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#114 「医療法人 徳洲会事件」大阪地裁

2005年11月30日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第114号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【医療法人徳洲会(以下、T法人)事件・大阪地裁判決】(2003年4月25日)

▽ <主な争点>
黙示の業務命令に基づく残業に対する時間外手当の支払い

1.事件の概要は?

本件は、T法人が経営するN病院の職員であるXが同病院の黙示の指示によって時間外労働を行ったとして、T法人に対し、平成10年9月から12年9月まで(以下「本件期間」という)の未払時間外手当および付加金等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<T法人およびXについて>

★ T法人はN病院の経営等を目的とする医療法人である。

★ Xは昭和53年4月、N病院に採用され、総務課、医事課等で勤務した後、平成12年4月以降は総合案内係となっている。

★ N病院においては、平成になってから完全週休2日制が実施されたが、要員の補充がされなかったため、平日の仕事量が増えて、Xも相当時間の残業をせざるを得なかった。

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<N病院における時間外手当の支給方法等について>

★ N病院では職員に対し、タイムカードの打刻を義務づけていたが、所定退勤時刻以降の打刻があったとしても、時間外手当の支給についてはそれを用いず、職員に事前に30分未満を切り捨てた時間外労働時間を勤務記録表に記載させて申告させ、その申告に基づき、職員に時間外手当を支給していた。本件期間におけるXの時間外労働についても同様の取扱いがされた。

▼ T法人は12年から13年にかけて、K労働基準監督署(以下「K労基署」という)の2度にわたる調査を受け、原則としてタイムカードに基づき時間外手当を支給するよう指導されたため、T法人は医事課職員の大半に対し、タイムカードの記載から1時間未満の時間外労働は除外した上、さらにその約6割にあたる時間外手当を支払い、Xには34万7411円を支払った。

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