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なぜスタートアップ向けの法律事務所を立ち上げたのか

はじめまして!スタートアップの経営パートナー「レガリア法律事務所」です。

記念すべきnote第1弾では、「なぜスタートアップ向けの法律事務所を立ち上げたのか」をテーマにした、代表勝連へのインタビューをお届けします。四大法律事務所からスタートアップに転職したユニークなキャリアを紐解きながら、現在に至る道のりや、実現したい世界観を深掘りしました。

本テーマや勝連に興味をお寄せいただいた皆様はもちろん、スタートアップの経営者や関係者の皆様、現役弁護士や弁護士を目指す皆様にもご覧いただけますと幸いです。


※本記事はPodcast「New lawyers -これからの弁護士-」の一部を抜粋加工し作成しています。音声は、以下よりお聞きいただくことができます。
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勝連孝司プロフィール

レガリア法律事務所 代表弁護士

2018年弁護士登録。長島・大野・常松法律事務所で紛争解決・知的財産・労働・スタートアップ関連業務等に従事した後、株式会社カンリーで経営企画業務などを担当。 現在は、リーガルテックの会社を経営しながら、経営経験を活かして弁護士としても多くのスタートアップを支援している。
▼経歴
2015年3月 京都大学法学部卒業
2017年3月 京都大学法科大学院修了
2018年12月 弁護士登録・長島・大野・常松法律事務所入所
2023年4月 レガリア法律事務所設立

「起業家弁護士」勝連のこれまで


ーPodcaster・レガリア法律事務所 広報 稲荷田(以下、稲荷田)
今回のテーマは、「なぜスタートアップ向けの法律事務所を立ち上げたのか」です。3つのトピックに分けて質問をしていきます。1つ目は、勝連さんがどんな人なのか、2つ目がレガリア法律事務所について、そして3つ目がレガリアが大切にしていること、挑戦していきたいことです。まずは、勝連さんはどんな人なのか、簡単にご経歴を教えていただけますか?

ーレガリア法律事務所代表 勝連孝司(以下、勝連)
まず、大阪出身で、大学は京都大学法学部を卒業しました。その後、長島・大野・常松法律事務所に入所し、訴訟を中心にM&Aなども取り扱っていました。当時からスタートアップの経営者が周りに多かったこともあり、スタートアップのように今まで世の中にないものを作るということが、かっこいいと思っていました。

法律事務所の弁護士として、100万人にサービス提供するのは恐らく難しいと思いますが、新しいサービスを作って提供すれば、世の中にさらにインパクトのある仕事ができるんじゃないかと考えていました。そんな考えから、いつか自分で会社をやろうと思っていました。

ちょうどその頃、ビジネスマッチングアプリ「Yenta」を活用していたのですが、スタートアップ「株式会社カンリー」代表の秋山さんとマッチングしました。話してみたら興味を持ったので、入社を決めました。

ー稲荷田
当時のカンリーさんはどのような会社で、なぜ入社を決めたのでしょうか。

ー勝連
僕が入った時は20人ぐらいの会社で、そこに経営企画として入社しました。
まず、なぜスタートアップに転職したかというと、一度スタートアップの中入った方がいいと思ったからです。そして、なぜカンリーを選んだかですが、フィンテックやヘルステックと呼ばれる領域では、どうしても法律家としての役割を期待されてしまうんですよね。法律の専門性を活かす以上に、ビジネスサイドの経験を積みたいと思っていた矢先、カンリー秋山さんに出会って、ご縁を感じたため、入社を決めました。

ー稲荷田
なぜ、専門性を活かすのではなく、あえてビジネスサイトに挑戦しようと考えられたのでしょうか。

ー勝連
弁護士として活動していくにしても、ビジネスのことが分かってないと
的確なアドバイスができないだろうと思ってました。また、将来自分でスタートアップ経営することも前提に考えてたからです。

ー稲荷田
「スタートアップを経営したい」というのは、「スタートアップに特化した法律事務所を立ち上げる」という意味ではなくて、株式会社でスタートアップを経営されたいと思っていらっしゃったということですか。

ー勝連
仰る通りです。

ー稲荷田
具体的には、どういう構想をされていらっしゃったのですか。

ー勝連
元々は旅行系のサービスやりたかったんです。せっかく自分でやるんだったら人の感情に関わり、感動させるようなサービス作るのが良いなと考えていまして。自分が泣くぐらい感動するシーンを考えたところ「スポーツ」や「映画」など、エンタメ系かなっていうのは思ってたんですよね。

で、その中でも自分が一番好きで身近だったのが旅行でした。今まで海外とかも含めると40カ国ほど行っていたのもあり、旅行系のサービス作りたいと感じていました。

こんな感じだったので、正直は初めの方は全然リーガルテックには興味なかったんですよね。ただ、周りの弁護士と話していると、スタートアップの経営者とのギャップを徐々に強く感じるようになっていったんです。

ー稲荷田
どんなギャップですか。

ー勝連
スタートアップの経営者は、ミッションやビジョンに象徴されるように、「こういうことを達成したい」とか「こういうインパクトを社会に与えたい」という目的意識を持って活動してる人が多いと思うんですけど、弁護士でそういう感じのことを思って働いてる人って少ないなと思ったんです。

それがなんか…もったいないというか。せっかくすごい優秀な人がいっぱいいる業界だし、今まで努力もしてきた人がいるのに。もっと、ミッションやビジョンを持って働ける環境にしたいなと強く感じました。

まずは、身近な人たち、仲が良い人たちの働き方を変えたい、もっと意義があると自分で強く思える仕事をできるようになったらいいなと思った結果、リーガルテックのプロダクトを作っていこうと思ったんです。

そういう目的にすると、リーガルテックのプロダクトを作る会社を創業するだけではなく、法律事務所を作る必要性も感じて、同時に法律事務所も立ち上げました。

ー稲荷田
現在はレガリアの法律事務所を運営しながら、リーガルテックのサービスも開発されるいらっしゃるということですね。リーガルテックのサービスを開発する際に、法律事務所も併せて立ち上げるのはどうしてなのでしょう。

ー勝連
弁護士法72条っていうものがありまして。ざっくり言うと「弁護士以外が法律業務をやって報酬を得てはダメです」というものです。リーガルテックのプロダクトを提供していると、「弁護士がやるべきことを株式会社がやって報酬を得ているのではないか。これは違法じゃないか。」みたいな話が出てくるんです。そういう問題があるので、ここはプロダクト会社の方でやる、ここは法律事務所でやるという線引きは絶対に必要だと思っていました。

リーガルテックで有名なLegalOn Technologiesさんも、昔は違法じゃないかと言われていた時期がありまして。最近は、大丈夫ですよとなったのですが。そのLegalOn Technologiesさんも、法律事務所ZeLoと一緒に立ち上げているんですよね。

ー稲荷田
お客さんのお話を聞く中で力になれそうな領域が見えてきても、深く関与しすぎると弁護士の仕事になってしまうから、株式会社としては関与してはいけない、そのラインが存在するということなんですね。

ー勝連
はい。何かしらお客さんの要望を聞いてパッと試したり、それをプロダクト化したりしていくのは、法律事務所は必要だろうと考えています。

先ほどお伝えした弁護士の働き方という観点でも、理想とする働き方を実現したり、弁護士と企業の関わり方を変たりしようとすると、自分の事務所を持つ必要があるだろうと感じていたのもあります。

ー稲荷田
世の中には弁護士さんがたくさんいらっしゃって、スタートアップのお仕事に携わっている方々もいらっしゃると思います。ただ、「自分もやろう」と思う方はかなり少ないのではないかと思います。勝連さんのイノベーター気質は、どこから生まれたのでしょう。

ー勝連
「リスク感覚がバグっている」というのは、よく言われます(笑)自分でも間違いないと思っています。弁護士は、保守的というか安全性を重んじる人が多い業種だと思うんですよね。

僕は、そういうリスク感覚的なところがものすごく鈍いので、「まあ別に起業して失敗しようが、成長はするだろう」「生きていけるだろう」とは思っていて。なので、挑戦することのリスクを感じないんですよね。

あとは、周りにスタートアップの経営者がすごく多いのはあります。そういう人たちの話を聞いてると、自分で何かやるのは、想像し難いほどに大変だと感じるものの、それでもとても楽しそうに働いてる人だらけなんですよね。

例えば、飲み会とかで話してても、「俺はこういうことを実現したい」と、泣きながら喋るような友達とかもいるんですよ。そういうのを見てると、「自分も何かしないとな」と、思わされます。

レガリア法律事務所の特徴


ー稲荷田
次は、レガリア法律事務所についてお伺いさせてください。設立の背景や、スタートアップに特化した支援をしている理由を改めて教えていただけますでしょうか。

ー勝連
リーガルテックのプロダクトを作り、それを活用して、弁護士の働き方を変え、企業と弁護士の関係性をより良くしていきます。そうすることで、弁護士の仕事が高付加価値化され、結果的に支援する企業価値の向上をしたいと考えて、法律事務所を開所しました。

スタートアップに焦点を当てたのは、いま世の中にないサービスや、新しい課題を解決していくところに関わるのが純粋に楽しいからです。正直、初めて聞いた時に「これ、誰が使うんだ?」みたいなところから、すごい勢いで伸びてくる会社とか見てたりしてて。そういう仕事に関われるのは、弁護士としても面白いなと感じています。

ー稲荷田
スタートアップ経営者さんの熱い想いを聞いてる中で、どうしたらこの人たちの力になれるのか考えた結果、今の選択をされたような印象を持ちました。

ー勝連
そうですね。後は、年齢的にも若いので、同じく若い方が多いスタートアップ経営者の方にとっても頼みやすい存在ということもあると思います。

ー稲荷田
それもありそうですね。

スタートアップ支援の仕方


ー稲荷田
スタートアップ支援の仕方を、具体的に教えていただけますでしょうか。

ー勝連
一般的な中小企業の顧問弁護士だと、「質問が来たら答える」というスタンスが多いと思いますが、基本的にそういうのはやらないようにはしてます。定例会議を組んで事業の話をしながらどういう風に関わっていくかを一緒に決めていくんです。具体的には、プロダクトの方向性を聞いてディスカッションをしながら、その設計を法律の観点を含めながら一緒に考えていくのが多いですね。

例えば、プロダクトを作る際は、「個人情報の取り扱い」が問題になりがちです。データの処理の仕方や提携先へ提供する情報の選択など、どんな設計にしたら最も個人情報を取り扱いやすくなるかを考えていきます。

ー稲荷田
もう少し、詳しく教えてください。

ー勝連
「プライバシーポリシーをなんでも記載して[同意する]ボタンを押させたらいいんじゃないか」みたいなアドバイスするのは簡単です。ただ、それをやっても結果的に行き詰まることが多いんです。だからこそ、どういうステップで、どういうボタンを押したら個人情報の要件を満たすのかを、丁寧に設計する必要があります。

変なところに[同意する]ボタンを入れてしまうと、離脱してしまったり、ユーザーが減ってしまったりということもあると思います。なので、法的にガチガチに同意をとりに行っても仕方がないというか。それでユーザー数が減ったら仕方がないので、この辺りの塩梅を一緒に考えたり、ほとんど法律が関係しなくてもこんな機能つけたらユーザーが増えるんじゃないかみたいな話もしたりします。

顕在化した法律の課題を解決するのではなく、「法律の課題を発見して、それを定義しながらともに解決していく」そんな関わり方をすることが多いですね。

ー稲荷田
「この法律に抵触しているかもしれないので、勝連さん詳しく教えてください。」というような会話ではないんですね。

ー勝連
仰る通りです。スタートアップの方から法律的な視点で相談をするのは難しいと思うんですよね。「これは弁護士に聞いた方がいい」と判断すること自体に、一定のリーガル的な素養が必要だからです。

例えば、スタートアップから「これって不正競争防止法の観点から大丈夫ですか」みたいな相談は、まず来ないんです。「そもそも不正競争防止法って何ですか」みたいな人がほとんどなので。

そういうところを事前に対応できる体制を整えるのが、新しい弁護士の関わり方だと思います。そして、こうした関わりが一般的になっていくことで、弁護士の役割は変わっていくと思ってます。

ー稲荷田
なるほど。勝連さんの関わり方は、法律をスタートアップ経営者にわかりやすいように翻訳して、徐々にリーガルの素養を身につけてもらうような役割も果たしていそうですね。

ー勝連
そうです、それも必要だと思ってます。

他の分野でも同じことが言えますが、専門家は専門領域の知識はある一方で、会社経営や事業運営に詳しいわけではありません。会社の方からすると、会社のことは分かるけども、法律や会計の知識はない状態なので、どうしても情報格差が出てきます。

その情報格差を埋めていくために、双方で努力すべきだと考えています。そうすることで、お互いのバリューが合わさって、より良い方向に進んでいくことができるからです。

ー稲荷田
たしかに。

レガリアとして大切にしていること、挑戦していること


ー稲荷田
最後に、レガリアとして大切にしていること、挑戦していることを教えてください。

ー勝連
「事業にコミットする」ことは大切にしてます。質問が来たら答えるみたいな関わり方だと価値発揮がしづらく、いずれはAIで代替できる領域だと思っています。

もっと事業のことを理解して、法律を使うことでどのように企業の売上や企業価値を上げるか、そういうところにコミットしたいと考えています。

企業は、法律を守るために存在しているわけではありません。「売上を上げ、その先に何かしら社会に対して価値を提供すること」を目的にして存在しているはずです。なので、「法律を守ること自体」が目的にはならないように気をつけています。

ー稲荷田
本質的ですね。他に特徴はありますか。

ー勝連
スタートアップと一緒に、業務提携をしながらサービスを作ることもあります。別の話で言うと、企業法務の弁護士は「タイムチャージで1時間何万円です」という報酬設計が多いのですが、それだと弁護士に効率化するインセンティブが出づらいので、イマイチだと思っています。これは、弁護士にとっても、クライアント企業にとっても良くないことです。

レガリアでは今後、これまでとは異なる報酬設計にも挑戦していきたいと考えています。まだ模索中ではあるものの、クライアントさんには「タイムチャージ以外の方式も検討可能なので相談してください」とはお伝えしてますし、M&Aであれば、成功報酬などもやってます。

ー稲荷田
今日の話を聞いて、レガリアが「経営パートナー」と掲げている理由が分かってきました。今後いろんなお話が聞けることが楽しみです。ありがとうございました。

ー勝連
ありがとうございました。


関連情報


■レガリア法律事務所HP
http://legalia-partners.com/

■勝連X(旧: Twitter)
https://twitter.com/KojiKatsuren

■勝連Facebook
https://www.facebook.com/KatsurenKoji

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パーソナリティのご紹介

稲荷田和也(JobTales株式会社 代表取締役)

「スタートアップと社会をなめらかに繋げる」をミッションに、スタートアップやスタートアップ支援業の広報PR支援に従事。SNSや音声配信が強みで、X(Twitter)のフォロワーは1万超、100以上のPodcastコンテンツの企画制作配信の実績を持つ。新卒入社したSansan株式会社ではエンタープライズ企業や官公庁向けの営業に従事し、Web3/NFT業界に転身。地方創生NFTスタートアップの営業責任者を経て広報室を立ち上げ、Chief Communication Officerに就任。起業家の情熱や素晴らしい事業を世の中に広めるべくJobTales株式会社を創業。

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