たぶん5分の物語⑥
family anniversary
「何それ?」
「AIくんが書いた家族記念日」
「は?」
「だからさ、AIくんに家族記念日っていうタイトルで何かお話を作ってくださいって頼んだらコレが出来たの」
「何か意味不明なお話だね」
「でしょ?その日は家族記念日でって、一体どんな記念日なのか説明無しだよ?」
「いやいや、それより何でお母さんは消えちゃったのよ」
「えっ?それはそれで有りだと思うけど」
「マジか?明るい明日が続いていくようにって微笑んだ次の日だぞ?」
「何か隠された秘密があるのよ。実は某国のスパイだった母は、家族が笑って過ごせる明日の為に姿を消したのだった…とかさ」
「如何にもお前が好きそうな展開だけど…」
「その後成長した娘は残された母の日記に秘められた暗号に気がつくのよ、そこには何と某国が極秘に開発した殺戮兵器の…」
「ストップ、ストップストップ!」
「何よ?」
「あのさ、AIが書いたっていったよね?」
「そうだよ、AIくんにお願いしたの」
「本当に?」
「疑ってるの?」
「いや、初めの方は確かにAIかも知れないけど…最後の一行は付け足しただろ?」
「ギクッ!」
「何だよギクッて、声に出てるから!」
「バレていましたか」
「そりゃどんどんお前の妄想が広がるんだもの。最後の一行が無ければそんな展開にはならない筈だからね」
「だってみんなニコニコ幸せ〜じゃつまらないでしょ?」
「幸せに溢れる物語は沢山あると思うけどな」
「躓いたり転んだり絶望感が強ければ強い程、幸せの輝きが増していくものだよ君!」
「やっぱり捻くれているんだなお前は。そもそも何で家族記念日なんだよ」
「ん?」
「だから、何で家族記念日でお話を作ってって頼んだんだよAIに」
「その日が家族記念日だったから」
「はっ?」
「だから、私の家族記念日だったからAIくんにお願いしたの」
「あれ?誕生日は来月じゃ無かった?」
「あら嬉しい覚えててくれたんだ。え〜とねヴィ●ンのバッグ」
「何を言っているの?」
「誕生日プレゼント、ヴィ●ンくれ」
「バカなの?」
「割とね」
「まぁ知ってた」
「流石だね」
「ところでさ」
「ん?」
「家族記念日って結局なに?」
「ちっ!話をすり替えたな」
「すり替えたのはそちらです。で家族記念日って何?」
「君と出会った日ではないか」
「…何故にそれが家族記念日?」
「両親に早く先立たれ天涯孤独の私が初めて生涯一緒に居たいと思えたのはあなたなのだからそれはもう家族と言っても過言では無いと考えた結果の家族記念日」
「ちょっと早口過ぎて何を言っているか分からないよ」
「二度は言わない」
はにかんだ笑顔でアイスコーヒーを飲む彼女を見つめながら、ヴィ●ンのバッグと指輪では出費がかさみ過ぎるかな?等と考える平和な午後のひと時のお話。
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