『歴史の本質をつかむ「世界史」の読み方』の読み方!!
世界史講師のいとうびんです。
……さて、のっけから私事で恐縮ですが、
この度!
2023年3月23日!
自身初となる単著、
『歴史の本質をつかむ「世界史」の読み方』
が発売となりました!!
自身初の単著・単行本ではありますが、今までの歴史入門書にはあまり見られない内容となっています。
というのも、いくつか野心的な試みも盛り込まれていまして……
というわけで、
今回はこの『歴史の本質をつかむ「世界史」の読み方』を、
さらにもっと楽しむための「読み方」をご紹介します!
ではでは、さっそく見ていきましょう!!
1.そもそもどんな本なのよ?
1-1.コンセプト
この『歴史の本質をつかむ「世界史」の読み方』(以下"本書")は、
読者の方に世界史を再発見してもらうことを目的としたものです。
一部抜粋すると、
本書では、歴史上の人物や出来事の意外な側面といった「ドラマとしての歴史」ではなく、
いわばロジカルに世界史を見ていこうというコンセプトを主軸にしています。その切り口として、世界史に登場する様々な伏線を回収する、というスタンスをとっているのです。
1-2.章構成と概要
本書の構成は、
・第 I 部 世界史を俯瞰するための通史
・第 II 部 時代区分から読み解く歴史の本質
・第 III 部 世界史を再発見する歴史の視点
の3部構造となっています。
第 I 部は古代~近代までを扱ったいわゆる通史パートで、ここでは様々な「伏線」が散りばめられています。
第 II 部は「伏線の回収」にあたります。その上で必要となるのが、概念理解です。この概念理解の手助けとして、第 II 部と第 III 部ではキークエスチョンが設定してあります。
例えば、以下のクエスチョンの答えを考えてみてください!
このクエスチョンの答えを考えながら読み進めることで、歴史をより本質的なところから問い直していきます。
ちなみに、どのクエスチョンも答えは驚くほどシンプルですよ!
第 III 部はいわば応用編で、第 II 部で身に着けた「歴史の本質」をもとに、
さらに世界史の様々な出来事を再考察します。
さながら、歴史学の研究手法をライトになぞったようなもの、
読者のみなさんに、さらなる「新しい視点」を提供するのものです。
個人的にイチ押しは、「第2章 中世と馬――1241年、東西の騎馬が対峙したとき」です!
中世を制した馬という動物、そしてその馬を駆使したヨーロッパの騎士とモンゴルの騎馬兵を比較し、両者が激突した「モヒの戦い」という戦闘を検証します!
1-3.どんな読者におススメ?
本書では歴史の本質を考えながら読み進める、というスタンスであるため、
前提となる世界史の知識は必ずしも必要ではありません。
むしろ、世界史を知らない状態で読み進めた方が、ある意味では読みやすいとすら思えます。
これも抜粋になりますが、
私自身、「世界史を学びなおすのにちょうどいい本はないか」とよく聞かれます。そして、これは回答するにあたり一筋縄ではいかないものです。
本書はこうした方々の声を念頭に置いて書かれたものといっても過言ではありません。
世界史を学びなおすきっかけとして、ぜひ手に取っていただきたい1冊です。
2.より楽しむための「読み方」
では、ここからがいよいよ本題です。
本書をより楽しむための読み方をご紹介します。
2-1.おススメの読み方は「第 II 部」から
ごく正統派の読み方、すなわち冒頭から順繰りにお読みいただくことに、まったく異論はありません。
しかし、著者として、ぜひお試しいただきたい読み方が、第 II 部から読み始める、というものです。
第 I 部は前述のように通史パートであり、いわば伏線を張るための前座のような立ち位置にあると言えます。
したがって、世界史をすでにある程度以上知っている方にとっては少々まどろっこしい印象を受けるかもしれませんし、
また、初学者の方であれば、後の章を読んだ時に「あれ、この伏線ってどこにあったんだ?」と該当箇所を思い出すのに一苦労、となってしまう可能性も否めません。
そこで、第 II 部の出番です。第 II 部は、世界史の大枠をとらえるための「概念」の説明がメインです。
本書でもまったく同じ表現を採用していますが、世界史の「概念」は数学などでいう「公式」に相当します。
ですので、まずは公式、すなわち概念をとらえることで、歴史そのものの見方がよりクリアになる、という目論見があるのです。
第 II 部は歴史そのものがわかっていなかったとしても、キークエスチョンを考えながら読み進められるように設計されています。
実を言えば、私が本書の原稿で最初に執筆にとりかかったのが、この第 II 部だったのです。本来であれば、この第 II 部が最初に来る予定でしたが、全体の構成バランスを編集者さんと考えたうえで、2番目にもっていったという背景があります。
……というわけで、最初から読んでいただくのももちろん大大大歓迎ですが、
ぜひ、第 II 部から読む、という読み方も試してみてください!
2-2.第 I 部と第 III 部、どちらに進む??
では、第 II 部で概念をひと通り理解したところで、その先はどう読めばいいか、となりますね。
これに関しては、私は第 I 部でも第 III 部でもどちらに進んでもいいと思います。
通史パートであった第 I 部に対し、第 III 部は前述にあるようにいわば応用編です。
しかし、「応用」といっても、第 II 部で紹介した「概念」が身についていれば問題なく読み進めることができます。
むしろ、身に着けたばかりの「概念」(≒公式)を使って、さっそく例題に取り組むようなものです。ですので、必ずしも第 I 部に戻らないと楽しめない……ということはありません。
とはいえ、このままでは「第 I 部は要はオマケでしょ?」お思いのあなた……さにあらず! です。
第 I 部は第 II 部で登場した「概念」を実際に確かめるうえでも便利なようになっています。
また、第 I 部においても、一般的な世界史の解釈より、一歩踏み込んだ記述も盛り込んであります(例えば「財政=軍事国家論」など)。
そのため、第 I 部は第 II 部以降の「伏線」以外にもさまざま仕掛けが張り巡らされています。
いずれにせよ、第 II 部で「概念」をつかむ ⇒ 第 I 部や第 III 部で改めて「ああ、そういうことか!」と気づくor再発見する、といったようにつなげることができるはずです。
2-3.最後のポイントを
……さて、本書はしいて言えばひとつ欠点があります。
それは、1回の読書で内容を完全に把握しづらいというものです。
というのも、そもそも世界史に限らず、歴史というものは様々要素からなる重層的な構造をしており、その表面をたださらうだけでは、単なる出来事や細かいエピソードの羅列になってしまいます。
ですから、私は本書を何度でも読み返してほしいと思うのです。
もちろん、1回でも通しで読めば、「世界史の再発見」という本書のコンセプトは充分達成できると思います。
とはいえ、本書は「世界史」を見るうえで様々な視点・観点を提供します。もちろん、そうした視点・観点を本書ですべて紹介できているわけではありません。
ですが、本書を繰り返し読むことで、また新たな発見があるはずです。
何度も読むうちに、バラバラだった出来事が次第につながり始め、
最終的には世界史を有機的にとらえることができるのです。
噛めば噛むほど味が出る、それが本書の隠された持ち味です。
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いかがでしたでしょうか。
色々と書き連ねましたが、結局は読み方は読者の皆様の自由です。
少しでも多くの方々に、本書をお楽しみいただければと思います。
読んでいただいただけでも、充分嬉しいですよ!