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【worthy stain】

山荒(やまあらし)のジレンマは嘘だと聞いた
背にしょった針寝かせて
互いを傷つけ合わないようにもできると
なら僕たちが繰り返し汚してきた
あの醜いそれぞれの染み
いったいなんだったんですか?
悔しさ食いしばり傷口が開く
紅(くれない)滲む
なんてざま
どこかで会ったことのある烏(からす)が
頸(くび)を動かす
恐怖こそが想像力を作り成す資材
絶対にああはなりたくないって
僕たちはいつも失敗を恐れてた
損失を被ることを怖がってた
仕方なかったんです
誰かのこと傷つけなければいけなかった
最悪で最善のヒューマニティ
どうか許してください

鈍(にび)色に隈取られた希望の亡き骸
いたいけな雀(すずめ)たちによる鳥葬
もう二度と笑い返すことはない
その冷たくなった感情に挿す
目に染みるプリザーブドフラワー
流れる人の往来に轟く叫び声
とうに紅の染みは消え
代わりに忘却の染みを作っては
別の場所でまた悲鳴を響き渡らせる
残酷ってそれ誰の前で言ってるんだい?
僕たちは原初(はじめ)から穢れてた
勝者が書き換えた数多の伝説が物語るのは
罪深き策略家の子孫という事実
同じ色に染まらぬ賊と見なされた染みは
朝露のように残らず消えていった

なぜだろう
消えてしまいたい僕たちは残り続けるのに
失われてはならないものばかり
いつも消えなくちゃいけないのか
性悪説はしょせん極論であっても
人生の本質はおよそ悲しみ
なぜかって
僕たちは偶然どこかで会い
必然どこかで別れる
その逃れようのない決定事項が
そも悲しいんだ

価値ある約束が欲しい
遣る瀬ないこんな世界(いばしょ)で
生きていくのに
紅が体中を巡る僕たちに相応しい契りが

身に付けてきた術(すべ)かなぐり捨てて
一糸纏わぬ裸になって
過去も未来も否定して
今だけを認めて
薄汚れたヒューマニティ放擲(ほうてき)して
ほらとても簡単なこと
僕たちにならできる
山荒にだってできたんだから

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