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疲労+涙−恋人の優しさ=?

水曜日。今日はなんだかとても疲れた。帰ってきてコートすらもベッドに投げ捨ててそのままベッドに倒れ込む。天井を何も考えずに見つめる。こんなに白かっただろうか。火災報知器の穴に手を突っ込んでみたいなとかどうでもいいことを考えていたら涙が出てきた。別に特に忙しかったわけでも、嫌なことがあったわけでもない普通の一日。今日も働いた。それだけで全員偉い。うん、なんで涙が出てくるんだろう。

「つらい」「しんどい」「できることならやめたい」
そんな本音が声に出て漏れてきてしまった時、そいつはやってくる。途端に私は不安定になる。失踪してしまいたい。今すぐここから逃げ出したい。どこか誰も知らないところへ…

そんなことできるわけもなく、行動できる体力もお金もなく、そんな状況がより一層深いところへと誘っていく。こんな時の為の溜め込んだ精神安定剤を飲もうかとも考えた。でも強烈な吐き気に襲われ眠れないし、眠ったと思ったら今度は起きられない。遅刻なんてしたら私はもう行けない。そんな気がした。

どうしよう

一か八か恋人に電話しよう。5回、5回コールを鳴らして出なかったら諦める。
プルルルル…「いち」プルルルル…「に」プルルルル…「…さん」
プルルルル…「よん」プルルルル…「…」


電話を切り、冷蔵庫に入っている缶ビールを開け、一気に飲む。もっと強い酒があればいいのに、冷蔵庫にはもう水しか入っていない。

再びベッドにダイブする。今度はうつ伏せで。いっそのことこのまま窒息死してしまえと思った。

テレン…テレン…

電話の音がした。顔を横に向けスマホをみる。恋人だった。
咄嗟に思った。楽しく会話したいのに今はどう無理をしても元気に話せない。
だから私は電話を切り、スマホの画面を裏にした。

それから15分くらい経っただろうか。少し目を瞑っていた。だからスマホが鳴っているのが目覚ましだと思い、電話に出てしまった。

「もしもし」とスマホが言う。…もしもし?
スマホの画面を見ると恋人と通話中になっていた。
「こんばんは」とだけ言った。
恋人はそれから自分の趣味の話をした。
私はいつの間にか笑っていて、いつの間にか普通に話をしていた。
さっきまで泣いていたくせに

1時間くらい電話をして、「おやすみ」と言った。恋人はおやすみと返した後に「週末、会おうね」と優しく言った。まるでその約束だけで私がどれだけ頑張れるか理解しているかのように。

電話を切った後、私は立ち上がりお風呂に入った。お風呂に入れたらもうこっちのものだと言う気持ちは全人類共通だと思っている。頭を洗いながら、今日の恋人はおしゃべりだったなと思う。でもふと気が付く。普段口数が少ない人が、よく話す理由を。きっと私を気遣ってくれたのだろう。愛おしいと思った。優しい人だなと。電話をかけた理由も聞かず、ただ楽しい話をしているうちに私を元気にさせてくれて、明日の活力も与えてくれる。

疲労+涙でしょぼくれてた私−恋人の優しさ=元気が出る一番の薬で明日への活力=最高 という結果が出た。

優しい恋人、ありがとうね。




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