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旅は道連れ

もう10年くらい前になりますが、ハワイ島のパハラという町にあるチベット寺院に泊まったことがあります。お寺にゲストハウス(宿坊)があり、そこのシングルルームに2泊しました。海外では、安価な宿泊施設には最低宿泊数というのが決まっているところが多く、2泊以上のところが多いのです。2泊分の料金を支払えば、1泊で退去することもできます。

とても静かな場所でした。たまたまなのか、その2泊の間、宿泊しているのはわたしだけでした。余計に静かさがひしひしと感じられました。

どのくらい静かかというと、部屋から裏庭に落ちた葉っぱの音が聞こえるくらい。音に溢れている日本では聞き逃してしまうような音が聞こえるくらい静かでした。

それくらいの静けさでしたので、生き物の気配はまったくありませんでした。

夜も更けて、寝しなに水を飲もうと思ってキッチンに行きました。そこで、小さなゴキブリに遭遇しました。普段だったら、とにかく退治しなければと思うところでしたが、生き物の気配がない世界に現れた命ある生き物。普段なら思わないことを思いました。

「あぁ、命がある!」

それから、わたしの意識が変わりました。どんなものでも命がある。人間にとって不快な見た目でも、彼らは生きている。

もちろんゴキブリは今でも苦手ですし、蚊にもマダニにも遭遇したくない。その気持ちには変わりはありませんが、見えないところに行って、と願うことはあっても、殺そうと思う気持ちはなくなりました。

人生という旅は、道連れがいないと寂しいですよね。それなら、自分との違いを楽しんで受け入れた方が、旅も思う存分楽しめそうです。


バス停に並ぼうと思ったら、先客がいました。旅は道連れ、世は情け。

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