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ドニゼッティのオペラ「アンナ・ボレーナ」

 19世紀前半のイタリア人作曲家ドニゼッティ。名前くらいしか知らない(あと『愛の妙薬』の人と)けど、新書に解説が載っていて興味を持ってしまった。
 私はオペラに興味があるものの、悲劇はさっぱりで、軽薄無比なオペレッタの方を好む傾向だった。好みもへったくれもほぼ聴いたことがないので何を生意気な、なのだがちょっと言ってみたかったのである。
 しかしアリストテレスの『詩学』なる書物に悲劇にかんする記述しか現存してない以上、悲劇は至高の分野なのである。喜劇など二番手といったところか。
 ただ、昨今、市民講座のアダム・スミス講座の予習でイギリス中世史から産業革命あたりまでの高校世界史をさらっていて(というか恥をさらせば世界史を勉強せずに高校も大学受験も終えた私には初学に等しいのだが)、ちょうどチューダー朝の王たちが記憶に新しかったので興味がわいたのである。
 インパクトが強かったのは女王3部作最初の女王、タイトル通りの名をした「アンナ・ボレーナ」である。おそらくこの名はイタリア語読みで、イギリスではアン・ブーリンと呼ばれた女だ。彼女は自分の離婚問題から宗教改革を引き起こしたヘンリー8世の二人めの正式な妃になった女である。元々王妃の女官だったのがヘンリー8世に気に入られて妃になったらしい。しかし最後は不貞の疑惑を掛けられ、愛人とされる男ともどもヘンリー8世によって死刑にされている。
 因果応報に見える戯曲上の彼女の死は、生前彼女の評判が良くなかった事とも連動しているらしい。私にはひたすらにヘンリー8世が勝手に見えるし、アンばかりを責めるなとも思うが。
 歴史上の嫌われ女王を悪役にして悲劇的な死で締めくくるオペラか。
 いや、悲劇最低だろ。悲しい話の体裁で、「悪い女が殺される」という構図を皆で喜んで見ていないか。いじめてもいい、とターゲットにした女を公開リンチに掛けている見世物のようでなんだか不穏な気持ちになって来た。

 しかし本当にそんな悪意の嗅ぎ取れる作品なのだろうか。
 うう、聴いてみたい……。日本語字幕あるかな。ああううああ、やっぱりせめて、せめて英語は大事……!!

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