見出し画像

年末年始雑記

ただ顔を見せることしかできないながら、お盆や年末年始は帰省する。

日々離れて暮らしているとそれぞれに色々な出来事が起こっており、価値観も生活リズムも変わるので、実家といえども帰省前は躊躇いと面倒くささがある。
いつも最初は他人行儀で帰省し、そのうちに馴染み、休暇が終わる頃には日常に戻り難い…という気持ちの浮き沈みを、年月の経過による変化にぬるく気づきながら繰り返している。

この年末年始も休暇前の日々のやりきれなさから日常を離れる躊躇いを強く持ちつつ帰省し、そんなハレの期間中に起こった年始早々の出来事からは、過ぎてみて振り返れば坦々と回っているだろう日常の有り難みが身に染みた。

そんな年末年始だったので、たわいない事をまとまらないながらも残しておくのも良いかと思っての雑記。


・・・・・・


雑記①
実家にとっての帰省1日目。その日の朝早く新幹線に乗った風を取り繕ったが、その実、前日には地元に到着しており、ただ実家に帰るのには躊躇いが強く準備期間として宿に泊まった。
なぜ地元に帰ってわざわざ宿を取っているのか自分でも奇妙に思いつつ、冬の冷たく都会よりは澄んだ空気と1人の時間をのんびり過ごした。

実質1日目の午後、アクティブな母にくっついて散策に出かけたが、ここ数年の仕事上での変化について、純粋に生活の面で心配された。

肩書だけでいえば今の方が耳触りは良いはずなので、安定や世間体を重視しているのだと昔から内心反発していた母が相手ということもあり記憶に残った。
就職等はいっさい相談せず事後報告でやってきた(し、何なら反発も手伝って選択を間違えたように思う)のだが、きっと半分くらいは、実は子の幸せを思っていたらしいと今更ながら気づくことになった。


雑記②
お餅を作るという祖母の家へ。
祖母を手伝いたかったが、ほぼ側にいただけで終わった。

手伝いなんて簡単そうに口では言うが、方法そのものに加え、相手のやり方・ペース等周辺含む諸々を最低限知っていることが必要なのだと苦く実感。

ただそれ以上に、餅作りは夏に亡くなった祖父に任せきりだったからと発言をしていた祖母が餅米の蒸し具合に合わせて良い塩梅に水分調整し形にしていく(素人目には)熟練の手つきを見て、
例え直接していないことでも長年側にいて見てきたことによる何かしらの蓄積はあって、(その他の経験もあるのだろうが)それはどこかのタイミングで活きる財産なのだと思えたことは、日々を無為に過ごしているように思う中で少し救いになった。

せっかく祖父のお仏壇にお線香をあげる機会があったのに、お盆と同じくまたしても粗相をやらかして(そういえばお葬式のお焼香でもやらかした)、祖母と母に盛大に笑われて良い大人なのにと少ししょんぼりした。
強いていえば、年末に笑いを提供できたので良かった(と思いたい)。


雑記③
休暇の何日目か、母と外出した帰りに家の駐車場に車をとめてふと見ると首輪のない犬の姿。
毛並みがきれいで飼い犬のように見えるのに、いったいどこから来たのか鎖にもつながれずにいる。
危ないと急ぎ家の中に入って思わず玄関の鍵を閉めたが、犬にドアは開けられないと笑う母が通りに面した洗面所の窓を開けると、まだそこにいる。
母が可愛らしいというのを聞いたからか、怖さとないまぜに鍵までかけた自分を後ろめたく思いつつ、そのまま昼食。

昼食後、おそるおそる散歩に出かけると、その姿はもうどこにもなかった。

不思議に思いつつちょっと忘れた頃に地震速報。
こういうことだったのかとふと思った。


雑記④
北陸生まれの父の実家には父の兄一家が住んでいるが、分家の次男というのもあってかここ10年近く帰っていない。
それどころか毎年届く年賀状に返事すらしていない。
相手のことを考えていたら連絡できなくなった、このままが一番、という父に、文句たらたらな母の様子を見つつ、似た思考回路を持つ自覚があるので居た堪れない。

父はニュースに釘付けになった。
自分もニュースを気にしつつ、その日帰ってきた姉も含めていつもばらばらに過ごしがちな一家が同じ対象を思ってテレビ前に集っていることに、不謹慎ながら懐かしさを感じた。

次の日もその次の日もまたその次の日も、大変な時に連絡するのは気が引けると連絡しないままの父に業を煮やし、母が父の実家宛に電話。

いつからか母は父の実家側とは関わりを避けていた。
ひょんなことから繋がったものだと不思議に思いながら、他人事のように見ている自分も数年前に父方の従兄弟と連絡を途絶えさせていたとふいに思い出し、場違いな冷汗が止まらなかった。


・・・・・・

休暇を終えて日常に帰ってきた自分は、何だかとても不謹慎なのだろうと思いながらも、どこか一方では出来ることをしつつ坦々と回る日常があることで守られる何かがあって欲しいと願っているようだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?