嵐を呼ぶ訪問者(1)
昨年、新居に引っ越して1週間ほど経った頃、夕飯を家で夫と食べていたとき。
ピンポーン
インターホンが鳴った。まだ引っ越してきたばかりで知らない人の訪問に慣れない。モニター画面を見ると、作業着のような格好をした顎髭を生やした男性が映っていた。工事業者か、夜7時過ぎに怪しい。
「はい」と夫がモニター越しに返事する。
「夜分にすみません。わたくし〇〇区のXXX不動産の田村(仮名)です。」
XXX不動産? 仲介してもらった不動産屋ではない。
そこから田村さんはまくし立てた。
「先ほど、お隣のA号棟をご案内していたんです。そしたらですね、違法建築を見つけたんです!!手抜き工事ですね。洗面所の床下点検口を覗くと見えるシステムバスを支える基礎の部分なんですけど(以下省略)」
「もし地震があったら家が傾く恐れもあるんです。お子さんが怪我をするかもしれませんよ。もう入居されてるんで、不動産屋と訴訟問題になるかもしれないのでまだ不動産屋に言わないほうがいいです。第三者の方がいい。差し支えなければ、お宅の床下点検口を見せてもらえませんか?」
怪しい!100点満点以上の怪しさ。
おい、家にあげるなよと夫に念力を送っていたところ
「あーすみません、今はちょっと…」
とちゃんと断った。
「そうですか…いや、ご面倒をおかけするつもりはなかったんですけど。重大な問題なんです。下手したら訴訟問題ですよ。僕の名刺、ポストに入れておくんで、何かご質問があれば」
田村さんは去っていった。
怖い、怖すぎる。泥棒の下見か? 調べると、家の中を見てどこから侵入しやすいかチェックするやつらもいるとか。大体の泥棒は下見をするらしい。他と連絡を取らせず、合法的に家に上がって屋内をチェックして空き巣に備える、まさにその手口じゃないか。
ポストを見に行ったが、何も投函されていなかった。
その夜はなかなか寝れなかった。
ただでも引っ越してすぐの頃、まだ慣れなくて、本当にこの家でよかったかと、一抹の不安も覚えていた時期だった。
引っ越して早々に泥棒に狙われるなんて。やっぱり戸建は怖い。早く窓ガラスに防犯シートを貼らねば。警察に電話する? それか違法建築?退去する必要ある?ローンはどうなる?と心配性の私は不安で頭がいっぱいになった。
翌朝ポストを見ると、XXX不動産のロゴ付き封筒に走り書きのメモが書いてあるものが投函されていた。第三者の企業にチェックしてもらった方がいいと書いてあった。泥棒じゃないのか。泥棒じゃなくても問題なんだけど。
不動産屋のHPにも顔写真があるが、うーん、なんか違う。こんな爽やかじゃなくて、これ全然違うよね、もっと人相悪かったよね、と夫と話した。
私は、その不動産屋に電話して田村さんがいるかどうか確認してみることにした。
夫からは「そこまでする?」と苦笑されたが、じゃあほっとくのかい?
どっちみち違法建築の詳細も専門用語ばかりでわからなかったし、もう一回聞きたいと思った。私はあいまいが嫌で、白黒はっきりさせたい性格だ。この性格は本当に疲れる。どうにか問題解決するために猪突猛進してしまう。でも、夫ののんびりした考え方にもなれそうにない。
シミュレーションしてみる。
・もし本当に不動産屋なら→システムバスの手抜きが本当かチェックする→目を瞑ってもいいか、不動産屋にいうか難しい判断をする
・泥棒なら→警察に速攻連絡。
幸いなことにモニターには録画機能があり、田村氏の顔はバッチリ映っている。
長くなったので続きは次回、、
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