#150 「神戸東労働基準監督署長(ゴールドリングジャパン)事件」神戸地裁
2006年8月30日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第150号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【神戸東労働基準監督署長(ゴールドリングジャパン)事件・神戸地裁判決】(1999年7月29日)
▽ <主な争点>
海外出張中に発症したせん孔性十二指腸潰瘍と業務起因性
1.事件の概要は?
本件は、ゴールドリングジャパン社(以下、G社)の貿易営業員として勤務していたXが平成元年12月、海外出張中の航空機内において急激な腹痛を訴え、出張先の病院に入院後にせん孔性十二指腸潰瘍(以下「本件疾病」という)のため開腹手術などの治療を受けたことについて、本件疾病は発症直前に長期間の国内出張および海外出張が続いた上に業務の性質上精神的・肉体的ストレスに起因するとして、翌2年3月、神戸東労働基準監督署長(以下、K労基署長)に対し、療養補償給付を求めたが、K労基署長が同年7月、不支給処分を行った(以下「本件処分」という)ため、その取り消しを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<G社およびXについて>
★ G社は、日本および極東地域のメーカーと諸外国の業者との間の商品の売付および買付の代行並びに営業および渉外情報の収集・提供といった代理店業務を主たる業務とする会社である。
★ X(昭和27年生・男性)は昭和59年3月、G社に入社し、貿易営業員として勤務していた。Xの役職名はマネージャーで、通常の業務内容は海外顧客との通信文書の作成、営業員としてのメーカーとの価格・納期等の交渉、顧客等からの依頼に対する回答、新しい商品の探索および海外代理店への指示を行うことなどであった。
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<本件各出張から本件疾病の発症までの経緯等>
▼ XはG社の出張命令により、平成元年11月20日に大阪に出張し、以後同月21日から22日に東京、24日に三重、大阪への国内出張をし、海外の顧客を上記各地の事業所に案内して商談および接待を行った(以下「本件国内出張」という)。
▼ XはG社の出張命令により、同年11月26日から12月9日までの予定で、韓国・台湾・シンガポール・マレーシア・タイおよび香港を出張国とし、G社の顧客である英国のW社取締役Aおよび同社取締役Bの出張に随行し、各国代理店との業務促進、営業などを行うために海外出張に赴いた(以下「本件海外出張」といい、本件国内出張と合わせて「本件各出張」ともいう)。
▼ Xは同年12月7日、タイにおいてメーカー1社を訪問して商談をし、航空機でバンコクから香港へ移動する途中、腹痛を訴え、香港到着後も腹痛がおさまらず、ホテルから救急車で病院に搬送された。
▼ Xはそのまま入院し、本件疾病と診断されて開腹手術などの治療を受け、翌2年初め頃からは回復に向かい、その後退院した。
▼ Xは2年3月、K労基署長に対し、本件疾病について労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付請求をしたところ、同労基署長は同年7月、不支給処分をした。
▼ Xは本件処分を不服として、2年9月、兵庫県労働者災害補償保険審査官に対し、審査請求をしたが、4年9月、棄却決定がされ、さらに5年1月、労働保険審査会に対し、再審査請求をしたが、7年11月、請求棄却の裁決がなされた。
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<Xの既往歴および勤務状況等について>
★ Xは17歳の頃、十二指腸潰瘍に罹患しており、昭和55年頃にも十二指腸潰瘍の傾向があるとして病院で治療を受けたほか、昭和63年にも十二指腸潰瘍と診断され、治療を受けていた。
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