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スナック就労体験記〈後編〉

前編はここから❗️

でもそれは、必然と言えば必然で。というのも、インターネットで「女性募集」の求人を見つけて応募する、という流れを経て働きはじめるのが今までのセオリー。大々的に募集をかけることって、当たり前だけどお店側からしたらコストのかかることで、大抵のお店は、そこに結構な額を投資してまでも出来るだけ多くの(欲を言えば若くて容姿も良くてお酒も飲める)「女性」を採用したいという意向が、程度は違えどあるのではないかと思うのです。
そうなってくると、やはりお店側がスタッフに求めることは、人当たりの良さ、愛嬌、話がうまい、とかもそうなんだけど、どうしても見た目の「女性らしさ」みたいなものになってきて、それがたとえば、「デニム禁止」「パーカー禁止」「スニーカー禁止」とか、色々あるけど分かりやすいところだとそんな感じ。最初に働いたところの面接で「必ず膝上スカートで」って言われた時、めちゃくちゃ驚いたし、普通になんで?って思ったんですよ。でも、服装規定だけで決めつけるのも良くないし、業務内容も楽しそうだし、まあこれくらいの条件は飲むか〜と思って、ネットでペラペラの謎スカートを買ったのを覚えてる。だけど今思うと、あの言葉の奥には、もっと深い意味が含まれていたというか。それはつまり、スカートを履けばもうOK!ってことでは当然無くて、「女の子らしくいること」も同時に要求しているぞ、ということ。そしてお客さんもそれに伴って女の子らしさを求めてくる、そういう作りになっていますよー、そこんとこよろしくー、というワケ。それを理解したとき、なんだか少しやるせない気持ちになってしまって。

とはいえ、元を辿れば「女性募集」の文字を見て応募をしたのは紛れもなくこの私。この事態は想像できたはずで、お店側が悪いわけでも、お客さんが悪いわけでもない。ただ、実際にその感覚の古さを目の当たりにして、軽い絶望を受けてしまったのかもなと。なんというか、価値観がアップデートされないことが確約されている場所に身を置き続けること(自分で飛び込んだんだけどね)ってまあまあ酷じゃんと感じるようになったのが、最終的に離脱した一番の理由になるのかもしれません。

私は振る舞い方の引き出しがほとんどないタイプというか。よく言えば?裏表がない、みたいなことになるとは思うんですが、たとえば「もっと女の子っぽく振る舞いなさい」と言われたとして、もちろんジェンダー的な観点から見てその発言に思うことはあるけど、それを切り離して考えても「出来ない」し「やりたくない」んですよ。自分じゃないものになりきる、みたいなことへの圧倒的な嫌悪感。中学生のとき英語の塾に通っていて、教科書の音読をしていたら「声が低い。もっと明るく読め」っておじいさんの先生に怒られたことがあるんだけど、(ハ?声が低いのは元々だし、私にとっては明るく読んでるんだけど。このジジイなんなの?)って思ってすぐ辞めちゃったことがあったり。元の性格に対して、何かを押し付けられること全般が多分苦手なんだと思う。
だから結局、見た目だけじゃなく精神的な「女性らしさ」(女子力みたいなヤツ)を求められたとしても、よくわからないので全く無視して自由に働いてましたし、言ってしまえばそれでいてしっかりお客さんをつけられて、売上を立てられるのであればお店側も何も言えないというか。そんなこんなで、私の性格を理解して楽しんでくれるお客さんもいたからこそやってこれたし、私も楽しく働いてきたし、このままでも良かったのかもしれない。だけどどうしても、じゃあ尚更スカート履かなくていいじゃんって思っちゃうし、昔からのお客さんなら何でも許される、みたいなノリを理解しなくちゃいけない雰囲気とか、初対面でセクハラ・モラハラ発言されたり男尊女卑的な態度を取られたりすることに対してピリつきながらもテキトーに流すスキルを得てしまったこととかも、あれ、なんか、このままでいいのか?という気持ちがどんどん大きくなっていって。

まー、仕事ってそういうもんでしょと言われればそれまでではあるというか、どんな仕事にも多少の我慢は付き物だしみんなそれぞれ抱えてやっているということは重々承知しています。でもその上で、変わりゆく社会に対応していく姿勢だけは必要じゃないカナ???って、やっぱり思うんですよね。それは、雇われの身である以上、私個人でどうにか出来ることじゃないけど、かと言ってオーナーに直々に説得しにいくほどの熱量はない。だから辞めちゃったんですけどね。

私は元々、スナックという概念に恋していたわけだけど、スナックを一纏めにすることがナンセンスであったということを数年かけて、身をもって実感することになりました。しかし、私が憧れていた空間は、新しい店だろうと老舗だろうと、スナックだろうと居酒屋だろうと今も確かに存在する。最近、新宿ゴールデン街で週一回働いてる飲み屋があるんですが、その店と人は私にとってすごく魅力的で、あぁ、居心地がいいなぁとうっとりしてしまうこともある。きっと、私が憧れてきたのはそんな空間だった。そりゃあ私だって気を抜けばきっとすぐに社会の変化に置いていかれるけど、もしいつか、私が思い描いていた理想のスナック/飲み屋像を現実に出来るときが来るとしたら、果敢に食らいつこうとする姿勢は忘れないでいたいなーとかね、先のことは全く分からないし考えてもないですが、ふと思ったりします。ま、その時はみんな遊びに来てね〜^_^

終わりです^_^笑

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