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第4章 スキマ時間を活用する勉強法−机に向かう時間を減らす(1)電車を「書斎」に

コロナ禍は、人々の行動を激変させました。コロナ前からテレワークの導入が度々喧伝されてきたものの一向に普及しなかったのが、コロナを機に一気に広がりました。

しかし、2022年3月21日にまん延防止等重点措置が解除されると、企業も学校も、ウイズコロナを前提とした体制へと一斉に舵を切りました。

私が勤務する大学でも、4月からの新年度は対面中心の授業形態に移行し、2年ぶりに多くの学生たちが行き交う賑やかなキャンパスが戻りました。あまりにも多くの学生が登校してきたため、自転車置き場は止めきれない多くの自転車で溢れかえり、お昼時には学食に長い行列ができました。

私も都内の自宅から江戸川大学まで自転車と鉄道を使って日々通勤する日々が戻りました。また、週1日の研究日はやはり電車を使って、明治大学と東京成徳大学に通勤しています。

私の人生の時間の多くは、長距離通学・通勤の電車で過ぎていきました。専修学校高等課程は自宅から約1時間、大学は1時間40分、大学院は約2時間をかけていました。

前任校の時も、電車を乗り継いで片道2時間かけて出勤していました。小田急線沿線の神奈川県西部の大学であったため、新宿から特急ロマンスカーを使っていました。

ロマンスカーは定期券とは別に特急券を購入して乗車していましたので自腹ですが、前任校では、都内在住の教員のほとんどがロマンスカーを使っています。

長期休暇以外の期間は月2万円程度の出費となりますが、それでもゆったりとした空間が確保され、必ず座れることから特急料金を支払う価値は十分にあります。

首都圏の多くの路線は、朝の都心方面(上り線)が混雑し、夕方以降は都心から郊外方面(下り線)が混雑します。

しかし、小田急線は、朝の下り線もかなり混雑します。新宿駅では出発時刻間際の急行は座れないことが多い状況です。沿線に大学が多くあるため、学生や教職員の利用が多いように思います。また、登戸駅や新百合ヶ丘駅からも多くの乗車があります。

以上の状況から、着席できたとしても、立席の人たちで車内は常に混雑しているため、ゆったりと座って移動できるロマンスカーに乗りたくなります。

片道40分強のロマンスカー車内では、新聞に目を通したり、本や論文を読む時間に充てていました。疲れた時は睡眠を取ることもあります

片道40分強、往復約90分の勉強時間を生み出されました。朝の新宿までの電車内は相当な混雑のためほぼ何もできない状況でしたが、新宿から自宅へ向かう電車は始発電車を待って座るようにしていましたので、約20分間の勉強時間を確保していました。合計約110分を毎日勉強に充てることができました。

私にとって、通学・通勤の電車の中は、貴重な勉強時間でした。

通勤電車の中で勉強を続け、会社員から大学教授に転身され、数多くの著作を世に送り続けた、久恒啓一さんは、著書『通勤時間「超」活用術 1年で500時間得する あなたを毎朝、バージョンアップする法!』(三笠書房、2008年)の中で次のように語っています。少し長くなりますが、引用します。

通勤時間は短いほうがいいか、長いほうがいいか。 多くの人は短いほうがいいと答えることと思う。しかし、私は、断然長いほうがいいと考えている。それも、一時間以上かかるくらいがいい。

多くの人は通勤時間を「コスト」と考えている。だからこそ、通勤に時間をかけたくないわけだ。ただ、逆に通勤時間を「資源」であると考えてみる……するとどうだろう。その時間は多ければ多いほどよい、という話になるはずだ。

もちろん通勤時間を「資源」とするには、条件がある。

それは「居眠りをせず、できれば座って」いくこと。 

私は、自分を変えようと思った三〇歳から、通勤時間を座って活用することにこだわってきた。住まいさえも、そのこだわりの延長線上で選んできた。つまり、始発電車を利用できる場所に居を構えてきたのだ。

それまで、私は東京の練馬や蒲田、その後は会社近くにある寮に住んでいたのだが、三一歳のときに千葉県の津田沼(習志野市)に引っ越しをした。 その後は、三四歳で神奈川県の金沢八景(横浜市)に、三九歳で千葉県の佐倉へと自宅は移った。私は、三〇代以降、都心に勤めているのにもかかわらず、土地へ引っ越しをくり返してきたのだ。それは、「快適な通勤時間を確保する」ためだったといっても過言ではない。

一見すると職場の近くに住むほうが、通勤時間が短くなるため、自分の時間はとりやすいと考えがちだ。しかし、私の職場にいた同僚や上司を見ても、通勤時間が短い人は、ダラダラする時間が増えるだけで、読書量も多いとは決していえなかった。逆に、夜のつき合いの時間が長くなるだけである。 

サラリーマンは職場の近くに住んだら、それに甘えてしまって堕落するだけというのが私の持論だ。 

あなたのまわりも見回してみるといい。会社の近くに住んでいて、知的な生活を送っている人がはたしてどれくらいいるだろうか。できるサラリーマンの多くは通勤時間が長いのではないだろうか。 

サラリーマンが「知的なビジネスマン」としての生活を送るためには、「最低でも一時間以上の通勤時間を確保し、座って通勤しなければならない」。

久恒啓一『通勤時間「超」活用術 1年で500時間得する あなたを毎朝、バージョンアップする法!』三笠書房、2008年。

通学時間がそれまでの倍近くに増えた大学生の時に、JR線や小田急線の車内で経営学や会計学の専門書を開いていました。

電車の中は他に何もすることがなく、また目的地の駅までの限られた時間の中でタスクを完了しなければならないため、本を集中して読むことに適した環境だと思います。

久恒さんの著作に初めて触れたのは2010年頃と記憶していますが、本の内容が私がそれまでに実践してきたことばかりでしたので、大いに共感を覚えたものです。

久恒さんはその後、『年で500時間得する 通勤時間「超」活用術 電車の中編』(ユナイテッド・ブックス、2013年)を上梓しており、通勤電車が勉強に最適であることを強調しています。「通勤時間のフ使い方で、一生が決まる!」が両方の本に共通のキャッチフレーズになっています。

しかし、朝の通勤・通学ラッシュで、座るどころか、身動きをとることすら難しい、という方も多いと思います。

久恒さんが実践した始発駅への引っ越しは、少々ハードルが高いのも確かです。オススメしたいのは始発駅まで折り返して、改めて始発駅から始発電車に乗ることです。

この場合は、定期券の区間を始発駅から下車駅までとする必要がありますが、自己投資と考えれば、高くはありません。

また、朝の忙しい時間帯にそんなことは無理だと、いう声も聞こえてきそうですが、朝ギリギリまで寝ているようでは、展望を開くことは難しいでしょう。

次回は電車を「書斎」として十二分に活用するための秘訣について、さらに詳しくお話しします。

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