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ひとは嫌いな土地になどいてはならない 時間は何も保護しない 偉大であることは欠乏の戦慄に…
暁に漂ふ花の馨りすらん絡みて咬みて貌(かたち)も知らず その花の青き馨りを封函するときば…
夜 海岸通りを歩く 海の零度を確かめる 冷たい季節の配列が続いていた ワイエ…
わたしの夏――ひとりの男とその女のために必要とされた時刻 夕べには愛を語る 習慣の美…
夕闇の漂う頃 秋の深まりに街は濃い影を落し ふたり たそがれを歩いている 静かな夕べ…
第1部 リラの花、五月の誰彼に…… リラの花―――五月の誰彼に似合いの 映画のよ…
第1章 淋しい草原 月の砂を食べる 美しい女といふアンニュイ そのやはらかな質感を確かめる 夜の涙はきつく吸わない 濡れ痛む髪の束ねを解き放ちわれよりほかに誰を抱かん 抱きをれば胸のかたちの痛みゆく雨を呪いしひとのやさしさ 大いなる星座のもとにふたり佇つこんじょうの夜ちきうはひどくめまいする 美しい建築の横顔も それからは淋しい草原にゐるのだ ライオンの山 ライオンの山には 黄色い火炎樹と青い一角獣が栖んでいた ある日戦い
傘 荒れ果てたわたしの草原にも それとなし風は吹いている 砂丘のまんなかには …