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すみません、急いでいるので、もう行きます。
僕は今、伊丹空港に居ます。
もうすぐ、あと五分後には、僕が乗る福島行の搭乗手続きを促すアナウンスが聞こえると思います。
手荷物検査は済ませました。
福島県までは、5000円ほどでいけるのです。
5000円。
何かを買う金額を払う間際に、やめるという行為をしました。
僕はそれを「空貯金」と呼びました。
3週間半ぐらいかかったでしょうか。
目的の金額を貯めることができました。
これが昨日のことなのです。
最後に「空貯金」の対象になったのは、昨日の食事でした。
朝にトースト一枚食べて、昼と夜を抜いて、500円程度貯めました。
僕が福島県に行くことにしたのは、福島県に飛行機で行った経験があったからです。同じ空港、同じ搭乗手続き、同じ距離の待合い。大切なことでした。
人間が動いている限り、休まなければならない時が来ます。それは、本当のことです。
僕にとっては、それが今日になりました。
2月中旬ごろに目星をつけていたので、少し遅れましたが、手遅れになる前に、間に合わせることができました。
僕は、やっと──ああ、そう、生活というのですね。
その動きをいちどお休みできる日がきたということです。
何日間ですか。
搭乗案内のアナウンスが聞こえてきました。
いってきます。
僕は呼び止められます。
「ちょっと待って。どこへ?」
えっ、いまなんと仰ったのでしょう──「そんな……どこへ、と本当にお聞きになったのですか。」
(この方は誰に聞いているのだろう。何を聞いているのだろう。どうして尋ねるのだろう。誰が答えるのを期待しているの?)
ああ、行かなければ。
「すみません、急いでいるので、もう行きます。」
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