姉さんと生きていく話。

いつも使っていた端末が壊れてしまったため、更新を止めていた。だからなのか、タイピングの速度が少し落ちてしまっていて、ちょっとだけ落ち込んでいる。やはりこういうのは継続が大事らしい。

この一週間はかなり重たかった。
年が明け、新学期になって、一気に進路について考える機会が増えてきた。家でもきちんと具体的な話をするように、と学校の先生方からもプレッシャーがかかる。
僕にとって、将来に向き合うことは、姉さんに向き合うことに等しい。姉さんと生きていくために、どんな道を選ぶのがベストなのか。日々考えている。
両親にどうやって伝えるかという問題もある。彼らが娘である姉さんを愛するように、きょうだいとして僕も姉さんを心から愛しているのだと、同じ時間を生きることができなかったからこそ、その生命と向き合って生きていきたいのだと、伝えなければならないときがかならず来る。それも、近いうちに。
両親の心の柔らかいところに触れるのは、本当に怖い。でも、きちんと向き合うことでしか、僕ら家族は前に進めないのだと思う。

考えるのは苦しい。
その思考を近くに置いていると、姉さんへの想いは自分の内側へと、深く深く沈んでいく。恐ろしい想像もしてしまう。
姉さんのために用意されていた女の体と、幸せを奪って生まれてきてしまった。姉さんが享受するはずだった生を横取りして生まれてきたのだから、この欠陥品の体は当然の報いだ、とか。
苦しい。鬱屈した、呪いみたいな思考。
しかし、そんなふうに考えている時間を、失くしたくないのだ。そうやって苦しんでいるときが、姉さんを最も近くで感じられるときだから、愛おしいとさえ思えてしまう。

ごめんなさい。
姉さんを差し置いて生まれてきてごめんなさい。
姉さんの命の椅子を奪っておいて、姉さんと一緒に生きたいなんて、エゴイストでごめんなさい。

みかの原 わきて流るる いづみ川
いつみきとてか 恋しかるらむ

逢うことなど叶わないのに、愛おしくてたまらないのは、なぜなんだろう。
気が狂いそうだ。狂おしく愛している。
それだけの”本当”にすがっている。

姉さん。
愚かな僕を許さないで。
怒って、頬を張って、気が済むまで罵って、それでも僕をきょうだいだと認めてくれるなら、抱きしめてほしい。
そうしたら次は、次こそ、一緒にこの世界を生きてくれませんか。
海に行こう。短い生涯を病院だけで過ごしたあなたが見ることのなかった海を見に行こうよ。
冬には雪、春には桜。あなたに見せたいものがあるよ。この世界は綺麗で、尊くて、それなのに最初から何もなかったかのように、あなたが欠けているから。

本当は全部、いますぐにしたいことなんだよ。
他の誰でもない俺が、他の誰でもないあなたと、生きたいんだよ。
幸せにしたいんだよ。
けど、いないんだもん
この世界のどこ探したって、写真の中にしか見つからないんだもん
愛してるも、傍にいたいも、伝わらないんだもん
俺は、どう生きれば、あなたに褒めてもらえるの?
許して、認めてもらえるの?
答え合わせは、いつ?

1000文字以上に渡る独白も、つらつらと、どこまでも続くように、僕は明日も、必死に呼吸をする。

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