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前進し続ける女優として−− 安蘭けい、芸能生活30周年記念アルバム「AVANCE」に込めた思いとこれから

女優の安蘭けいが、芸能生活30周年を記念してアルバム「AVANCE」をリリース。宝塚歌劇団星組トップスターを経て、女優として活躍を続ける彼女の出演作の中から、選りすぐりのミュージカル楽曲を収録したファン待望の1枚だ。この30年の歩みや歌うこと、日常の好きな時間のことまで語っていただいた。

■「AVANCE」というタイトルに込めた思いとは?

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「この30年はあっという間でした。宝塚でほぼ20年、女優になって10年近くになりますが、今回アルバムを出すにあたり、宝塚時代に出したCDを聴き返したり、これまでの出演作を振り返りながら、あっという間に感じられる30年の間に、本当にいろいろな役とめぐり会ってきたのだなあと再認識しました


タイトルの「AVANCE」とは、フランス語で”前進”の意味。
「30周年は一つの区切りではあるけれど、自分の中ではずっと走り続けている中の一つの通過点でしかないような気がして。まだまだ現状に満足していない、もっとできるんじゃないかという思い、ファンの方たちにこれからも応援していただきたいという意味を込めて、“前進する”というタイトルにしました」


たくさんの出演作の中から選曲するにあたっては「結構悩みました」というアルバムを聴くと、役を演じている時とはまた違った表現に出会って感動する。歌詞が心に染み渡り、視界が広がるような感覚。安蘭の声の表情の豊かさに引き込まれる。
レコーディングは、今の自分の歌を残す作業です。芝居の中で歌うのとはやはり違うので難しいなと思いつつ、ミュージカルを観てくださった方が“あの時に聴いた歌”とあまりギャップ感じずに、繰り返し聴いてもらえる歌を歌えたらと思って臨みました」


■歌う楽しさを実感したレコーディング

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『レディ・デイ』でジャズ界の女王ビリー・ホリデイを、『エディット・ピアフ』ではシャンソン界の女王エディット・ピアフを演じている安蘭。レコーディングでは、世界的なジャズ・ピアニストのクリヤマコトとアコーディオン奏者の桑山哲也とのセッションが実現した。
「クリヤさんが僕が最初に弾くから入ってきてと言ってくださって、すごく自由に歌わせてもらいました。ジャズは本当に、その人それぞれの感性で表現するもの。ミュージカルは、あるもの(譜面・台本)を演じるので、なかなか自由にやるのが難しいところがありますが、本物のジャズの方とやったらこんなに自由に楽しく歌えるんだ!と。そこでクリヤさんにリクエストして急遽、ボーナストラックの『星に願いを』を入れたんです。出演作でもなくいきなりディズニーですけれど(笑)、即興でお互いにやりとりするのが楽しかった!音楽の楽しさを感じさせてくださるのは、アコーディオン奏者の桑山哲也さんもそう。何度もご一緒しているので絶対的な信頼がありますし、自由にやっていいよとおっしゃってくださるんです。第一線の、本物の才能のある方たちにどんどん触発されて、自分の良さが引き出される感じでした。シャンソンは若い頃は大人の歌だと思っていたけれど、今はちゃんとその世界が理解できるといいますか、しっくりくるので、自分も成長したのかなと。ピアフから4曲入れたのはお客様に、安蘭のピアフをまた見たいなと思わせる戦略でもありますね(笑)」


■40周年の時にはまた違う歌になっているかも

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今回のアルバムには、そのほかの当たり役の楽曲も収録されている。
「『スカーレット・ピンパーネル』の「ひとかけらの勇気」は、宝塚退団後に出したアルバムにも入れていますが、今回はミュージカル寄りのアレンジで男役を思い出して歌ってみました。これも含めてフランク・ワイルドホーンさんの作品から3曲入れています。私にとってはすごくご縁がある方でありますし、歌いやすい上に歌詞がすごくいいので。『MITSUKO〜愛は国境を超えて〜』の「後ろを振り向かずに」も『アリス・イン・ワンダーランド』の「今日やりたいこと」も自分が歌っていて勇気づけられるし、歌い続けていきたい曲です。『next to normal』の「I miss the mountains」はまたいつか演じたい、という希望を込めて、『サンセット大通り』の「As if we never said goodbye」は私が演じてきたノーマの感情が揺れ動く歌で、舞台上で歌っているのをイメージしながらレコーディングしました。これからもずっと演じていきたい作品です。
このアルバムは30周年の完成形かもしれないけれど、また私も変わっていくだろうし、世の中の音楽シーンも変わっていくかもしれない。そうなったらまた新たな「ひとかけらの勇気」が生まれるかもしれないですよね。そういう意味でもやっぱりAVANCE、まだまだ前進しますよ、というアルバムになったかなと思います」


■一番好きなのは、劇場にいる時間

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リーズンルッカがテーマにしている「1日で好きな時間は?」という質問に、「劇場にいる時間が一番好きかな」という答え。
「舞台に立つことが仕事とはあまり思っていないんですよ。家にいるのが苦手で、外に出て劇場に行きたい!と思っちゃう。家にいる時はお風呂に入っているのと、猫と一緒にいて遊んでいる時間が一番好き。あとは自転車でよく走っています。風を感じるのが好きなんです。じっとしていられないタチですね。旅行も大好きでハワイに行ってふわーって海水につかりたい。ブロードウェイが再開したのでニューヨークにも行きたいですね」


次回作となるブロードウェイの名作『蜘蛛女のキス』では、蜘蛛女/オーロラの2役に挑む。
「その前の『ジェイミー』のお母さん役とのギャップが激しすぎて(笑)。オーロラはカリスマ性のある女優なので、イメージトレーニングから始めようと思っています」


■私は歌で表現してきたのだと気づいた

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ミュージカルの曲では「その役を、心情を表現したいからちゃんと日本語で歌いたい」と語る。
「この30年を振り返ると、宝塚で約20年男役の声を出していたので、女優としての歌い方に躓いた時期もありました。歌うことが全然楽しくなくなって。その頃にストレートプレイをやって、やはり歌いたいなと思ったんです。この時の感情を歌だったらこう表現できるなとか、私は歌で表現してきたのだなと気づいて、そこからまた歌が大好きになりました。何より音楽はやっぱり楽しまなきゃいない、楽しいもののはずだし、歌い手にとっても聴き手にとってもそうだと思うんです。今回のレコーディングで私自身、それをあらためて感じることができました。私を知ってくださっているファンの方はこのアルバムを聴いて過去の出演作を懐かしんだり、今の私の歌を感じてくださると思います。私をあまり知らない方には、安蘭けいを知ってもらうひとつの機会になれば。こんな歌を歌う人なのかと興味を持ってもらって、舞台を観にきていただけたら嬉しいです」

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【作品詳細】

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2021年10月13(木)発売
安蘭けい芸能生活30周年記念アルバム「AVANCE」

1. ひとかけらの勇気 『スカーレット・ピンパーネル』より
2. アイーダの信念 『アイーダ』より
3. Gimme a pigfoot『レディ・デイ』より
4. Easy living 『レディ・デイ』より
5. I miss the mountains 『next to normal』より
6. 後ろを振り向かずに 『MITSUKO ~愛は国境を越えて~』より
7. 今日やりたいこと 『アリス・イン・ワンダーランド』より
8. 群衆 『エディット・ピアフ』より
9. 水に流して 『エディット・ピアフ』より
10.アコーディオン弾き 『エディット・ピアフ』より
11.愛の讃歌 『エディット・ピアフ』より
12. As if we never said goodbye 『サンセット大通り』より

<BONUS TRACK>
13.Don't cry for me Argentina 『エビータ』より
14. 星に願いを『ピノキオ』より

【プロフィール】
安蘭けい(あらん けい)
1991年宝塚歌劇団に首席で入団。2006年星組男役トップスターに就任。09年宝塚歌劇団を退団。退団後も女優として舞台を中心にドラマ、映画など幅広く活動。近年の主な出演作品に舞台『ジェイミー』『Oslo(オスロ)』『ビリー・エリオット』『サンセット大通り』ドラマ「危険なビーナス」(TBS)など。第38回菊田一夫演劇賞受賞、第28回読売演劇大賞優秀女優賞受賞。11月からミュージカル『蜘蛛女のキス』出演予定。
Instagram 

取材・文/宇田夏苗
撮影/真島隆


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