あのクズを殴ってやりたいんだ 4話までの感想
とても面白く見ているドラマです。
シリアス寄りのラブコメでしょうか?
ラブコメと言えばライバルがいるのがお決まりですが、このドラマの個性的な点は二人の間に立ち塞がる最大の障害がライバルではなくボクシングだというところです。
市役所勤務の佐藤ほこ美(奈緒)は披露宴当日、彼氏に逃げられ、
助けて寄り添ってくれたカメラマンでバーテンダーのくずや海里(玉森裕太)に心を奪われキスしますが、
海里は誰にも本気にならず女から貰ったプレゼントをお金に換えるようなクズたとわかり、海里を殴るためボクシングを始めます。
その海里が単なるクズではなく、先輩をボクシングの試合で死なせてしまった闇を抱え、先輩の母親に7年間もバイト代の全てのお金を送り続けていることをほこ美が知ったのが、この4話です。
普段は軽妙な海里の苦しさ、心の叫びがボクシングを通して表現されていました。
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網膜裂孔でボクサーを引退して海里のセコンドになった羽根木ジムの会長の娘、羽根木ゆい(岡崎紗絵)は、7年振りにセコンドとして復帰することを決めました。
「もう一度ボクシングしろとは言わない。でももう一度自分の人生を生きて」と海里にボクシングのチケットを渡します。
葛藤しつつボクシングの試合を見に行った海里は、兄のように慕っていたのに自分の拳(ダウンを奪ったアッパー)で死なせてしまった平山大地(大東駿介)との試合がフラッシュバックして、吐きそうになり嗚咽して会場の外へ逃れます。
しかし試合後はゆいの前に姿を現し、「ゆいのお陰でここまでこれたよ」と心配させないように振る舞います。
ゆいは「遅いよ。海里のことずっと好きだった。返事とかいらないから。女として見られてないことわかってたから。これからはトレーナーとして前を向いていく」と
海里に言います。
恋の名乗りをあげたばかりで即撤退です。
あっさりしすぎじゃない?と思う人もいるでしょうが、上述したようにこのドラマの最大の恋の障壁はボクシングなのです。
ゆいは「あの子(ほこ美)が来てから止まった時間が動きだしたみたい」と海里に言います。
ほこ美が企画した市役所のボクシングのイベントに、海里がカメラマンとして行くつもりだったことに衝撃を受けたゆいは、ほこ美には海里を揺さぶる何かがあることを認めざるを得ないと気づいたのです。
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一方、ほこ美は生の試合を見たことでボクシングに一層強く魅せられていきます。
ほこ美は高揚した気持ちで試合後の無人のリングに上がります。
そこへ海里がやって来ます。
こんなところにはいたくないはずの海里がまたリング近くに戻ってきたのは、ほこ美になぜか引き寄せられてしまう自分がいるからです。
ほこ美は全ての事情を知った上で海里に言うのです。
「強くなって海里さんやゆいさんがどんな景色を見ていたか知りたいんです。だからボクシングを教えてください。」
海里は激昂します。
「いい加減にしてくれよ。俺はここで人を殺してる。本当はここにいるのも吐き気がするんだ。もうこっち入ってくんな!!」
海里は背を向けて立ち去ります。
ほこ美と海里がお互いに好きになっているのは確かですが、ボクシングという障壁があるのです。
ほこ美がボクサーとして試合に出る(ゆいがセコンド)シーンは 先にちらっと描かれているので、
二人の恋が成就するためには、海里がボクシングをするほこ美を丸ごと受け止める必要があります。
ボクシングを含めたスポーツは撮らないと決めている海里が、ボクサーとしてのほこ美を撮ることは予想できます。
けれど恋の成就までさせるというなら、設定(海里の心の闇)がハードなので、海里の心を変えさせる(視聴者を納得させる)よほどの展開が必要だと思います。
脚本家の腕が問われると思います。
ほこ美のボクシングの写真だけ撮って悲恋になるなら綺麗にまとめられますが、それでは物足りないでしょう。
あの心の闇を乗り越えてボクサーのほこ美とハッピーエンドになる展開が圧倒的な説得力を持って描かれたら、
素晴らしいドラマになると思うので期待しています。
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ほこ美のことを好きらしい企画政策室の大場奏斗(小関裕太)は、ほこ美が海里を殴ることに戦意喪失していることを見抜いて言います。
「佐藤(ほこ美)がボクシングを続ける意味も無くなるってことか。だってあの人を殴りたくて始めたんだろ」
ほこ美は考え込みますが、ボクシングに魅入られた気持ちは、海里のこととは別に強い感情としてもう育ってしまっているのです。
なので、ほこ美が海里との恋のためにボクシングをやめる選択肢は無いです。
そんなドラマだったら駄作になります。
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ほこ美の職場の女友達、新田撫(ももクロ玉井詩織)の黒い裏の顔が4話で描かれました。
「(ほこ美は)全然可愛くないし女子力低いし地味だし真面目でつまらない女。なんでみんなあの子がいいってなるの? 私はほこ美が幸せになるの許せないんだよね」
新田撫は大場のことを好きらしいので嫉妬するのはわかるけど、もっと本質的にほこ美に対して嫌悪感がありそうです。
そこもドラマの意外なスパイスとして気になるところ。
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海里が死なせた先輩のお墓参りで手向けた花を踏みつける男の足元が映ります。
羽根木ジムの会長(渡部篤郎)ぼくミスリードしていましたが、
海里と同居して弟のように振る舞っているカメラマンアシスタントの相葉悟(倉悠貴)だと思われます。
ほこ美の友達の新田撫に海里は人を殺したという露骨な言い方で喋ったのも悪意があります。
海里がゆいに誘われたボクシングの試合に行くのを食事に誘って邪魔しようとしたり、市役所のボクシングイベントの写真を撮りに行くのを邪魔したのも悟だと思います。
海里が悟に市役所のパンフレットを渡して見せているシーンがあり、そのパンフレットが神奈川県議会議員の富岡のところへ無記名の茶封筒で送られました。
人を殺した者に市役所の写真を任せるなと、富岡が市役所に圧力をかけて邪魔してきたのです。
「またあの人が邪魔してきたんじゃないの?」とゆいが言うあの人とは富岡のことでしょう。
心配するゆいに「慣れてるから」と海里は言います。
海里と富岡議員の関係はまだわかりません。
家出して平山大地(死なせた先輩)に拾われてボクサーになった海里は、家と疎遠です。
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そんな海里はほこ美の家族を「いい家族じゃん」と言います。
ほこ美が忘れて帰った牛乳を届けた海里にほこ美の母、スナックのママ(斉藤由貴)ははしゃいで
「ほこ美とはどんな関係? 彼氏?」と聞くと、
「そんなところです。」
と海里は言います。
会社の資料とかならともかく、牛乳ぽっちをわざわざ届けに行くのは好きだからしか理由が無いので、海里は潔く言い訳しないのです。
言い訳したってスナックのママにはお見通しだから、あっさり認めてしまうところが面白かったです。
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ボクシングは物理と気づいてから上達するほこ美の描かれ方は秀逸です。
その前にUFOキャッチャーで、物理として考えて凄腕を見せるほこ美が描かれているので説得力があります。
UFOキャッチャーは海里とほこ美が居合わせる場所ですが、海里の方にも死なせた先輩の平山との思い出があったのです。
細部まで練り込まれた脚本だと思います。
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海里はクズを演じてある意味人生を捨てています。
真面目に振る舞って生きていき人に期待されてまた傷つけたり失望されたりするより、
クズとして人の目に映る方が楽なのです。
兄のように慕っていたのに死なせてしまった平山先輩とのあの悪夢の試合も、真っ当に生きる自分の唯一の汚点と見ればその闇が濃く強くなる。
クズな自分のクズな人生としてやっていけば、なんとかやり過ごしていけるんだと思います。
そんな海里の中に真面目さが表れてしまうのが、ほこ美という目の離せない存在であり、
ほこ美によってテンポが崩されるのに苛立ってもいるのだと思います。
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読んでくださり、ありがとうございます。
また次回も楽しみに見て感想を書きたいと思います。