の意味が込められているんじゃないかとか疑う癖がある。そんな僕でさえこれはもう意味が分からな過ぎて笑ってしまった。その後輩の誠実さは信用に足るものだったので余計に笑ってしまった。してやられたのである。
サプライズの際、斬新さを求めたときに嬉しさを引き出すのはなかなかにハードルが高い。ドン引きと無関心の僅かな隙間にある嬉しさを引き出した後輩は今も元気だろうか。

事態が終息したらごぼう片手に訪ねてみようかな。

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