読む、れもらんらいふデザイン塾vol.12【谷川じゅんじ】
はじめに言葉ありき───(新約聖書「ヨハネによる福音書」第一章より)
創世は神の言葉(ロゴス)からはじまった。すなわち「言葉は神」であり、あらゆるものは言葉に起因している。スペースコンポーザーの谷川じゅんじさんの思考は、私たちに改めてそのことを気付かせてくれる。
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こんにちは、嶋津亮太です。谷川じゅんじさんの講義を受けていると、二回驚きが訪れます。一度目は、収斂された言葉によって思考が整理される感覚で。二度目は、明瞭化した視界から発見される新たな課題によって。
これほどまでに美しく「並べられた言葉の関係性」を描く人はいません。そこに置いただけで、複数の見えない糸がリンクしはじめます。AとBを繋いだ時に立体的に現れる世界。人はそれを「ビジョン」と呼び、「コンセプト」と呼び、「思想」と呼び、「本質」と呼びます。つまり、クリエイターが望むもの───創作の資源は、言葉の関係性の上に構築されるものだということを指し示してくれます。
それをクリエーションの中に意図的に忍び込ませるのか、あるいはロジカルな道理として機能させるのか。私たちは収斂された言葉によって思考し、選択できます。輪郭のぼやけた現象や感情に枠を与え、密度の高い言葉に洗練させていく谷川さんの講義。「言葉の建築」が生む新しい世界をどうぞご覧ください。
※当レポートの写真は伏見歴堂さん
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対価とは?
谷川
僕は〝クリエイティブ〟には対価があると考えていて。「いいものをつくったからそれでいい」ということではなく。「対価とは何か?」ということを常に意識するようにしています。
商業クリエイティブというのは「表現する」という意味では、アートと変わらない部分が多分にあるのですが、常に対価が発生しています。アートは「自分のつくりたいものをつくること」に対し商業クリエイティブは「仕事を依頼してくれる人がいて、その人に対して期待に応える見返りとしてお金をいただく」。もちろんコレクターの方が「こういうものをつくってください」と依頼をいただくフェーズもあるのですが、それは売れっ子の一部のアーティストだけで。〝クリエイティブ〟はデザインやアートなどいろいろなジャンルのものが混じりはじめています。その中で僕は「一体何のためにやっているのか?」ということをシビアに考えています。
自分がデザイナーとして独立して一人ではじめた時に、お金のことを自分で言わなくてはいけない状況になりました。例えば、自分がつくった企画の対価が15万円だった時に、相手が「10万円しかないです」と言ってきても、5万円を値引かない交渉を自分でやらなくてはいけない。「あなたが考えて、あなたが書いたものに対して、あなたが15万円と言っているんですよね。10万円と何も変わらないじゃないですか?」と言葉にする人とは、今まで僕は出会ったことはないですが、でも心のどこかでそのように思っている人と向き合わなければいけません。
「この報酬を得るに相応しい中身の詰まったものである」と伝える自信をいかに持つか。自分自身がクリエーションするプロセスの中で、その気持ちが折れないように、生み出すものに対してどうプライドを持つかという意味での自分自身の追い込みなどを話そうと思います。
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Visualize to innovation
谷川
イノベーションを目に見える形にしようというのがテーマです。「イノベーション(Innovation)」という言葉を辞書で引けば「導入、改革、革新」という意味が出てきます。それと似た言葉に「エボリューション(Evolution)」があります。エボリューションは、右肩上がりで積み重なって進化していくイメージですが、イノベーションというのは右肩上がりではあるのだが、ある瞬間に爆発的に上昇する(ジャンプアップ)イメージです。
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