この想いをどう言葉にしていいかわからない5
スピッツのたくさんある曲の中に正夢という曲がある。歌詞の中に「愛は必ず最後に勝つだろう そういうことにして生きていける」「ずっとまともじゃないってわかってる」というフレーズがある。これが今の私にぴったりの言葉。じゃなければ連絡をたまにしか取らない彼に「Switch対決しようね」の一言だけ送るよううな馬鹿な真似はしないはず。きっとこれにも彼の返事は無い。あっても「うん」かスタンプの二択だ。
そんな話はさておき、友人の結婚式で東京に来た。友人のウエディングドレス姿はやっぱり綺麗で、こうして一緒のテーブルに座っている一人一人が順番に人妻になっていくのか、そしたら私は…と想像せざるをえなかった。
人の幸せを見ると自分も幸せな気持ちになるの反面、自分はそちら側に行けるのだろうか、そもそもそちら側に行きたいのだろうかと考えながら電車に揺られる。この後、彼と約一ヶ月ぶりに会う。
仕事帰りの彼と最寄駅待ち合わせをした。私が駅のホームに着いたとき、彼の姿が見えた。後ろに手を組むのおじさんっぽいからやめた方がいいよと言ったのを覚えてないいつも通りの彼の姿が愛おしく思えた。彼は私に気がつくと「久しぶり」と言う。私の格好を見て「結婚式どうだった?」と付け加えて。「お久しぶりです。結婚式良かったですよ」と言うと「そっか」とだけ言い、私の手を握って歩き始める。私は自分の手がまるで彼の手を求めていたような安心感に包まれ、手を離したく無いなと思いながら彼の家まで帰った。
彼の家につくと、彼の匂いがして、荷物を置いてコートをかけると、彼の背中に抱きついている私がいた。思いっきり息を吸って彼の匂いを嗅ぐ。我ながら変態だなと実感する。彼は私の手の上から手を重ね、指をなぞる。
それからどれくらいの時間が経ったのだろう。ベッドで私は彼の腕の中にいた。彼の寝顔を見ると余計に愛おしくなり、彼から1秒たりとも離れたくないと思った。私は天井を見つめる。そうだ、私は彼と遠距離恋愛できないと告げるためにここに来た。つまりそれは別れで、これ以上一緒にいてしまうと言えないと確信していた。深く息を吸って吐いてから、また彼の寝顔を見る。言葉を出そうとしてみる。たった5文字の言葉を。声が出ない、その代わりに涙が出そうになる。慌てて私は目をつぶった。泣くのはダメだ絶対に。これは私のエゴなのだ。そう言い聞かせてるうちに私は眠りについてしまった。
続く
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