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まるで呪いの書。 放送大学:発達科学の先人たち「貝原益軒」の章 感想

とても間が空いてしまいましたが、発達科学の先人たち、第三回は貝原益軒「和俗童子訓」。

↓今までの回はこちら。

 放送大学に入学して一番最初の学期、導入科目の「発達科学の先人たち」という科目を取りました。学び方も手探りなので、試みにnoteにちょっとした感想を書くことにしました。あくまで私の感想のため、授業の本筋とどんどんずれていってしまうのはご容赦を。先に言っておくと今回はだいぶ逸れます…


貝原益軒

江戸時代の儒学者、思想家、教養人。恥ずかしながらこの貝原益軒、初耳でした。(どう読むの?から始まりました。そのまま読めば良かったんだけど。笑)

健康について書かれた「養生訓」という著作が有名で……と聞くと、そういえば聞いたことがあるようなないような、とその程度。

日本のアリストテレスとも言われたそうです。だからテキストではアリストテレスの次なのかな?

江戸時代前期に生まれ、言論活動が活発化した元禄時代を中心に活躍。藩校、寺子屋などが広がった頃と重なります。

和俗童子訓

この授業では益軒が81歳の著作「和俗童子訓」をとりあげています。日本初の教育書と言われているんだそう。今で言うところのカリキュラムです。

このなかの「隋年教法」で出てくるのが「七歳、是より男女、席を同じくしてならび座せず、食を共にせず」という有名な一節。まあ、昔だからね、と思って説明を聞いていてもなんだかモヤモヤします。

先生の説明も女性の立場で聞くと苦しい言い訳にしか聞こえないんですよね……ここはいっそのこと、封建時代だったので、おかしなことだが当時はこれが常識だったとでもさらっと終わらせてくれた方が納得がいく。

教女子法

モヤモヤしながらも、いろいろなるほどねーと思いながら授業を聞いていたんですが、この回のメインではない、最後にさらりと出てきたこの項がどうしても気になってしまいました。それはずばりこちら。

教女子法

私だけでなく、きっと女性の受講者の皆さんは気になったんじゃないかと。

封建制度で家父長制をもとにしているのだから内容は推して知るべし。なんですが、頭では時代をわかっていても、やはり聞いていてムッとしてしまう。おいおいおいおい、ちょっと待て、という中身です。

こういう時、放送授業の救いというか、聞き手の女性、二宮さんが聞いているこちらの気持ちを「納得できません」と代弁してくれるんですね。

男性教授のレクチャーだけでこのやりとりがないと、なんとなく悶々としてしまうところでした。

実際、益軒を擁護するわけではないんですがと前置きして、この時代に今まで取るに足らないものとされていた女子の教育について取り上げたことは画期的であったと先生はおっしゃるんですが、それはそうだろうけどなあ……と、やっぱりどうしてもモヤモヤしてしまうんですよね。

確かに先生の指摘の通り、外見より中身であるとか、子どもができないことや病は女性のせいではない、と“理解のある”ところを見せたりもしている面もあるのですが、基本的に女性の役割というものをかなり固定しています。

いやいやいや、昔の人の書いたものだから。当時としては画期的だったんだよ、というのも理解できる。

それでもモヤモヤするのは、当事者である女性たちにとっては「(封建時代の)当時はね…」で終わる話ではないということ。

封建時代だから女性の他にも、武士と町人も分けて扱っているんですが、その後、この巻が抜き出され編集されて往来物「女大学」となったこともあり、女性に関しての部分の後世への影響は計り知れないところがあると思います。

改めて女大学を調べてみたら、まあひどいひどい。Wikiで挙げられている項を見て納得できるのは「神仏に頼って祈りすぎてもいけない。人事を尽くせ。」これくらいかなあ。

私が子どもの頃。

小学校高学年(11歳だからまさに教女子法に書かれていた年齢に近い)になると、家庭科の授業が始まりました。この時は(江戸時代と違って!)男子も女子も一緒で調理実習があったり、雑巾を縫ってみたりボタン付けをしたり、まあわりと平和なものなんですが、中学に入ると、家庭科は女子だけの科目に。

男子が木工をやったり、ラジオを作ったりしている間に、女子はガチの栄養計算や調理実習、加えて縫い物……つまり“お(織)り、ぬ(縫)ひのわざ”を習う(あ、織りはなかったか)。

さらに子育て(離乳食の作り方や赤ちゃんの世話など)から高齢者向けの食事のつくりかたまで。小学校では出てこなかったと思うから、それはつまり、(将来の役割を前提として)全部女子だけが習うのです。

選択の余地はなし。強制。しかもご丁寧に結構難しい試験まであった(期末だったか中間だったか、女子は男子より1科目多く試験を受けなくてはならず、男子に有利な仕組みになっていた。なんかどっかで聞いた話に近くない?)。

もちろん今ではこんなことはないんだろうけれど、この考えは根強く特に(そういう教育を受けてきた)上の世代に残っていて、今でもみんなを苦しめているんじゃないだろうか。

ちなみに高校では家庭科は選択科目。音楽、美術、書道、家庭科から私は美術を選んだけど、「俺、料理習いたいんだよなあ」とか、男子で家庭科を選ぶ子も結構いました。性別で分けちゃうのはどっちに対してもよろしくないよね。

益軒に悪意はなく、当時はそれなりに合理的な面は確かにあったんでしょうが、その後の影響を考えると、私にとっては呪いの書としか思えない。

おわりに

入学直後で、難易度を目安にあまり考えずにとった科目でしたが、この「発達科学の先人たち」、いろんなことを考えてしまう授業が多いです。心理学を勉強したいなあ、と思って入った大学だけど、教育関係、特に日本の話は自分のことも考えてしまい、ずしっとくる話題ばかり。

ここに書いているのは第3回の感想ですが、実は勉強自体は第12章のアリエスまですすんでいて、聴くだけなら何周かしています(ラジオだから何度も聴きやすい)。次の第13章、清水義弘の回は時代が近くなることもあって非常に身につまされるんですよね……

そうかと思うと、なんだこれ、すごい面白いなあ、という回もあり。変化があって入門のセレクトとしては正解だったかな。

この学期中には書き終えられない気がしてきましたが、ぼちぼち書きます……次回はダーウィン。


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