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#133 「ソーラ開発事件」大阪地裁

2006年4月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第133号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【ソーラ開発(以下、S社)事件・大阪地裁判決】(2004年2月20日)

▽ <主な争点>
配置転換の効力/就業場所についての合意の有無

1.事件の概要は?

本件は、S社の従業員であるXが同社とA所在地(以下「本件就業場所」という)を勤務場所とする合意をしておらず、同就業場所に配置転換(以下「本件配転」という)したのは権利の濫用であるとして、S社に対し、本件就業場所における就労義務がないことの確認およびXが支出した交通費の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社およびX等について>

★ S社は、太陽熱に関する機器の販売等を目的とする会社であり、ガス関連機器の販売、設計施工を業とするK社の関連会社である。

★ K社は平成14年6月、公共職業安定所を通じて従業員を募集したところ、Xはそれに応募した。その求人票には就業場所としてK社の事務所が記載されていた。

★ Xは同年9月から、本件就業場所の向かいにあるK社の事務所を就業場所としてS社の販売業務に従事するようになった。

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<XがS社に入社してから本件解雇予告を受けるまでの経緯>

▼ Xは入社後約1ヵ月はS社からの指示により、本件就業場所の近隣において個人宅を訪問して、S社の製品を販売しようとしたが、成果が上がらなかった。

▼ そのため、XはS社に対し、営業対象区域を広げるとともに、訪問対象も保育園、老人ホーム、身体障害者施設、環境局、産廃業者やバス、トラック、タクシー会社等とすることを要望し、S社も販売成績を上げるためにそれを承諾した。

▼ しかし、その後も依然として、Xは成果を上げることができなかった上、就業場所であるK社に金融業者から電話がかかってきたり、差出人不明のファックスが送られてきたり、Xが公然とK社の経営方針を批判するなどの言動をとったため、S社は15年6月、Xに対し、解雇予告(以下「本件解雇予告」という)を行った。

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<地方労働委員会による調停および本件配転等について>

▼ Xは本件解雇予告を受け、「S社の製品は販売が難しい商品であるから、販売成績が不振であるという理由で解雇するのはおかしい」と考え、地方労働委員会(以下「地労委」という)に対して調停を申請した。

▼ 15年7月中旬、地労委において第一回の調停が行われ、本件解雇予告を撤回した。また、地労委はXとS社に対し、雇用契約を締結するようにとの斡旋を行い、XとS社はそれに同意した。

▼ S社はXの勤務場所を同社の本社とする雇用契約案を作成し、同月下旬の地労委の第二回調停において提出したが、Xは自宅から不便であることなどからS社本社での勤務を拒否した。そこで、地労委はS社に対し、Xの就業場所について再検討を求めたので、S社は一旦回答を留保した。

▼ 同年8月上旬に行われた地労委の第三回調停において、XとS社は雇用契約を締結し、勤務場所として本件就業場所が記載された雇用契約書(以下「本件契約書」という)にXは署名・押印をした。それ以降、Xは本件就業場所を勤務場所として販売活動に従事することになった。

★ 本件就業場所にある事務所は簡易な構造の建物で、電話、トイレ、水道、暖房等の施設は備えつけられていなかった。ただし、同事務所においては、主として出退勤の確認や業務日報の提出等が行われるだけで、顧客をそこで応接する必要もなく、特段電話やトイレがなくても支障はなかった。

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<本件配転後の経過について>

▼ その後もXは依然成果を上げられなかったため、S社はXの交通費等の経費を迎えるため、同年9月上旬、Xに対し、業務活動の対象を本件就業場所近隣地域の一般家庭に限定するように指示(以下「本件業務命令」という)をしたが、Xはそれに従っていない。

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