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ソウルの魅力③グルメ編

 最後は食べ物の話。3回訪問してわかった事は、日本とは肉の調理に対する考え方が違うようだという事。肉は出来るだけ丸ごと(骨付き)でじっくり煮込むか、揚げるか、よく焼くなどの調理をした後に食べやすい大きさにする。このような調理方法が肉を柔らかくし、旨みを引き出すようだ。特に鶏肉は色々な料理がありどれも絶品だった。肉をカットするハサミはもちろん、煙を吸い取る器具や、テーブルの電熱器など、日本にはあまりお馴染みのない器具にも出会った。また、健康を大事にしていて、ニンニクや唐辛子は当然の事ながら、野菜や薬草や豆類がふんだんに使われ、さまざまな手法で上手に料理されていた。事前にお店を調べて行った店も、偶然行き当たった店でも全て美味しく味わえた。全体的に量は多めだが、唐辛子の辛さに苦悶することはなかった。美味しい物はたくさんあるが、味わった中からその魅力を伝えようと思う。

鶏肉  参鶏湯、タッカンマリ、唐揚げチキン

参鶏湯(サムゲタン)

 景福宮の近くにある西村の有名店は、場所がわからず通りががりのおばちゃんに聞いてようやくたどり着いた。韓屋造りの入口を入ると、広い空間に並ぶテーブルに案内され、参鶏湯を注文すると待たずに出てくる。待たせないのは韓国グルメの特徴のようだ。黒い土鍋に若い小さい鶏肉が1羽丸ごと白濁したスープの中に入っている。箸でつまむと骨が自然に取れるほどトロトロに煮込まれている。たっぷりのニンニク、なつめや松の実その他いろいろな薬草、詰め物のお米などが入って程よい塩味。スプーンで最後の1滴まで飲み尽くすほど美味だった。

タッカンマリ

 江南の大通りから少し横道に入ったところにある若者に人気のお店に連れて行ってもらった。タッカンマリは、“鳥1羽”という意味だが、大きめのアルミ鍋に入っているのは食べやすくカットされた骨付きの鶏肉1羽分だ。透明の鶏スープは少なくなると足してくれる。そのまま食べても美味しいが、ニンニク酢醤油につけてもよい。じゃがいもやにんじんなどの野菜が入っていて、さらにお餅や麺を追加注文が可能なので、食べても食べても底が見えない。量が多いのも韓国グルメの特徴だ。食べきれない場合は、持ち帰り用の容器に入れてくれるので安心してください。

チキン唐揚げ

 彰義門近くの有名店は、坂の途中の道に面しているのですぐにわかった。店に入るなり1羽?とだけ聞かれる。この1品だけ提供する店のようで、メニューには飲み物しかなかった。ポテトが混ざった鶏唐揚げ山盛りの一皿は、見ただけでも美味しそうなのだが、一口食べて一切油っぽくないのに驚く。なのに外はカリカリで中は柔らかジューシー。ニンニク塩のシンプルな味で、唐揚げというより素揚げの感じだ。秘密の調理方法があるに違いないと思わせる。とにかく絶品でビールが進む。甘辛のタレはお好みで、箸休めの大根の酢漬けも健康的で嬉しい。韓国グルメは人里離れた場所にもあるのだった。


豚肉 サムギョプサル

サムギョプサル

 江南のお目当てのお店が閉店時間を過ぎて入れず、しかたなくその近所の焼肉店へ入った。焼肉は若者向けだと敬遠していたが、入って注文するとすぐに冷蔵庫から大きな肉の塊りがテーブルにどんと置かれ、お姉さんが網の上で肉の六面をじっくり丁寧に焼いてくれる。いい匂いが漂う。ハサミで半分にカットして、また六面を丁寧に焼きながら、上から吊るされた可動式装置を片手で肉の近くに持ってきて煙を吸い取る。これを何度か繰り返すのだが、見事な手さばきに見とれる。最後は食べやすい大きさまでにカットされ、こんがり焼けて熱々の肉を口に入れると、肉の脂は適度に落ちて柔らかく、肉の旨みが口の中に広がる。初めてのサムギョプサルの美味しさに感動した。韓国グルメは有名店でなくてもハズレがないのだった。

牛肉 コムタンスープ せいろ蒸し

コムタンスープ

 COEX内にあるコムタンスープで有名なチェーン店につれていってもらった。コムタンスープとは、牛肉の内臓や骨を長時間煮込んだスープだ。薄味なので醤油やキムチなどで好みの味にして食べる。隣のおじさんグループは、やかんからキムチ汁のような赤い液体をドバドバ入れていた。食べ方は事前にしっかり教えてもらった方が良さそうだ。

せいろ蒸し

 汝矣島の有名店で牛肉のせいろ蒸しを食べた。推し活の聖地めぐりで訪れたのだが、タレに入れる薬味の一つに、もみじおろしがあって、韓国で日本料理なの?と驚くが、それ以上にこの蒸す装置がよく出来ていることに驚いた。木製の器の下にある電熱により、音も蒸気も出ず15分程で蒸し上がるのだ。ランチだったのでそれ程食べられないと思ったが、あっさりしているのでいくらでも食べられ、追加注文したら、お会計もそれなりにほんの少し驚いたのでした。

伝統菓子=薬菓

薬菓と伝統茶

 水原の城壁巡りに歩き疲れて行き当たったカフェは、薬菓と伝統茶のお店だった。チャングムの誓いで有名な水原では、乾燥した木の根や枝や葉を売る薬草店(漢方薬店)を多く見かけた。このお店のオーナーさんは薬草の料理家で、美しくて穏やかな雰囲気があるものの、しっかりと信念を持って薬菓を作るチャングムのような女性。薬菓はもちろん、生姜茶と双和茶もスッキリした甘味で美味しい。手作りの薬菓は日持ちしないものが多く、お土産にできないのが残念でした。

 まだまだ美味しい物にはたくさん出会った。干し柿の中にナッツ類を入れたお菓子は驚きの美味しさだった。日本と同じ干し柿に少し手を加えただけなのだが忘れられない。カフェはどこも広くて天井が高くてオシャレだ。雰囲気と共に味わうコーヒーは格別だ。コンビニのちょっとしたイートインスペースも、少し清潔感には欠けたがドラマでよく見る雰囲気に心が踊った。キンパはどこのお店のものでも美味しい。我が家の夕食も変化した。塊肉か骨付き肉があったら購入して調理してみるようになった。柔らかく美味しい肉を日本風で味わっている。


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