見出し画像

第5章 「好きなことを仕事に」上級編−アカデミックポストを獲得する(3)大学専任教員を目指した就職活動

大学院博士後期課程3年次には、修了後の進路を決めるため、博士論文の執筆と並行して「就職活動」を進めることになります。

大学専任教員を目指した就職活動は多くの場合、"研究者・研究支援者・技術者等の研究人材のキャリア形成・能力開発を情報面から支援する研究人材のためのポータルサイト"J-RECINを通じて公募情報を探すことから始まります。

J-RECINでは、「キーワード」「研究分野」「職種」「複数条件」のタブから公募情報を検索することが可能です。

たとえば、観光学分野の教員公募を探したい場合、「キーワード」のタブの検索窓に「観光」と入れて検索するか、「研究分野」のタブの「大分類」のプルダウンを「総合人文社会」に、「小分類」のプルダウンを「観光学」にそれぞれ合わせて(チェックを入れて)、検索ボタンを押します。

「大分類」のプルダウンにチェックを入れ、「小分類」のプルダウンにはチェックを入れずに検索すると、「大分類」に分類される全てのJ-RECIN掲載の公募情報が表示されます。

その他、関連分野のキーワードを入れて検索したり、「大分類」のプルダウンで「社会科学」や「複合領域」「その他」にチェックを入れて検索したりしてもよいでしょう。

自分の専門分野や勤務地などの条件や希望に合致した公募があれば、公募情報に示されている要領に従って公募書類を作成します。

J-RECINには「応募書類作成ツール」がありますので、普段から少しずつ更新しておくと便利です。

そして、どの大学の公募でも基本的には、「教員個人調書 文部科学省様式第4号」と呼ばれる書式に沿った各大学独自の書式への記入が求められます。

公募書類としては、履歴書と教育研究業績書を必須として、その他に著書や論文などの研究業績の現物はほぼ必須、プラスアルファとして、最終学歴を証明する書類、保有する資格や検定試験の合格証書、教育研究の抱負などのエッセイ、推薦状などが求められることも多いです。

最近では、「JREC-IN Portal Web応募」「電子メール応募」「求人機関Web応募」で応募書類を受理する大学も増えました。

こうした電子応募は、プリンターを持たない人には大変有り難い方法です。郵送費も節約できますし、紙のムダもなくなります。正にエコですね。

是非すべての大学が、J-RECIN「応募書類作成ツール」で作成した個人調書を「JREC-IN Portal Web応募」で受け付けるようになってほしいと強く願います。

応募書類を求人機関に送った後は、ひたすら連絡を待つことになります。

多くの場合、締切後2週間から1ヶ月以内程度の期間に書類選考通過・一次面接通知の連絡が来ます。連絡パターンはメール通知が多く、郵便という形もあります。稀に電話という場合もあるようです。

連絡がなかなか来ない場合は不採用の可能性が高いですが、締切後1ヶ月を超えて一次面接の通知が来ることもありますので、必ず決まったパターンで通知が来ると断言できません。待つしかないのです。

一次面接では、学科長と専門分野の教員がインタビュアーとなることが一般的です。模擬授業や研究発表を求められることもありますので、十分に準備しておきたいものです。

面接での質問内容としては、志望動機、これまでの教育経験、学生指導の方針、問題のある学生への対処法、所属学会での活動状況、研究内容などが聞かれます。

一次面接が終わると、次は二次面接の連絡を待ちます。二次面接は学長を始めとする役職者がインタビュアーとなるパターンが多くなります。

一次面接通過の連絡は面接直後から3日以内の期間が多く、不合格の場合は採用者が全て決定した後に通知が来ることが多いようです。

二次面接後の連絡は、採用内定通知または不採用通知となります。採用連絡が来るパターンは面接終了後数日以内が多く、不採用の場合は採用者が全て決定した後に通知が来ることが多いと思います。 

二次面接では、志望動機、研究内容、および学生指導方針などが問われます。

多くの博士後期課程院生は、複数の大学に応募書類を送ります。 しかし、書類選考を通過するのは、100回のうち5~10回程度でしょう。書類選考通過率は5~10%程度ですから、とにかくたくさんの大学に応募することが必要です。

そして、初めのうちは、勤務地の選り好みをしないことが重要です。 地方大学でも、着実に業績を積み上げていけば、首都圏など大都市圏の大学に移籍できるチャンスも生まれます。

ですから、駆け出しの頃は兎にも角にも、地方であっても、まずは大学専任教員などの正規のアカデミックポスト(アカポス)に就任することを最優先したいものです。

しかし、博士後期課程を終えた後、直ちに大学専任教員に就けたら大変ラッキーなことで、近年では、大学院博士後期課程終了後、直ちに大学専任教員に就任するのは難しいのが現状です。

したがって、多くの場合、非常勤講師からキャリアをスタートさせることも視野に入れる必要があります。

非常勤講師だけで生計を立てることは困難ですが、教育歴のために積極的に引き受けることをオススメします。大学は、専任教員の採用基準として、教育歴をとても重視するからです。

専任教員などのアカデミックポストに就くまでに、なるべく空白期間を作らないことが肝要です。

日本では、博士後期課程を終えた後にアカデミックポストに就くことができない研究者が多く生み出されている「オーバードクター問題」が大きな社会問題となっています。

そうした問題もあって、博士後期課程への進学者は減少傾向にあります。非常勤講師をかけもちしながら、学会発表や論文掲載、著書の出版などで着実に業績を積み上げることで専任教員就任のチャンスが巡ることをひたすら待つ研究者も多くいます。

研究に意欲を燃やし後進の指導に強い関心を持つ若手研究者が増えないと、学界の未来はありません。有為な人材を多く惹きつけるための方策を真剣に模索することが急務です。

このように、大学専任教員への道は平坦ではありませんが、それでも目指す価値は大いにあります。

正規のアカデミックポストに就くために、普段から心がけておくべきことは、1本でも多く業績を作ることです。著書があれば、なおよいと思います。いまでは、Kindleで誰でも0円で書籍を出版することができますので、研究業績をまとめた書籍をKindleで出版するのも手です。

大学専任教員になることは容易ではないのは確かです。しかし、給料を頂きながら自分の好きな研究を行うことができることが最大の魅力です。 夏休みや春休みなどの長期休業期間に、自分の研究を進めることができます。そして、研究はもちろん、次世代を担う若い人材を育てる喜びも味わえます。

また、多くの大学が専任教員に対して、週1日以上の研究日を認めています。研究日に他大学等での非常勤講師などを務めて、副収入を得ることも可能です。

是非有為な人材が多く参入してほしいと思います。それが、持続可能な学界の実現につながると確信しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?