とまどい
去年から、アロマンティックアセクシュアルの感覚を持つ人がいるドラマや映画を続けて観て本当に嬉しいんですが、突然自分が知ってる情景が目の前にある状態にテンションが上がりすぎて、こんなにたくさんどうしよ?みたいな、どうもまだ慣れなくて気持ちが追いついてない感じも少しあります。
例えば、日頃朝ご飯はコーヒーとトーストと目玉焼き、または、ご飯とお味噌汁で満足して過ごしているのに、たまにはいいかと行った旅先の温泉旅館でいただく豪華な朝食御膳や、ホテルのビュッフェでたくさんあるメニューを少しずつ全部お皿に乗せて取りすぎた‼︎どうしよ笑、みたいにテンションが上がったものの、あまりの豪華なラインナップを食べ慣れていないせいで、途中からぼんやりまったりどうしようこんなにいただいていいものか…と眺めてしまうことがあるんです。
たいてい旅もひとりで行くので、誰かに食べないの?とか気にして聞かれることもなく、結局ぼんやりしながら全部美味しくいただいて、そのあとまったりコーヒーやお茶を飲みながら、家でも豪華な朝ご飯を作れるか想像して、めったにないゆったりした朝の時間を堪能できて良かったと幸せを噛み締めることになるんです。
話を戻しますが、映画『そばかす』を年始に映画館で観て、これもまた自分の過去とほとんど重なってわかる場面が多く、キャストの皆さんや音楽も良くて、見に行って良かったと思いました。まだ上映してる地域が少ないので、詳しい感想は控えます。
この作品を映画に詳しいロマセクの方々が見たらどう思うのかが知りたくていろいろ探すと、とある映画プロデューサーの感想、批評?動画があり、そこで語られている内容を見て、アロマンティックアセクシュアルについて、業界の方にもほとんどというか全く知られていないことがわかりました。動画内で正直に感想を話されていて、見る人によっては結構きつい言い方なので、リンクは貼りませんが、Aro/Aceの人あるあるの場面について、なんであんな演出や設定にしたのか、人としてどうよ?みたいなことを言われていて、心にグサグサ受けつつその感想を聞きながら、知らない人に向けてもう少し説明があったほうが伝わりやすいかも?とわたしも思っていたことです。
目に見えてわかるものでもなく、無いことを無いと伝えても信用されずに存在も否定されやすいこの感覚は、作品が増えてきたことによって、もっと具体的な言葉でも表さないと、そのプロデューサーさんが言われたように人間としてどうなの?と受け取る人が増えてしまわないか、恋せぬふたりを見る前に感じていた誤解や偏見が起こらないかの心配がまた少し戻りました。
そばかすのパンフレットで、児玉美月さんのレビューは、私の日常にも響いて思わず涙が出るぐらい、とても素晴らしい言葉で綴られています。そのレビューで、スタートラインと表現されていて、恋せぬふたりを見た時から、映画という別の形式に道が増えたことで、より一層スタートしたばかりなんだと思いました。
友だちとして、性別かかわらず長く一緒に過ごすことがどうして低く見られるのか。特に異性と友情だけでともに過ごすことがありえないとされがちですが、もう少しいろんな関係性を望む人もいることが広がってほしい。社会の中で、違う感覚を持つ人どおしの交流が一般的になるには何が必要なんでしょうか。
テーマは違いますが、映画「窓辺にて」を観た時も"好き"に含まれるものの違い、気持ちの表し方、行動も人によって違うよねと思ってました。好きならばこうしてほしいと自分が思っていても、相手は同じ行動で表そうと思ってない。それで満足できるかできないか、違いを受け入れるか受け入れられないか。
ひとりで過ごしたい私ではありますが、生きていく中で日常や仕事で出会う人とのつながりは大切にしたいと考えてます。ただ、理解されにくい感覚をそのまま表現すると荒波が立ってしまう。ロマセクのふりをするにも綻びは必ず出るので、できるだけ波を穏やかにするために、ほとんどの人と距離を取るように過ごしてます。そのために変わり者と思われてますが、それはそれでいいんです。でも、似た感覚を持つ人でも、わたしみたいな生き方は嫌だ、誰かと一緒に過ごしたいと思う人も多い。
Aro/Aceに限らず、社会から気づかれにくい立場の人、感覚を持つ人はたくさんいるので、すれ違いを拒否するだけでなく、お互いにどう思っているかを伝え合い、これからどうするかを選択する考え方は広まらないものなんでしょうか。
映画やドラマ、物語なら、そんな考えもあると伝えることが可能だと思うんです。自分で作ればいいんですが、ここでブツブツ言うことだけでせいいっぱい。誰か作る人が増えてほしいと願って、今がスタートラインなら、これからもっといろんな作品を見る機会が増えて、どんな風に自分や世間の人たちの考え方が変化していくのかも見れるなと、とまどいながらも楽しめそうで、面白い時に生きてるなと気がつきました。