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矢口れんと
2022年6月22日 13:57
翡翠を磨いたような湖面を見下ろしながら、ひとりの鳥人が飛遊に興じていた。体躯ひとつを優に超える翼を対にはためかせ、風を切っていく。立派な筋肉を備えた肩や背中の肌は、翼と同じ焦茶色の羽でまばらに覆われていた。 ふと湖畔の岩場に人影を見つけた。足元が常人のそれではないことに気付くと、鳥人は舌なめずりをして近づいていった。「よお! 何してるんだ?」 岩場の手前で浮遊しながら無邪気に声を張った。