見出し画像

徹底解説! 世界最高峰の映画の祭典「第93回アカデミー賞授賞式」で最高の映画時間に出会おう。

今年で93回目の開催となる「アカデミー賞授賞式」
映画コメンテーター有村昆に「アカデミー賞」とは一体なんなのか!聞いてみました。

■アメリカのアメリカによるアメリカのための映画祭!

画像1

--いよいよアカデミー賞授賞式が近づいてきました。世界最高峰の映画の祭典と言われますが、一体どういった祭典なのでしょうか。

アカデミー賞はもともとは映画組合の納会のような感じで始まったんです。
今では当たり前の【作品賞】【監督賞】などもありませんでした。そこから
段々役者や監督が来るようになり、さらに世界中から様々な人種や文化などが集まった結果、影響力を持つようになり、規模が大きくなっていったんです。
実はアカデミー賞の象徴でもあるオスカー像は当初名前はついていなくて、ただトロフィーとして渡していただけなんです。事務局のスタッフがトロフィーを見て「オスカーおじさんに似てる」と言ったことがきっかけで“オスカー像”と呼ばれるようになったんです。
※諸説あり

■「民族」が今年のテーマ

画像2

‐‐近年「白すぎるオスカー」や「性差別」など作品以外にも注目されることが多かったですが今年はどのような印象がありますか。

今年はトランプ政権の失脚により今までの「反トランプ」という流れがないんです。全体的には今のアメリカを表しているラインナップだなと思います。
前回『パラサイト 半地下の家族』が作品賞を受賞し「マイノリティ」「多様性」というテーマに注目が集まりました。その流れは今年も受け継いでおり『ミナリ』では韓国系移民の家族を描き、『ノマドランド』は60代の女性が住み慣れた家を失ってキャンピングカーでノマド(遊牧民)生活をする様子を描く。
コロナ禍で、「決まった場所にある会社に出勤する」ことから「在宅やオンラインで仕事をする」ということも可能になり、働き方や生活の概念が変わりつつある今、ノマド(遊牧民)はアメリカのみならず、今の日本でも十分考えられる内容だなと思います。『ミナリ』と『ノマドランド』には注目しています。

■配信映画の逆襲 

画像3

--前回に引き続き、今回のノミネート作品にも動画配信サービスで公開された作品が複数入っていますが、この状況をどのように感じますか?

今後も、動画配信サービスからノミネートや受賞する作品は増えると思っています。今では当たり前になっているサブスクリプション動画配信サービスも、一昔前までは少し下に見られていたように思います。
ですが、例えばNetflixは、全世界に2億人を超える有料会員がいるので、予算面はアメリカの大手映画会社より豊富です。更にアナリティクスを利用し、ユーザーの好みのパターンを分析し、それぞれにあったコンテンツを提供するサービスも展開しているので、ユーザーを飽きさせません。
ドラマやドキュメンタリーも含め新作が毎週の様に配信されるのもユーザーを飽きさせない大きな要因のひとつです。
そんななか、Netflixは商業公開するための専用劇場を作りそこで作品を公開することで、アカデミー賞にノミネートされるための条件である”ロサンゼルスで7日間連続商業公開された作品”を次々生み出して、映画業界に割って入ってきました。これからも更なる躍進が期待できます。

■やっぱりオリジナル!

画像4

--ノミネート作品以外も含め、アメリカの映画作品全体について、どう思われますか?

映画界は今、原作物や海外映画のリメイク、過去作品のリメイクなどが多くなってきています。日本のみならず、アメリカも完全なるネタ不足で完全オリジナル脚本は少なくなっています。
近年ではマーベルやDCなどのコミック原作から映画化される事も多く、1つヒット作が出ると、それに紐付いたシリーズ作品を作ることが多々あります。アジア映画のリメイクも最近は多いですね。
ビックバジェットの作品は失敗出来ないので、娯楽活劇な作品が多くなり、逆に『ミナリ』のような比較的低予算の映画は完全オリジナル脚本で、芸術寄りな作品にが多くなります。アカデミー賞にノミネートされる作品はそういったオリジナル脚本の作品が多いように思います。

■日本は、5年先を行くアメリカに追いつくべし

画像5

--今後日本映画が受賞する可能性はあるでしょうか

今後、アカデミー賞にノミネートや、受賞する日本映画や監督も出てくると思います。アメリカは日本の5年先を常に行っていると思います。今年の日本アカデミー賞優秀作品賞は『ミッドナイトスワン』が獲得しました。この作品はトランスジェンダーを扱った作品で、主演の草彅剛さんの演技も大変話題になり作品としてもとても素晴らしかったですが、テーマとしてはアメリカではかなり前から扱われていました。このような、アメリカとの時間差のようなものは、日本が島国という事が大きく関係していると思います。

他にも、日本と海外の大きな違いは国としての文化支援や座組です。例えば韓国では国が多額の製作費助成をするなどバックアップ体制が整っています。日本では民間の企業が製作費用を出資している製作委員会方式で映画を作ることが多く、ビジネスという側面が強く興行的に失敗出来ません。無名な役者や海外の役者を使いたくても、知名度が無いから集客を見込めないので使えないというケースが多いんです。もちろんビジネスなので正しいやり方ではありますが、興行的にはたとえ失敗という形になってしまってもコレを撮りたい!という作品を世界に向けて撮ることは、今後の日本映画界に必要な事だと思います。そういった意味でも、もっと国を挙げて支援する事が必要だと思います。

■有村昆の注目作品

画像6

--有村さんの受賞の予想をお聞かせください

まだ全ての作品を観られていないので、受賞を予想しろなんて…無茶ぶりですね(笑)では…こちらにします!

作品賞
『ノマドランド』(クロエ・ジャオ監督)
監督賞
「リー・アイザック・チョン」(『ミナリ』)
主演男優賞
「アンソニー・ホプキンス」(『ファーザー』)
主演女優賞
「フランシス・マクドーマンド」(『ノマドランド』)

【プロフィール】

有村昆(ありむら こん)
1976年7月2日マレーシア・クアラルンプール生まれ。映画コメンテーター。年間500本の映画を鑑賞。最新作からB級映画まで幅広い見識を持つ。テレビ番組や雑誌で活躍する他、長年ラジオ番組のパーソナリティとしても活動。YouTubeチャンネル「有村昆のシネマラボ」で映画の魅力を発信している。

YouTube 

Instagram 

Twitter

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?