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南極から帰ってくると風邪に罹りやすくなっているのは本当なのか?(免疫負債とかの話)

最近の感染症の流行について免疫負債説が言われることがある。
私はガチでマスクをしているので、ほんの少し気になっている。

で、以前ラジオで聞いた南極観測隊の話を思い出した。

『南極から帰ってくるとすぐに風邪をひく。南極にはウイルスも細菌もいないから免疫力低下しちゃうんですよ。』みたいなの。

本当だろうか。
それは免疫負債的なものだろうか。

今回はそのあたりをまとめた。
引用が多く長いので適時飛ばすのをオススメする。

なお、結論としては『南極で免疫低下はあるが原因は不明』という感じ。


◆免疫負債について

最近の感染症の流行について、一部の専門家らしき人は免疫負債を疑っている。まあただ、憶測の段階であることには注意が必要だろう。

関連記事から一部引用する。
リンクは以下。

「中国の肺炎拡大」免疫低下以外に懸念される要因見落とされている「別の問題」を医師が指摘
谷本 哲也 : 内科医
2023/11/30 5:20

免疫力の低下だけ原因ではない

中国で今回のアウトブレイク(集団感染)が発生した理由はまだ明らかになっていないが、新型コロナ対策によって約2年間病原体の流行が抑えられていたことを挙げる向きが多い。

つまり、今回の冬シーズンの感染症患者の増加がこれまでと異なるのは、「新型コロナ対策によってさまざまな病原菌に曝される機会が減ったことで、多くの人々の免疫力が低下し、病原菌への感受性(かかりやすさ)が増したからではないか」と見られているわけだ。

新型コロナ対策として、世界中で行われたロックダウンや、そのほかの措置によって、季節性の病原体が流行する機会が減少したことはよく知られている。

日本でもしばらくインフルエンザの流行発生が止まっていた。いいことのよう聞こえるかもしれないが、病原体に対する免疫力を培う機会が低下したという見方もできる。この現象は「免疫の負債」とも呼ばれ、人々が一般的な病原体に対する抵抗力を失ったことを示している。

「中国の肺炎拡大」免疫低下以外に懸念される要因 見落とされている「別の問題」を医師が指摘 | 医療・病院 | 東洋経済オンライン
[2023.12.14 引用]
https://toyokeizai.net/articles/-/718099?page=3

◆体験談から

南極に行った際の免疫負債的な考え方は、やはりメジャーっぽい。
『たった4カ月しか旅をしていない』であっても影響を受けていそうだ。

関連記事から一部引用する。
リンクは以下。

扁桃炎、コロナ、さらに原稿も書けない!恐怖の「南極病」 半年間の闘病記
[2023/09/16 12:00]

■本当に病気になる
「南極病」に陥る予兆がなかったわけではない。異変はまず、体に現れた。
南極は無菌状態なので、免疫が落ち、日本に帰ると何かしらの病気になるというのは事前に聞いていた。ただ、それは1年以上南極で過ごす越冬隊の話で、たった4カ月しか旅をしていない私たち夏隊員には無縁だと思っていた。
しかし相棒の神山カメラマンが南極から帰国した次の日に(恐らく観測隊の中でも最速で)さっそくコロナに感染した。
そして、自分も数カ月間で何度も熱にうなされることになった。国内各地の取材に行く度、もれなく何かに感染する体になってしまったのだ。

扁桃炎、コロナ、さらに原稿も書けない!恐怖の「南極病」 半年間の闘病記
[2023.12.14 引用]
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000316110.html

◆論文から

南極と免疫低下について軽く論文を探してみたところ、二つ見つかった。

論文では二つとも免疫機能の低下が確認されている。
しかし、免疫負債というよりもストレスが疑われているようだ。

とはいえ、一方の論文では『不安や調査したホルモンのレベルとは相関を示さなかった。』としている。

明らかな原因(免疫負債かどうか)は謎という結果。

なお、参考にしたものは以下。
興味のある方はどうぞ。

◇◇◇

南極の隔離:免疫とウイルスの研究

Immunol Cell Biol
1997 Jun;75(3):275-83.
doi: 10.1038/icb.1997.42.

要旨

ストレスの多い環境条件は免疫反応性を大きく左右する。この影響は、南極での長期隔離にさらされたオーストラリア国立南極観測隊集団において顕著であった。皮膚遅延型過敏反応の抑制、マイトジェンであるフィトヘマグルチニンに対するT細胞増殖のピーク時48.9%減少など、T細胞機能の変化が9ヶ月間の隔離期間中に記録された。T細胞の機能障害は、炎症性サイトカインの産生変化に伴う逆説的な非定型単球増多を含む、末梢血単核球コンパートメント内の変化によって媒介された。末梢血単核球による主要な炎症性モノカインであるTNF-αの産生は著しく減少し、IL-1、IL-2、IL-6、IL-1ra、IL-10の産生にも変化が認められた。長期の南極隔離は、ヘルペスウイルスの排出の増加や多クローン性潜伏エプスタイン・バーウイルス感染B細胞集団の拡大など、潜伏ヘルペスウイルスの恒常性の変化とも関連している。これらの知見は、長期的な健康に重要な影響を与える。

Antarctic isolation: immune and viral studies - PubMed
[2023.12.14 引用]
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9243293/

◇◇◇

南極越冬群における季節性皮膚免疫反応:テストステロン、ビタミンD代謝産物、不安スコアとの関連なし

Arctic Med Res
.1996 Jul;55(3):118-22.

要旨

免疫機能は、性ホルモン、ビタミンD代謝産物、ストレスなどの複雑な神経内分泌因子群によって調節される。南極探検者は細胞媒介性免疫の低下を示す。また、越冬中の探検家におけるテストステロンレベルの低下も示されており、短期旅行中の探検家における不安レベルと免疫機能低下との相関も示唆されている。19人の男性南極探検隊員を対象に、細胞介在性免疫、テストステロンとビタミンD代謝物のレベル、不安の心理学的指標を3ヵ月ごとに評価した。研究期間中に免疫機能の有意な低下が認められ、これまでの南極での研究と一致した。テストステロン、不安、ビタミンDの免疫調節代謝物のレベルは有意に変化しなかった。このグループでは、免疫機能の低下は、不安や調査したホルモンのレベルとは相関を示さなかった。

Seasonal cutaneous immune responses in an Antarctic wintering group: no association with testosterone, vitamin D metabolite or anxiety score - PubMed
[2023.12.14 引用]
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8885433/

◆おわりに

南極の論文で免疫負債に触れていれば答えとしてはわかりやすかったのだが言及されていない。

まあ、南極で生活するというだけで様々な要素が変わるわけで、このような研究の評価はガチプロじゃないと無理。免疫負債っぽい気もするが私としては『謎』で終わる。

◇◇◇

それにしても、もし免疫負債が本当だとすると、長いことガチでマスクを着け続けている私の体は大丈夫なのだろうか。

そのようなことが調べられそうな『免疫力判定検査』(血液検査)について調べたら3万5千円くらいする。3千円くらいならやるのに……。

とりあえず南極に行く方はご注意を!

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