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RAVE塾・レヴォレュスィオン Bチーム 感想


革命・レヴォリューションが浸透しているが、意味は同じ。そして、題材としても広く使われている。
思えば自分も学生時代に「Revolution」という小説を書いたことがある。今から考えれば拙い文書・ストーリー。閉鎖的な高校で、教師が絶対的な権力を持ち、体罰も黙認されている。全寮制で、厄介払いとして子供を入学させる。そこで幼馴染からいじめを受ける主人公。エリート一家から追い出された彼が、1人の女性教師と出会い、自分と学校を変えるために奮闘する・・・というもの。
閉鎖的な環境というのが、やはり革命が起きる要因だろうか。
今回のレヴォレュスィオンでも、同じような環境だった。

昔からの慣習といい、一向に校則の見直しを受け入れない教師。ブラック校則と昨今言われ、問題になっているのに関わらず、そこに疑問すら持たずに、慣習のみを貫く。
現在、ブラック企業と言われるものにも色々あるが、その一つに、歴史ある企業が、その古い慣習や体質から抜け出せずに、意図せずブラック化しているものもある。そういう意味では、この時和女子学園もブラック学園と言えるのかもしれない。

サブタイトルにもあるように、女性の革命といえば、ジャンヌダルクの名前が筆頭に上がる。劇中でも、その名が上がる。
RAVE塾作品は、学園が舞台で、基本的にあまり考えずに笑える作品が多かったが、Wteenあたりから、学園を社会の縮図にし、ちょっと考えるところが多くなってきた気がする。笑えるところはもちろん笑えるのだが、心にしっかりと刺さり、共感しやすくなった。
その分、役によって求められる演技が難しい。

そしてそんな事を考えている中、今回、RAVE塾としては新作だけれども、かえってきたのが崎野萌さんだった。今回、主演の日和ゆずさんが、パワフルな、まさに革命軍リーダーと言うような姿で、それに負けないような声量や勢いという意味では、崎野萌さんはまさに適任だった。
これまで、成績が悪かったり、ちょっと頭の回転が悪かったりする役が多かったけど、今回は少し変わり、少し賢い役回り。崎野萌さんの風貌からすると、確かに、その方がしっくりとくる。
しかし完璧すぎるものに、人間は共感できない。見ているだけならそれで良いが、共感は出来ない。今回は革命がテーマ。後から、暴動と言われるか革命と言われるか、結果次第。そして、革命軍を主役にしている以上、やはり観客には一定の共感が欲しい。
かといって、完璧に見える頼りがいのある人がいないと革命自体が不安になるのも事実。
そこで、完璧すぎない役として、崎野萌さんはヴィジュアル的にもスキルとしても適任だった。
オープニング、革命軍はスポットライトが当たらない脇で話をしている。上手側からだと見づらかったが、下手側で見て、その話し合いでもしっかりと中心的に話をしているのが見て取れた。あの場面を見ていると、革命軍の中での役割が垣間見られた。配信では残念ながら映っていなかったので、劇場に行って良かったと思う。
崎野萌さん演じる柚葉は、「おぉぉーい」の部分で、ちょっととぼけたところを披露した後は、革命軍のブレーンとして動く。全員を説得する場面でも、里桜の他に言葉を投げかけるのは柚葉。脅して賛同を得ようとするときの、「いや、きけー」という強さから、「ほれ撤廃」という緩急。
一方で、失敗した時の話をしているとき、掛け声を決めている時の「わぁー」⇒「子供じゃん」のやりとりに見えるように、面白い一面もある。個人的には、入江さん演じるハルとのこのやりとりは好きだったなあ。

この入江怜さんは、何回か演技を拝見したことがある。そのたびに、けっこう印象に残っていて。でも面会等なかった時期なので、話すことはなかったのだが、ちょうどこの公演の少し前、劇団東俳「激流ノ果テ」の物販コーナーで少し話す機会あり、今回のRAVE塾ではどんな演技を見せてくれるか楽しみにしていた。相変らず、しっかりとした演技で、その存在感をしっかりと残す。劇団東俳の役者さんたちは、毎回、楽しませてくれる。

さて、この革命軍の5人。リーダーは里桜で間違いないのだが、ところどころでしっかりとしめる柚葉。革命というイメージのシーンや、「リプレイお願いします」と祈った時の反応の良かった理由の推理を披露するところなど、肝心なところで、納得させる台詞が多い。
説得力のある話し方ができるのは、崎野萌さんのイメージに合う。一方で、「わぁー」のようなシーンもこなす。こう考えると、やはり先生役ではなく、生徒役が来るのは納得。大人っぽいヴィジュアルは先生役に適しているが、一方で放たれる子供っぽさも全く違和感ない、ハイブリッドなスキルは、固定的な役になり得る生徒役にぴったりだ。
今回も数ある表情の中、一番好きだったのは「2時間みておいて」と言われた時の表情。他の4人と比べても、オチの場面らしく、1人、漫画のようなコミカルな表情だった。配信でもかろうじて見ることができたが、台詞がないこのシーン、この表情でしっかりと感情が読み取れ、自分の中で柚葉のキャラクターも確定したように思う。

物語は進み、水谷千尋さん演じる川西先生、前回とは違い、今回は野心もあり、そして少し迫力のあるシーンもありと、存在感が強い。きっと、モヤモヤしていたんだろうなあ、笑い声を出せない高校時代を過ごして進学し、笑い声を出すことの楽しさを知ったからこそ、何とかしたいと思っていた。でも、社会の、企業の縮図と同じ時和学園。一人で手を挙げても、潰されてしまう。生徒会長が手を挙げても、援護すらできない。普通のやり方ではだめだ。そう思っていたのだろう。そこに革命軍が現れ、何とか助けてあげたいと思ったものの、最後に欲が出るあたりが愛らしい。でもだからこそ、また、共感しやすい。自分のヤンまで使って、生徒たちのために奉仕するなんて、そんな聖母のような先生だったら、それこそ「いい先生だったね」で終わる。人間らしさがあっていい。
今考えると、「立ってなさい」は、「もう一回考えなさい」というメッセージがあるし、成功させるために必死だった。だからこそ、あの迫力が出る。あれは怒りによる怖さではなかった。そう考えると、なんといい先生なのだろう。

そして物語は展開していく。小悪魔が、天使じゃないの? とは予測がついたが、夏野香波さん演じる近藤美玖がまさかのキーパーソンだとは。
夏野さんを知ったのはもうだいぶ前だけど、とにかく色々な舞台で観ても印象に残る人だった。会う機会なく、なんとなく追いかけるだけになっていたけど、今回出演されるということで楽しみにしていた。だが、なかなか見せ場が来ない。最初のRAVE塾だし、このくらいなのかなーと思っていたところに、予想を超えてきた。

誘導されてバレてしまった時のクネクネとした動きから始まり、逃げ回り、そして実はその行動は、全て友情のためという熱い展開。
記念式典という舞台で、友達の花道をつくるなんて、なかなかできることじゃない。下手したら、自分の立場も危うくなる。それでも友達のために動く。
彼女は生徒会副会長という役。きっと、そういう役に生きがいも使命感も感じる人なのだろう。これまでも、一番ではなく、一番を支える役。世の中には、支える方が得意な人もいる。決して前には出過ぎない。前に出ず、裏で画策するという訳ではない。自分の働きで誰かが輝くことが嬉しい。そんな役を、夏野さんが演じきっていた。細かいところでも、周りを立てながら、決して自分が目立つことのないように。自分の活躍をばらされたら、それはそれで恥ずかしい。そんなタイプ。
だからこそ、バレた時、自分がこっそりやっていたことが表に出てしまって、恥ずかしくなってしまった。だからこそ、あんなクネクネとしてしまったのではないか。そんな風に感じてしまう。自分にも似たところがある。自分が前に出るより、誰かをサポートすることの方がが楽しい。漫画を読んでいても主人公よりそのサポート役に魅力を感じる。だからこそ、美玖の気持ちも分かる。
友達のためになら、それが眉唾物である小悪魔の話でも乗ってみる。嘘だったらそれはそれで次を考えればいいのだから。
この美玖も、いずれ、一度くらい自分がスポットライトを浴びてみたい。そんな日がきっと来るだろう。そしてそういう人物をの物語を、RAVE塾で描いてほしい。そう思った。

同じサポートでも、崎野萌さんが演じた柚葉とは違う。柚葉は、いざとなったら自分が前に出られるタイプ。今回の革命は、おそらく、里桜が言い出したのだろう。だからそれに乗り、そして言い出した里桜をたてて中心に据えた。そういう縦社会のような礼儀があるのが柚葉。だからこそ、芯が強く、そのために周りも動かす。それでいて、戦場では一番前に出て周りを鼓舞できる。そんな魅力的な姿。役者によって、どう演じ切るか色が変わりそうだが、崎野萌さんの柚葉はついていきたくなる背中だった。

今回、軸となる革命の失敗要因。
何回もやり直すことになってしまったのは、言い方ひとつ、言葉一つで人の心は変わってしまうという事。
目的は同じ、「声を出して笑ってはいけない」という校則を変える事。動いてもらう人たちも同じなのに、使う言葉により、全く賛同を得られない。
これは当然、社会生活でも同じ。根回しまでしていたのに、上手くいかない。
思えば、学生時代に、友人たちと徒党を組んで学校側に訴えて何かを変える。
そんなことを経験できる人たちは、どれくらいいるだろうか。一緒にいる友達もある程度選べて、仲良くない程度の友達や、評判が良くない人たちとは、つかず離れず程度の距離感で接していれば、何となく過ごして卒業できる。卒業したら、そんな距離感の人とはほぼ会う事もない。
少なくとも、この五人はそんなだいそれたことを一緒にやろうと決意した。この五人は、どういう言葉で動こうと思ったのだろう。遊び半分でないのは、彼女たちを見れば分かる。
彼女たちは、その熱意があれば、みんな乗ってくれると思った。だが動かなかった。
熱意はぶつけるだけではだめなのだ。時には相手を傷つけてしまう。
相手の共感を得ないといけない。そのためには、ゆっくりと、言葉の一つ一つを紡いでいくことが大切。そしてなにより、言葉をぶつけるだけではなく、対話が必要。
失敗した時には、ただぶつけただけの乱暴な言葉。それを相手に優しく渡すように放り投げるようにしたことで、相手はそれをしっかりと受け止め、投げ返してくれる。
一度出来たキャッチボールは、何度も続く。

時間を戻すなんて突拍子なことを言ったら、小悪魔なんて言われたら、ヤンをとられるだけじゃなくて、他にも何かあるのではないかと疑ってもおかしくない。それが、一度言葉のキャッチボールをした者たちだからこそ、言葉を信じることが出来た。

人は、やはり言葉を交わすことが大切。改めて、そんなことを教えてくれた作品だった。
今回も楽しませてもらったRAVE塾作品。「かえってきた崎野萌」から始まり、前回から魅力的な教師を演じる水谷千尋さん、そして初めて話すことが出来た夏野香波さんと盛りだくさんで楽しかった。RAVE塾、これだけ毎回見ていると、そろそろ自分なりのドリームチームも創れそうなくらいになってきた。また次の公演が楽しみ。
唯一残念だったのは、通販でブロマイドの追加がなかったこと。通販限定ブロマイド、また次回は復活して欲しい。
さて次は1月。次はどんな面白さと、心にメッセージをくれるのだろう。次はA・B両方観劇予定。見比べられる楽しさも再び。年明けが待ち遠しい。

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