暗室に潜む【詩】
黒曜石の乳房が睨んだ
唐突に無数の手が伸び彼を囲んで
思い思いに金粉を塗れば
針葉樹を象った僕だけが取り残された
あらゆる「触れられない」を集めて
いちど限りの宵に酔うひと
美しくない、などと云うのは誰か
僕の声をした僕じゃない声
閑寂の方に耳をすますと 壁が
銀食器を敷き詰めた壁が闇に溶け出す
床が迫り上がり 天井は墜ち
両性具有を抱擁する
明かりと云えるものならば
ここでは弾ける百合の香のみか
ようやく姿を見せたな
放埒へ向かう意思の真後ろ
光る蛇の眼
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