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舞台 璃色リベリオン(A) 感想

劇場で観劇後、2週間経って配信観劇。劇場には一度しか行けなかったので、配信のおかげでより楽しめた。

RAVE☆塾はこれまでも劇場や配信で数回観ているけれど、作品としては3作品目。3作品目を観て、いつものパターンになり、分かりやすくて良い。ただ、パターン化していると、逆に同じようなものとして飽きられないか、どう観る者を惹きつけるかが創る側としては大変ではないかと思うけれど、王道になればパターンから外れると気持ち悪い。
これまでの配信も含めると、そうなりつつあるが、まだそこまでではない。そうなると、演者側がどう魅せてくるかも大きい。

今回の話もやはりテンポがとても良い。
特に会話の部分に関してのテンポ・掛け合いがよく、全体的なリズムが生まれていた気がする。それは場面場面での台詞の長さも大きく関係しているだろうし、それを実際に掛け合う人たちのタイミングもある。
特に台詞、言葉は色々な言い回しができる中で、一つの場面に対してどんな言葉を選ぶか。それによって特に舞台は大きく変わってくると思う。その一つがこのテンポの良さで、RAVE☆塾作品では特にそれが大きいと思う。

自分で小説を書いているときは、一枚のページの中にできる空白を意識して書いていた。
空白によって作品全体の雰囲気を作れないかと考えていたけど、舞台となると台詞そのものでテンポを創り上げる事がどれだけ大きいか。それを体現出来る役者も必要。
長台詞はなく、言葉も表現がしやすいものが選ばれている気がした。

さて、今回、崎野萌さんが出演ということで観劇へ。
最後に観た崎野萌さんは、シリアスな作品で主演。かなりそれも観ていて気持ちが良いくらいに素晴らしかったけど、今回は、再び、演じなれているような役へ。
強気で、皆を引っ張っていけるようなものもあり、少し大きな態度。少し語弊がありそうだが、貴族のような感じすら受けるほど。
その一方で、少し抜けた、平たく言うとおバカなことを言うのがいい。
完璧な人に人は共感しない。でも、どこか抜けてると憎めなくなり、共感が生まれる。
だからRAVE☆塾での崎野さんの役は、見た目完璧なのにどこか抜ける感じで共感を作りあげている。共感を生むことは、作品の中でキャラがたつことにも繋がり、実にいい。

前半、廃部になる部活の発表場面。
余裕を見せた表情。照明が暗くなった時も、アイドル部の中で一人、笑みを浮かべている。こらえているような表情。ドキドキしている部活を一瞬見るも、その揺るぎない表情は自信にあふれているのが分かる。
自分たちじゃないから、分かり切っているからと、じらされる発表に飽きた表情を見せるのではなかった。その表情からは、アイドル部がどれだけ学校内で地位を築いているか、王者と言わんばかりの位置にいるということを暗に表現していた。
その表情があったから、その後の驚く時の表情も目だけはほぼ動かずに驚く表情が作られ、結果、まさに呆然自失に近いものになっていた。
ここはアイドル部それぞれ表情が違っていたし、他の人たちは可愛らしい表情で良いんだけれど、少し特別な感じを見て取れた。崎野さんのこういう演技に気が付くたび、次の作品を観る時にまた注視したくなる。

しかし、「窮鼠猫を噛む」を「教祖の子はおかま」というアイドル部でも、出来レースだったのではないかという話を突く時の鋭さは、探偵部も気顔負けだったと思う。
後で、「学力って勉強だけじゃないですよね」という言葉が比較として面白い。学力はそうだけど、生きていく上で使わない事も多い知識もたくさんあるのが学力となる。
でも探偵部顔負けの鋭さは、まさに学力だけではない何か。それもテーマの一つにあったのではないかと感じた。
なにしろ、アイドル部が勉強している時に出てきたのが三角関数。学力テストの中で、卒業後に使わない知識のトップクラスではないかとも思われるもの。使う職業なんて限られている。そして対抗戦での、なぞなぞなどの総合力テストになると一気に答えだすところからも、最低限の学力は必要だけど、それが全てではない。取捨選択するべきだとも取れるメッセージを感じた。

なぜなら、アイドル部は老人ホームなどを回って歌い、握手をして、少なくとも人に心の潤いを与えている。それは、学校で教えられてできるものではない。そうなると、アイドル部の活動は、大きな課外活動。そんな風にすら感じた。
手作り弁当などのアコギな商売もしているけれど、それでも需要があるなら、それはニーズにこたえているわけで、うまい戦略とも言える。
高校生がというが、今のアイドルは低年齢化しているし、珍しくないかなと。
ビジネスとしてはある意味優秀。大人は絡んでいないのか、事務所とかどうしているんだろう、部活廃部になった時、事務所とは契約関係でもめないのか、むしろ稼げるということで学校にバックすれば部は存続できるのではないかとすら考えてしまった。

でも、今回はそもそもがいじめに端を発しているというのでひっくり返された。
そこまで重いテーマにしたわけではなく、時間もつかわず、ネタばらしのような感じになっているが、いじめられた側は覚えているというのが強調されていた。
なんでもそうだが、加害者と被害者では、当然感じる温度差が違う。温度差が違うのであれば、当然、記憶に残る程度も変わる。
自分をいじめていた人間が、アイドルとして活動してチヤホヤされている。それをつぶしてやろうというドロドロとした復讐心であれば、このいじめの部分はもっと描かれたかもしれない。
でも、今回は嫉妬心ではないかと感じた。人の嫉妬心も醜いものかもしれないが、その幅は広く、表現次第で大きく変わる。
この話はテンポがいい。最後に復讐心にまみれたものであれば、それはどうしても暗くなってしまう。でも幅のある嫉妬心ならば、雰囲気を壊さず、観る側に答えを委ねる結末が描ける。なにより、この話のタイトル、リベリオンは反逆。それは本当は彼女たちの事だろう。サブタイトルである裏切り。いじめの前、普通に話していたのではないか。だけど、自分がいじめられたくないからと加担した。それは彼女たちにとって、裏切り以外の何物でもない。そう考えた時、タイトルとサブタイトルの意味合いががらりと変わった。

そしてアイドル部を虚像と表現した。
虚像、つまり今見せているものは偽物にすぎない。そして結城美優さん演じた神崎は、自分に自信がなかった、でもアイドルをやって変わった。凄く堂々として自信たっぷりで、強さも見せている。
中学生時代の彼女は知っている予知部の二人からしたら、その姿は無理しているように見え、虚像に見えたのだろう。ふと、そう思った。

しかし、はっきりと分からなかったのが、英語教師・松野はどこまで知っていたのかという点。途中、予知に頼ってみましょうと、他の2人の先生に促している所などを見ると、どうも、彼女は知っていて行動していたように見える。当然、校長にも進言したのは彼女ではないかと思える。
最後に、そうではなかったような言い方をしているけれど、あれを信用していいものか。予知部の2人の事を知っていて、でもそのことは2人には言わず、うまく先導していたのではないかとすら思ってしまう。そうなると、そこでサイドストーリーができてしまう。

しかし、他にも色々と楽しい部分は多かった。コスプレしてドッチボールも観てみたかった気もするし、「教祖の子はおかま」という強烈な聞き間違いが最初にあることで、その後のたくさんの聞き間違いが、全く違和感なく受け取れてしまうところ、ドッチボール部のスラムダンク化(先生、どっちがしたいです、ドアホウなど)、アイドル部が対策を練っているとき、順位順にまともなことを言っていて、その差が垣間見えること。
無知の知は、今だからこそ、観ていて自分でも思い出したけど、当時はよく分からなかった。そしてそれを知っているのに、窮鼠猫を噛むを知らないアイドル部の秀才。

王道パターンができているRAVE☆塾の作品は、観ていて安心感もあるし、観ていて飽きないものだと感じてる。それは、推しの役者がいなくても、とても楽しい。
今回も、Aチームは、崎野さんの他にも知っている人たちが数人いたけど、Bチームは1人くらい。それでも、やっぱり気になって配信を購入した。
そして同じかと思えば、大きく設定が異なる場面もあり、実に楽しい。
公演期間、GWとか連休とかぶれば、両チームとも観に行けたのになぁとか思った。

そして早く面会とか復活して欲しい。その時には色々と気になった人に挨拶したいと思った。また次の作品も期待して待ちたい。


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