ボカロP・VTuberによる配信音声のつくりかた

皆様ごきげんよう。LLSY music & V ch.のレーシーです。
早いものでVtuberとしてデビューして3か月がたとうとしています。


オーディオインターフェイスとマイクを買ってみたけどなんだか思ったような音にならない、、他の人の配信より音が小さい気がする、、いろんな記事をみて音を大きくしてみたらノイズが大きく出るようになっちゃった、、
そんな経験をしている人も少なくないのではないでしょうか。

今は調べれば何でも出てくる時代ですが、そもそも何をどういう順番でやっていけばいいの?というところで躓いている人も少なくないと思うので、私のnoteではある程度体系的に調べられるようにしてみたいなと思っています。

基本のおさらい 音声信号のながれ

まずはそもそも音がどんな順番で流れて、どの場所でどんな問題が起きやすいかを考えていきましょう。
配信環境は人それぞれだと思うので、マイク一つとUSBタイプのオーディオインターフェイスのみ、というシンプルな構成で考えてみます。

まずマイクは音の波を電気信号に変換します。原理とかそういうところはここでは書きません。気になる人は調べてみてね
マイクケーブルを通してオーディオインターフェイスのインプットに繋ぐと思います、オーディオインターフェイスの中で最初に通るのが"マイクプリアンプ"というところです。(プリアンプとかHA:ヘッドアンプって呼ぶ人もいるよ)

マイクの音を数千倍増幅してラインレベルまで持ち上げる

アンプはマイクだけじゃなくて例えばギターアンプとかカラオケアンプとかありますが、音を増幅する機械です。マイクの音声信号は非常に小さいのでこれを入出力として十分なラインレベルと呼ばれる大きさまで増幅します。(基準は+4dBu)
内部では色々な事が起きていますが基本的に私達が触るのは"ゲイン"というノブです。細かいことはわからないけれど、ゲインノブを右に回すと音が大きくなるということは感覚的に知ってる人が多いかと思います。

ダイナミックマイクとコンデンサマイクだと出力も大きく違う。
配信において「コンデンサマイクのほうが音がいい」と誤解されやすいのはインターフェイス内蔵HAの性能の低出力なマイクの組み合わせによるところが大きい。
実際のマイクは用途や音によって選ぶべきだが、低価格帯インターフェイス直結が多い配信においては中域の薄さをカバーできるハイ上がりで出力の大きなコンデンサマイクが好まれる。
結果としてノイズの目立ちやすい環境になってしまうことには注意したい。

※"ゲイン"と"ボリューム"は何が違う?
音の大きさを調節するというところで私達に一番馴染み深いのはボリュームではないでしょうか。
オーディオインターフェイスをみてもゲインと書いてあるつまみもあればボリュームと書いてあるのもあったりしますよね。これらは一体何が違うんでしょう?
正確な定義があるかは知らないですが、基本的にゲインは音を増幅するところ、ボリュームは音を小さくするところで使われます。(ボリュームポッドは可変"抵抗"ですね)
ゲインつまみには0という基準があってそこから+何dbとか大きくする方向に回していくことが多いかと思います。
対してボリュームの表記はMin〜Maxとか0〜10とかになってることが多いかと思います。
ギターアンプやプリアンプなど、「ゲインで音を作ってマスター(アウトプット)ボリュームで音量を調整する」といわれることも多いですが、ボリュームの開き具合でパワー管やアウトプットトランスの歪み感も変わってきますね。
ミキサーになるとTrimなんていうのも出てきます。ポストフェーダーを上まで振り切ったときの音量を決めるものですね。

たくさんある"音量を変えるもの"

さてマイクケーブルの中を流れてきた電気信号が無事大きくなりました。
ここまではまだ音声はまだ電気信号で、いわゆる"アナログ"と言われるパートにいます。
ここからPCで扱えるデジタルデータに変換しなくてはなりません。
それを担ってくれるのが"ADC"と呼ばれるパート
Analog - Digital Convertorでそのまんま アナログ-デジタル変換器となります。
ここでプリやADの質について長々とお話するつもりはありませんので、今は声というのはマイク→マイクケーブル→プリアンプで増幅→ADCでデジタル化→USBでPCへ、という流れを知っておいてください
デジタルIFはUSBだけじゃないでしょとかそういう話も関係ないので置いておきます。

旭化成HPより

マイク→マイクケーブル→オーディオインターフェイスときてデジタルになった音声はPCに入ってきました。
ここからPC内でオーディオインターフェイスの機種によってはソフトウェアモニター(Voicemeeter等単体のミキサーを使用している方も多いとはおもいます。)を経由しOBS等配信ソフトに入るパターンが多いです。
配信にとっての天敵はノイズです。ノイズはその機器固有のもの(フロアノイズ)、外来ノイズ(ケーブルやマイクなどが外からの影響によってノイズを拾ってしまう)などがありますが、この外来ノイズの影響が大きいのが増幅前の部分、つまりマイク&マイクケーブルです。
プリアンプより前で存在するノイズは増幅する際に、当然ですがそのまま大きくなります。
対して機材が持つ固有のノイズはプリアンプのゲイン量には左右されません。
OBS等PC内で増幅しないで済むよう、できるだけしっかりとプリアンプで大きくしてからPCに音を送ることが大事ですね。

インターフェイスのゲイン調整

記事を書きました。
マイクの種類や設定の仕方、インターフェイスそのものに関する部分にも少し触れています。

いまさら聞けない配信音声処理 -ゲイン編-|れー (note.com)

OBSの音声事情

OBSの音声ミキサーは非常にシンプルです。音を受けて送るだけ。
クリッピング・音割れというものがあります。デジタルにおいて音の大きさには上限があって、それをあらわす単語としてdbFS(フルスケールデシベル)というものがあります。
天井は0です。
OBS、DAW、動画ソフト、仮想ミキサー、、音を扱うソフトには必ずメーターがついていると思います。
そしてそのメーターの値は「0dbFS」という値からマイナスになっているはずです(DAWや音声ソフトなど内部的にFloatになっているときは、+の値が存在することはあります)
OBSのミキサーに表示されているメーターはポストメーターで、右端が0dbFSです。
右端まで振り切ってしまうとクリッピングの状態になってしまいます。
OBS上で音声処理を行うことは可能で、フィルタという部分が通常のDAWにおけるインサート部分になります。

OBSにおけるメーター。右端が0dbFSとなっている。右端まで振り切ってしまうと音が割れてしまう。

OBSのフィルタにもあらかじめ色々と搭載されています。
個人的に今の「ノイズ抑制」は非常によくできています。
コンプレッサーやゲートはGRメーターすらなく非常に使いづらいです。
ですので多くの方がVSTプラグイン導入を考えるかと思います。

OBSの「VST対応・非対応」について

「wavesはOBSで使えない」という話を聞いたことがある方はいらっしゃるかもしれません。これはwavesがV14になるまでは事実でした。
WindowsでDTM、歌ってみたなどをしてる方なら非常になじみ深いVSTという規格、Steinbergが作ったプラグインの形式ですが、OBSでも対応しています。ただOBSは完全なVSTホストとして作動するわけではなく、フィルタ欄には「VST2」と書かれています。実際にはvst2でもきちんと読み込むものとそうでないものがあります。

OBSのプラグイン問題を解決する最強の無料ツール

VSTプラグイン開発の始祖wavesがV14でOBS公式対応を謳いました。
そこで注目されるのがwaves Studiorackです。
これはもともと「プラグインを入れるプラグイン」のようなもので、インサートにこの子を刺してその中でプラグインのルーティングを組むことで、パラレル処理などより柔軟に音声の処理ができるというものでした。
無料で配布されてるとはいえ、似たような機能はDAWのデフォルト機能でも充実してきたりといまいち影の薄い子でしたが、V14アップデートで
・社外製vst3の対応
・OBSへの対応

の2点が追加され、これによりOBS上で
「すべてのvst3プラグインが安定して起動する」
ことが可能になりました。

別記事で詳しく書いています。

ノイズ除去に使われるプラグインと使い方

ゲート

ゲートは音量が指定したしきい値(Threshold)を下回った時に出力をカットするものです。
フロアノイズを消去するとき等に使いますが、メーターをみて入力音量とのバランスをしっかり取ってあげないと音の立ち上がりやリリースで不自然に切れたりしてしまう原因にもなります。
また音を通すか通さないかという話になってきますので、声と同時にノイズも通ってしまう点には注意が必要です。
無音時のフロアノイズ等をカットしたいときに有効です。ただ使用するときには実際に使用するマイクやゲイン設定にしてメーターをみて、ノイズフロアをギリギリ上回る値にThresholdを設定する必要があります。

とっても簡単なゲートの設定について記事を書きました。

位相反転型(ノイズキャンセリング)

位相反転型のノイズ除去の定番はiZotopeのRXでしょう。
ノイズ成分を測定して反転させた位相の音を当てることでノイズを除去します。最近のノイズキャンセリングイヤホンとかと同じですね。
ゲートと違ってしゃべってる背景の音も消えますが、突発的な音には弱いです。
もともとは環境音をサンプリングして当てるというのが多かったです。マイクをセットしてゲインを上げて、しゃべらずに数秒間環境音や定常ノイズを読み取る方法ですね。
最近はwavesのClarity、RX新バージョンなどでニューラルネットワークを使って人の声とそれ以外を分離させて消すというのがリアルタイムでできるようになってきています。
OBSのノイズ抑制も似たような感じかと思います。動作は重めのものが多いです。

コンプレッサー

コンプてそもそもなんやねん!て方はこちらを読んでください!

文字で読んでもなかなかわからないと思うので、正直理解はしなくてもいいかなとは思います。
コンプの原理を知らなくても設定できるようなそんな記事は現在執筆中です。

大きい音を小さくすることで全体の音量差を小さくします。
コンプをうまく使えば声が前に張り付き聞き取りやすくなります。
ただしコンプでピークをつぶして持ち上げるということは、当然ノイズ類もすべて合わせて全体が大きくなります。

イコライザ

おそらく皆さんが一番なじみ深いかなと思います。
周波数ごとに音を大きく/小さくすることで音色をコントロールします。
まず大前提として、各周波数帯の出方はマイクの種類だけでなく同じマイクを使っていてもマイクとの距離やケーブル、プリアンプで大きく変化します。
特に一番わかりやすくて大きいのがマイクとの距離。距離が近くなると接近効果で低音が膨らみます。
EQを使うと膨らんだ低音を抑えて声をすっきりさせたり、甲高い声を丸くして聞きやすくしたりできます。
基本的にないものを補うより邪魔な部分を削るほうが得意です。

どうやってEQを設定していったらいいの?という記事は現在執筆中です。

ノイズ問題について

ノイズの原因は多岐に登るので非常に難しい問題ですが、ゲーマーの方に多いのがPCからのノイズです。
サウンドカードというものが廃れて久しいですが、PCのケース内部はノイズの嵐です。
そして音楽をやってらっしゃる方ならよくご存知な通り、ノイズの遮断にはアルミが良く使われます。
ゲーマーの方はPC本体を机の上に置く方が多いです。
そして中身の見える透明なケースも多いです。透明部がガラスかアクリルか等はケースによって違うかと思いますが、その近くをマイクやケーブルが通ってノイズを拾ってしまうというケースはままあります。
また冷却面でケースのサイドを開けっ放しにしてる方も同様に注意が必要です。(その場合はファンの音も注意ですね)
電源からノイズを拾うというパターンもあります。
最近は照明もLEDが主流ですが、蛍光灯なんかだと切れかかってちかちかするとものすごいノイズが混入したりします。
同じブレーカーを共有しているコンセントでどこか不具合があると全体の電圧が不安定になって機材がうまく作動しないというパターンですね。
電子レンジやドライヤー、冷蔵庫のインバータなども原因になりやすいです。
USBバスパワーで動作する機材も増えてきていますが、USBの種類によって供給できる電力量が違うので電力が足りないまま動作していたり(一部製品ではSUB type-Aに接続したとき低電力モードに切り替わるものもあります)、UBSを接続しているPC側のポートが(特にケース側につけるタイプに多い)アースに落ちておらず、インターフェイス側も高音質を謳ってケースにアースを落としていない場合回路全体が浮いてアンテナのようになりノイズを拾ってしまうということもあります。

また個人差が大きい部分ではありますが、声が小さい方の場合どうしても大きい方よりゲインを上げざるを得ず、環境音を取り込んでしまいやすいということはあるかと思います。
私もこのパターンです。

またダイナミックマイクなど出力の小さめのマイクであればマイクプリのゲイン幅が十分でないという問題も発生してしまう可能性があります。

マイクの選び方

これについては一般論を書けるほど詳しくはないので深く話すのはやめておきます。
参考までに私がマイクを買うまでに試したマイクの感想をいろいろ書いた記事があるので紹介しておきます。
20本くらいのマイクをいろんなマイクプリで試した記事です。
楽器やボーカルのマイク比較の記事はたくさんありますが、配信を念頭にしゃべり声をためして選ぶ記事はそう多くはないので少しは参考になるかもしれません。

私が使っている「コンデンサマイクでマイクプリの出力が小さめでも十分使えるのに、環境音の入りにくいマイク」についてのレビュー記事です。

オーディオインターフェイスの選び方

これもながくなりそうなので別記事を書こうと思います。

まだまだこれからですが、内容を充実させていこうと思います。

LLSY music


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