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盲目

雨音で目が覚めた
外はまだ暗い
僕は雨に言った
「おかえり」
強かった雨が
少し優しい気がした

彼の声で目が覚めた
何だかいい匂いがする
彼が言う
「おはよう」
ふと彼がそこに居る事に
安堵が溢れた

目が覚めた
暗い夕方に一人
天井に呟く
「今何時」
部屋に放たれた声は
有為な振動を拒んだ

それぞれが目覚めた時に
一人一人に朝が訪れて
1人も2人も意味を持たず
ただ針が蠢く

意味が無い事に意味があって
それは目が覚めると
目蓋の裏にいる

雀の鳴く声
烏の飛ぶ音
扉の開く音
床の軋む音
空を掻く音

全てが僕らを創り
僕らは全てを知らない

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