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日韓合作の映画『ナックルガール』。本格派クライム・アクションエンターテインメントで前田公輝が見せたかった“人間味”とは

三吉彩花主演で日韓共作のクライム・アクションエンターテインメント作品として完成した映画『ナックルガール』。ナックル(拳)一つで巨悪に挑む主人公・橘 蘭に寄り添い、時に叱咤しながら支える元恋人・神谷瞬を演じる前田公輝は届いた脚本を読みながら「このカッコいい瞬の人間味をどう出していこうか」と考えたのだとか。三吉彩花と、そして蘭のもう一人の協力者・成瀬を演じる細田佳央太との息の合った芝居が目指す芝居の鍵に!?

■日韓合作映画『ナックルガール』で演じる神谷瞬の人間味を出したいと思った

——日韓合作映画『ナックルガール』。ご出演が決まったときのお気持ちをお聞かせください。

前田 まずはタイトルから「どういう作品なんだろう」と思ったこと、それから日韓共同制作ということにも心が躍りました。僕はいろいろな作品でアクションをやらせていただいてきましたし、素手を使うアクションについては経験も自信もあったので意欲が湧きました。闇の組織に3人で立ち向かう。少人数で大きな組織に立ち向かって、そこに戦いを挑むストーリーは割とシンプルですが、今回はその軸になる三吉彩花さんとは僕が20代前半の頃に「金田一少年の事件簿」でご一緒させていただいていました。今回は立ち向かう意思や熱意が作品を牽引する上で必要ですが、鋭い眼の力を持っていらっしゃる様子をさまざまな作品から感じさせていただいていたので、楽しみだなと思っていました。

——そんな『ナックルガール』でご自身が演じられた神谷瞬についてはどのようなイメージがありましたか?

前田 最初にいただいたプロットから圧倒的にカッコよくて、圧倒的にクールで、男が憧れる男なのかと思っていたのですが、実際に脚本を読んだら主人公・蘭の理解者ではあるけれど意外と衝突しているし、全てを包むわけでもないんですよね。蘭の元恋人で、二人が高め合っていた理由としてはどちらも感情的なこともあると思うんですね。理性ではなくその瞬間の気持ちを全面的に出すところがパーソナルとして近くて、志みたいなものがマッチしていたとイメージできました。予告でも「死ぬほど好きになった相手だから言わせてもらうけど」というセリフもありましたが、そういう背景があったのかなと思うんです。でもそこは描かれず別れを経て再会した二人。でも妹が行方不明になったという緊急事態では人間の核が如実に出るはずなので、登場が既にカッコいい神谷になにか人間的なところを出したくて、掛け合いでそういった芯の部分や過去のニュアンスを入れさせてもらいたくて、三吉さんとも現場でいろいろとご相談させてもらいました。

■『ナックルガール』の3人はまるで兄弟のような距離感だった

——撮影現場での思い出深い出来事を教えてください。

前田 3人での即興劇ですね。空き時間に僕ら、即興劇みたいなことをよくやっていました。僕も三吉さんも変なことを言いだしちゃうんですよね。たとえば「今日のハンバーガーショップでのバイト、どうだった?」から始まって「ポテトでちょっとヤケドしちゃった。見てよ、ここ」なんていうラリーを急に始めるんです。そこに対して佳央太くんはあまりそういった経験がなかったらしくてなかなかセリフが出てこなくて。「はい」「そうっすね」とYESとNOみたいな感覚での即興の掛け合いになっていたのが面白かったです。今回の物語では蘭も瞬も佳央太くん演じる成瀬も対等な立場ですけど、空き時間になると兄ちゃんと姉ちゃんにいじられる弟みたいな感じになって(笑)。汗だくで心身疲弊している中でそんな即興劇に興じて距離感は近くなっていくのを感じましたし、その距離の近さはセリフの掛け合いにも出たと思います。

——では『ナックルガール』の見どころを教えてください。

前田 今まで当たり前だったことがなくなるという状況から、当たり前のことの有難みも感じられると思います。そしてなんといってもアクションを見て、立ち向かう勇気や一歩を踏み出すための希望を感じやすいし、チャン監督が求めていた「言語がなくとも伝わる」ところも感じられます。本作での蘭はあれもこれもと考えているのではなく「今」を感じているんですよね。「今、動かなければだめだ」と。亡くなったと思われた妹が生きていた。真相がわからない状態だからこそ、家族愛の強い蘭は早く真相に辿り着きたいという想いが強かったと思うけれど、だからこそ見ているみんなの「今すぐ」という気持ちの背中を押せる作品になったらいいなと思います。

■2024年はインプットをして人間的にも表現にも深みを出したい


——2023年も残り少なくなりました。今年はミュージカル「スリル・ミー」もありましたが、どんな年だったでしょうか。

前田 32歳で、いまだにそんなことを言うのかよ、と思われるかもしれないですが、めちゃくちゃ大人になれた年でした。このあいだ母に電話をしたときに「半年前のあなたと今のあなたの雰囲気が違いすぎるのだけど、なにがあったの?」と言われたんです。でもそれは充実している時間や経験、僕自身も考え方の変化はもちろんありましたが、穏やかにもなったと思われたことで今までの印象から大人になったようなんです。でもそれは僕にとっても生きやすさがあって。30になるまでに役者としてやったことないことがあるのは嫌だったので、それこそいろいろな挑戦をさせていただいたんですね。まだ見ぬ自分の種はどこにあるんだろう、と新しいことを見つけようともがいていた。20代後半ではその考えの元での挑戦を重ねてきましたが、30代に入ってからそれまでに見つけた種を蒔いて水をやるようになった時間でしたから、2023年の僕自身はすごく頭を使って蒔いた種を一年だったと思います。

——現在『セクシー田中さん』でのチャラリーマン・小西一紀役、『「大奥」Season2 医療編』の松方役でご出演中ですが、2024年の野望や目標をお聞かせください。

前田 2023年はSNSで「前田公輝3人いる!?」って言われるくらいお仕事をさせていただきました。それによって得たものはとてつもなくかったです。各クールで、それも連続して出演作があることが夢でもありましたし、それこそ同じクールで「セクシー田中さん」や「大奥」といった作品での大役をいただけたことで夢が倍増して叶ったような気持ちですし、泣くほど嬉しいことが現実的に叶っていると感じます。普段から役者として「見たことのある芝居をしたくない」という気持ちを持って臨んでいますが、自分が生きてきた人生をフィルターとして演じているのでエネルギーも消耗するし魂も燃やさなければいけないのも役者なんですよね。その芝居に深みを持たせるためにもプライベートを充実させることも大事なんです。そういったオンオフを意識して役に対する準備をしっかりやって、どんな役が来てもいいような心の状態にするための時間を作りたいですし、そこでの経験を役に投影していくとまた違った深みや見え方もできると思うので、来年はインプットを出来る年にしていきたいと思っています。そんな僕から出る新たな表現に期待していてください。

【リーズンルッカ’s EYE】前田公輝を深く知るためのQ&A

Q.2023年秋冬に取り入れたいファッションアイテムは?

A.ちょっと前まではIラインで、その前にはVライン、今はAライン、とトレンドも変化してきているので、その中でもともと好きなアイテムであるダウン、革ジャン、モノクロのTシャツをうまく取り入れていきたいです。僕はダウンがこの上なく好きなのですが、その時の流行のラインを取り入れつつ自分のお気に入りのアイテムを加えていきたいです。

Q.2023年にハマったもの。2024年に注目しているもの。

A.どちらもディズニーです。めちゃめちゃ行けたわけではなかったのですが、知識だけはありえないほど増えました。リーズンルッカを通して伝えたいのは、ディズニーに行くときには僕を連れていった方がいいですよ、ということ。めちゃくちゃ面白くさせる自信があります。そして2024年は6月に待望の新エリア・ファンタジースプリングスがオープン!僕はラプンツェルが大好きなので、ラプンツェルエリアも楽しみですし、新ホテルも楽しみでたまりません!

<編集後記>

ファッションブランドをプロデュースするほどファッション好きな前田さん。インタビューの質問の中に織り交ぜた「気になるアイテム」の話題でも、「どれがいいかな」とよくよく考えてお話をしてくれるだけではなく、撮影のときにも「こうしたら服がこんな風に見えるかな」とアイディアをどんどん出してくださっていた様子が印象的でした。大人の休日的なお写真に、その撮影の瞬間が詰まっているので、注目していただきたいです!

<マネージャー談>

ナックルガール撮影前のトレーニングは体育館で行い、最初の体力づくりがとってもハードでへばっていたはずなのに、トレーニングを続けていって少し経ったら背中の大きさもみるみる変わってきて、あっという間に神谷瞬になっていて驚きました。

<撮影の様子はこちら!>


【プロフィ-ル】
前田 公輝(まえだ ごうき)
1991年4月3日生まれ。神奈川県横浜市出身。特技はボウリング、アクション、空手(少林寺)。趣味はLEGO、ギター、ボウリング、ドラゴンボール。1997年、ホリプロ・インプルーブメント・アカデミー第1期生として入所。6歳で芸能界デビュー。2003年から2006年までNHK教育テレビ『天才てれびくん』にテレビ戦士として出演。2007年よりホリプロに所属。2008年映画『ひぐらしのなく頃に』で初主演。2010年舞台『白虎隊・ザ・アイドル』で初舞台初主演。2021年には自身がプロデュースするファッションブランド「GM」を立ち上げるなどその活躍は多岐にわたる。近作にドラマ『「大奥」Season2 医療編』(NHK)、ドラマ『セクシー田中さん』(NTV)。
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取材・文/えびさわなち
写真/松井綾音
ヘアメイク/松田蓉子
スタイリスト/立山功

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