親知らず物語①
➖いづれの御時にか
女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に
いとやむごとなき際にはあらぬが
すぐれて時めきたまふありけり➖
いま話題の源氏物語の冒頭である。
私の脳内ではこう訳される。
いつだったか
正社員でもパートでもない
ただの無職であるが
一丁前に極めて歯が痛むときがあった
少々強引だが、まさにそういう気持ちだったのだ。
2020年にここ福岡へ移住したことは何度か述べた通りだ。移住に際して地味に面倒なのがかかりつけの病院探しだ。
幸い家族みんな健康で持病もない。とりあえず体調がいいうちに口コミを見ながら病院を探そう。まずは小児科から?などと呑気なことを考えているうちに、自分の奥歯が痛いことに気がついた。しかも左右どちらもだ。
はじめのうちは「たまに痛いけどずっとじゃないし、時間とお金がもったいないからまだ放置でいっか」とのんびりしていた。
ある日、チョコレートを一粒かじったとき、奥歯に激痛が走った。
さすがにこの痛みはまずいと思い、近所にある評判の悪くない歯科を受診した。「下の奥歯が左右とも痛くて、たぶん虫歯になってると思うので診てほしいです」と先生に伝えた。
全体をチェックしてもらったあと、先生から驚きの回答があった。
「下じゃなくて上の左右の親知らずに穴が開いてます。さっさと抜きましょう」
え、上?
てっきり下だと思っていた痛みはまさかの上の歯だった。ていうか私、親知らずも生えていたのか!さすが親知らずという名前だけある!などと感心する。
先生曰く「奥歯はたまに上下の勘違いされる人もいますよ〜」とのこと。上でも下でもどっちでもいいからさっさと虫歯を成敗してくれと思いつつ、抜歯は次週に持ち越しとなった。
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?