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#408 「有限会社 X設計事件」東京地裁

2016年3月30日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第408号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【有限会社 X設計事件・東京地裁判決】(2015年1月28日)

▽ <主な争点>
試用期間中の解約権行使など

1.事件の概要は?

本件は、X設計(X社)と労働契約を締結し、設計図面の製作等の業務に従事していたAが解雇等の効力を争い、同社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と平成23年6月分から本判決が確定するまでの間の給与月額各18万円等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<X社およびA等について>

★ X社は、土木工事の設計および管理等を目的とする会社である。

★ A(昭和43年生の男性)は、専門学校を卒業後、橋梁の設計に関わる会社等、数社に勤務する職歴を経た後、平成23年2月、X社との間で期間の定めのない労働契約(以下「本件契約」という)を締結した者である。なお、同社がハローワークに提出した求人票の「備考」欄に「試用期間3ヵ月」との記載があった。

★ 本件契約において、Aは設計図面の作製業務に従事するものとされ、稼働開始日を23年3月1日とし、基本給月額18万円を支払うこと等が定められた。

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<本件契約を終了させる旨の意思表示に至った経緯等について>

★ AがX社に入社した後に開催された歓迎会の席で、同社代表者はAについて試用期間中は社会保険には加入しないなどと説明した。これに対して、Aが異論を述べたり、契約内容をX社代表者に問いただしたりすることはなかった。

▼ X社は23年5月25日、Aに対し、雇用を継続しない旨の意思表示をした。同社は翌26日、Aに電話をかけたがつながらず、Aから事務所のかぎの返却を受けていなかったことから、かぎの交換を行った。

▼ X社は同年6月2日頃、5月分の給与明細と源泉徴収票をAに送付した。また、6月28日頃、Aに宛てて退職証明書を送付したところ、そこには「退職日は5月25日であり、Aの自己都合による退職」と記載されていた。

▼ X社は同年7月1日頃、Aに宛てて、改めて退職証明書を送付したが、そこには「退職日は5月31日であり、契約期間の満了による退職」と記載されていた。

3.社員Aの主な言い分は?

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