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世間話をしたくてフランス語を習う

資格や検定、今までしてきた勉強などについて、デザイナー目線で書いています。今回はフランス語。

始めたきっかけ

初めてフランスに滞在型で旅行したある日の昼下がり、ホテル1階のカフェで日記を書いていたら、レセプションのおにいさんがご近所さんと世間話をしていました。小さな宿なので自然で気軽な雰囲気。

その感じがなんとも良くて、あの会話に入ってみたい、とうっかり思ってしまったのですね…

帰国後早速、フランス語教室を探して通うことにしました。

難易度

私が選んだ学校はたまたまちょっと特殊な教え方をしてくれる学校でした。いきなり文章は習いません。

ガテニョメソッドと言って、長さや色の違う棒を使って、それを比べたり動かしたりして、体感的に表現を習得していくと言うもの。テキストもなく、初めの段階では音を割り当てられたカラーチャートのようなもので発音を徹底的に練習しました。

この方法は今までまったくフランス語を勉強したことがない私にはとてもあっていて、カラーチャートを使うところもデザイナーにはなんとなく馴染みやすい。難点は会話らしきものを始めるまでが長いということでした。

少々忍耐が必要ですが、聞き取りと発音が相当鍛えられるのであとあと実際にフランスに行ってみて、これがよかったのか…と実感。

簡単なフレーズしか言えなくても聞き返されたりせずにちゃんと通じるし、こちらも簡単なことならとりあえず聞き取ることができるようになっているのに気がつきました。

だんだんと文章も複雑になっていきましたが、フランス語は難しそうに見えるわりに意外とルールは明確で、英語よりも「どうなってんのこれ?」って言うことが少なかったような気がします。

難しそうに見える原因として、音に対して単語がやたら長いというのがあると思うんですが、スペルによって発音がわかるので、慣れてくるとそうでもなくなります。

思わぬ効用

フランス語を習っているつもりが、英語の理解がすすむことがありました。例えば、関係代名詞ってこういうことだったのか…など、今まで頭で意味を読み解く感じだったものが、自然なことばとして腑に落ちたと言うか。

英語だと今更どこから手をつけていいかわからない文法も、似たような構造の他の言葉で学び直すと急に理解できたりするものなんですね。

また、発音の練習は顔が筋肉痛になる程で、これを続けていたら小顔になるんじゃないの、と笑っていたのですが、冗談ではなく顔の筋肉は結構使うので、美容器具よりももしかしたら効果はあるかも……。

フランス語の発音は日本語に比べてものすごく口を動かすうえに、わずかな違いの発音も徹底的に直されるのでたぶん必要以上に力が入る…

それから少し変なことを言うようですが、自分の口からフランス語の発音を出せるようになるというのは、自分の体に新たな機能を追加したみたいな変な満足感というか達成感があります。

デザイナーとしてのメリット

完全に個人的な思いつきで始めたのでメリットなんて…と思いきや、デザイナーとしてのメリットはちゃんとありました。

世の中に出回っているデザイン、制作物には意外とフランス語が入っています。もちろんペラペラではないし、フランス語で何か書け(プロとして)と言われても困るのですが、少なくともこれは変なんじゃないの?というのはわかる。

屋号にもフランス語を取り入れました。

稀有な例ですが、フランス企業がクライアントだった時は真面目に役に立ちました。通訳者がいらしても、フランス人である上役の方のおっしゃることが概要ですが先になんとなくわかるので、考える時間が稼げることも。(逆に左右の耳で時間差で聞いているみたいでこんがらかることもありましたが。笑)

デザイナーとしてのデメリット

世の中に出回っているフランス語、フランス語っぽいもの、変に気になるようになりました。他に気にする人あまりいないし、わかってやってる場合もあるし、デザイン要素だからとの割り切りも時に必要。

果たして世間話はできるようになったのか

時間がかかったものの、簡単な世間話はできるようになりましたし、旅行するくらいなら困らないレベルにはなりました。

しかしちょっとお休み…のつもりが現在長期休止続行中。

結構いい線行ってたと思うのに、だいぶ忘れてしまいました。
使っていないことばを忘れるのは早い!(日本語さえ)

休止のきっかけ

フリーランスになってしばらくした頃、人と会う機会が減ったのをいいことに歯列矯正をしたのですが、あまり口を動かさない日本語を話していても口の中が血だらけになるのにフランス語の発音は相当辛く、それでしばらく休むことにしました。

そうこうしているうちに時間が経ち、フリーランスの不安定さも影響して再開には至らず、だいぶブランクができてしまいました。

最初の頃の棒のやりとりは後で見返せるように絵にしていたので、それをみて復習しようかななどと思ったり、独学しようかと思ったり。いろいろ勉強したいことが湧いてきて、なかなか本格的にリスタートできません。

だいぶ忘れてしまったのですが、今でもフランスのドラマなどを見るとところどころ単語も拾えるし、なんとなく意味がわかるところも。まずは耳だけでも時々鍛えておきたいです。

余談:フランス人が英語を嫌がるといううわさと荒物屋のおじさんとの攻防

「フランス人はこっちが英語で話しても英語を話してくれないんじゃないの?」という理不尽な質問、今でも言う人いるのでしょうか。(これ、フランス人を日本人に置き換えるとどれだけ理不尽かわかると思うんだけど)

フランスが好きとかフランス語習っていると言うと、これを聞かれることがよくありました。

最近すっかりご無沙汰してしまっているので今の状況はわからないけれど、私は逆に言葉に関しては他の国の人より親切な印象を持っていました。

英語で何か尋ねてもイヤな顔されたことは皆無。会話集片手にカタカナフランス語で話しかけたら全く通じなかったのに、私の本をわざわざ見て、私に合わせて簡単な英語で答えてくれたりということも何度か。

フランス語を少し習ってみると、このカタカナフランス語がいかに実際の発音とかけ離れているのかがよくわかり、これでは通じるはずがないし、私が話すのを聞いて必死に笑いを堪えているような奇妙な顔になったのも頷ける。それでもバカにされたことなんてありませんでした。(英語圏ではうまくしゃべれないのでちょっとバカにされたこともあるし、他の国ではことばが通じないのをいいことに罵倒されたこともある)

推測するに、前述の説を唱える人が遭遇したフランス人(実際にいたとすればですが)は、おそらく英語にあまり自信がないのでいきなり流暢な英語で話しかけられて対応できなかった、またはフランスにいるにもかかわらず英語が通じて当然という態度なのでムカつく、この2つのうちのどれか(または両方)なんじゃないかと。

まあ、でもちょっとしゃべれるようになってフランス語を話すと対応が良くなることが何度かあったというのは確か。なんだかなあと思うこともあるけれど、話が通じるということは対応しやすくなるということなので、これはあまり責められないのではないかと思います。

とは言え、パリもアメリカ資本のチェーン店が増えた頃からでしょうか、私のフランス語は上達している(はず)なのに、英語を話す人が急に増えたと思ったことがありました。特に観光スポットからちょっと外れた小さいお店。

毎年行ってた頃に必ず寄っていた荒物屋のおじさんも、最初の頃は私の下手なフランス語に付き合ってくれていたのに、途中から私の顔を見ると待ってましたとばかりに英語を話すようになりました。

ちょうど良い練習台だと思ったのかもしれませんが、どうしてもフランス語を話したい私となにがなんでも英語を話したいおじさんで、ことばを交換したみたいなお互いカタコトの変な会話が繰り広げられることに……(要するにどっちも練習したいってことなんですが!) 

なので、日本にいる外国人が「日本語を使っても英語で返される」と嘆いているのを聞くと、彼らの気持ちがちょっとだけわかる気がします。同時に英語で返しちゃう人の気持ちも(荒物屋のおじさんを思い出して)わかる気がするのです。

覚えたものは使いたいのは道理。
こうしていろんなところでことばの攻防が行われているんだろうなあ…… 


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