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1958年の手塚治虫のエッセイ「ストーリー漫画とわたし」


1947年(昭和22年)1月30日、41歳の酒井七馬(さかい・しちま、1905年4月26日~1969年1月23日)原作・構成、18歳の手塚治虫(てづか・おさむ、1928年11月3日~1989年2月9日)作画『新寳島』(育英出版株式會社、23円)が刊行された。

2007年(平成19年)2月25日、中野晴行(1954年~)著『謎のマンガ家・酒井七馬伝「新宝島」伝説の光と影』(筑摩書房、本体1,900円)が刊行された。


1958年(昭和33年)8月25日、「手塚治虫漫画全集」9(第1回配本)、長編冒険漫画『鉄腕アトム』4(光文社、150円)が刊行された。

1958年(昭和33年)9月25日、「手塚治虫漫画全集」1(第2回配本)、長編冒険漫画『ジャングル大帝』1(光文社、150円)が刊行された。
29歳の手塚治虫のエッセイ「ストーリー漫画(まんが)とわたし」が収められた。

 昭和しょうわ十六、七ねんごろのことです。戦争せんそうたけなわで、くにじゅうから、生活せいかつのたのしみ――娯楽ごらくというものいっさいが、しめだされ、きえはじめたころのことです。
 まだ学生がくせいだったわたしは、学校がっこうにかくれて、こっそりマンガをかいていました。学校がっこうでそんなことが、みつかりでもしようものなら、きびしい軍隊式教育ぐんたいしききょういくのさかんなときですから、それこそブンなぐられもしたでしょう。
 そのころは、フクちゃん漫画まんが全盛ぜんせい時代じだいでした。漫画まんがそのものがとてもすくなくて、どもたちは、かわいそうなくらいでした。たまに新聞しんぶんほんにのっている漫画まんがも、かたにはまった、ありきたりのものがおおかったのです。自分じぶんひとりでたのしんでかくには、もっと目新めあたらしい冒険ぼうけんをためしても、よさそうだとおもいました。
「そうだ。映画えいがのように、すじがちゃんととおっていて、大写おおうつしや場面転換ばめんてんかんをうんとつかった、おおがかりな漫画まんがをかいてみよう。これはまだだれも、やったことがないから、きっとおもしろいものがかけそうだぞ。」
 そうかんがえたわたしは、いろいろ構想こうそうをねったのち、なん百ページものだい長編ちょうへんに、猛然もうぜんんだのです。
 それまで、長編漫画ちょうへんまんがといわれるものもかなりありました。でもそれらは、ほとんどが四コマ漫画まんが手法しゅほうをもとにつくられていて、なんコマめかにかならずオチ、つまりわらいがあり、喜劇的きげきてきなものがおおかったのです。したがって、場面ばめんのはこびもそれほど、スピードかんがありませんでしたし、そのものが、みんなよこからよこ人物じんぶつがうごくだけの、ぶたいをみているような単純たんじゅんなものでした。わたしはこのかきかたを、すっかりひっくりかえしました。まず、はなしそのものに、かならずしもわらいはいらないとおもい、かわりに悲劇的ひげきてきなおわりかたや、なみだや、いかりや、スリルをうんともりこみました。それから、てくる人物じんぶつみんなにちゃんとした人間的にんげんてき性格せいかくをもたせ、ずるいひと、つめたいこころひと、さみしいひとゆうかんなひとなどを、うんと登場とうじょうさせました。
 画面がめんも、セリフのおおいところや、ないところをてきとうにまぜあわせて変化へんかをつけ、また大写おおうつしや、うえしたなどからみたかわったかきかたをふんだんにつかいました。

1958年(昭和33年)9月25日、「手塚治虫漫画全集」2(第3回配本)、長編冒険漫画『ジャングル大帝』2(光文社、150円)が刊行された。

1958年(昭和33年)10月25日、「手塚治虫漫画全集」3(第4回配本)、長編冒険漫画『ジャングル大帝』3(光文社、150円)が刊行された。

1958年(昭和33年)10月25日、「手塚治虫漫画全集」6(第5回配本)、長編冒険漫画『鉄腕アトム』1(光文社、150円)が刊行された。

1958年(昭和33年)10月25日、「手塚治虫漫画全集」7(第6回配本)、長編冒険漫画『鉄腕アトム』2(光文社、150円)が刊行された。

1958年(昭和33年)10月25日、「手塚治虫漫画全集」8(第7回配本)、長編冒険漫画『鉄腕アトム』3(光文社、150円)が刊行された。

1958年(昭和33年)11月10日、「手塚治虫漫画全集」10(第8回配本)、長編冒険漫画『鉄腕アトム』5(光文社、150円)が刊行された。

1958年(昭和33年)12月10日、「手塚治虫漫画全集」4(第9回配本)、長編冒険漫画『黄金のトランク』1(光文社、150円)が刊行された。

1958年(昭和33年)12月10日、「手塚治虫漫画全集」5(第10回配本)、長編冒険漫画『黄金のトランク』2(光文社、150円)が刊行された。

1959年(昭和34年)5月25日、「手塚治虫漫画全集」11(第11回配本)、長編冒険漫画『ジャングル大帝』4(光文社、150円)が刊行された。

1959年(昭和34年)9月25日、「手塚治虫漫画全集」12(第12回配本)、長編冒険漫画『鉄腕アトム』6(光文社、150円)が刊行された。

1959年(昭和34年)12月20日、「手塚治虫漫画全集」13(第13回配本)、長編冒険漫画『鉄腕アトム』7(光文社、150円)が刊行された。

1960年(昭和35年)7月25日、「手塚治虫漫画全集」14(第14回配本)、長編冒険漫画『鉄腕アトム』8(光文社、160円)が刊行された。

1960年(昭和35年)8月25日、「手塚治虫漫画全集」15(第15回配本)、長編冒険漫画『西遊記』1(光文社、160円)が刊行された。

1960年(昭和35年)10月25日、「手塚治虫漫画全集」16(第16回配本)、長編冒険漫画『西遊記』2(光文社、160円)が刊行された。

1960年(昭和35年)11月20日、「手塚治虫漫画全集」17(第17回配本)、長編冒険漫画『西遊記』3(光文社、160円)が刊行された。


この頃から、手塚治虫による手塚治虫の歴史のみならず戦後日本語漫画史の事後的な創作が、戦後生まれの小学生の漫画愛好家に広まり、その人びとが大学に進学する頃から、日本語の人文学界の基礎教養として広まり始めた。

2023年(令和5年)10月31日、同年10月28日に学習院大学でおこなわれた73歳の夏目房之助(1950年8月18日~)のマンガ講座2023「漫画史再考」(全4回)の第3回(1/2)の動画(69分)が公開された。

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