#304 「技術翻訳事件」東京地裁(再掲)
2012年2月8日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第304号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【技術翻訳(以下、G社)事件・東京地裁判決】(2011年5月17日)
▽ <主な争点>
賃金減額に対する承諾の有無など
1.事件の概要は?
本件は、G社の従業員であったX(平成21年9月30日退職)が同社に対し、(1)21年6月分以降の賃金減額は無効であるとして、減額分の賃金、(2)Xの退職は会社都合として扱われるべきであるとして、自己都合退職として支払われた退職金との差額、(3)G社によって21年6月分以降の賃金を一方的に切り下げられ、さらに同年9月以降はさらに労働条件を切り下げることを通告され、退職を余儀なくされたことはXに対する不法行為に該当するとして、慰謝料200万円、(4)G社の給与規程に基づく未払時間外手当(19年12月分から21年10月分まで)および同額の付加金の支払いをそれぞれ求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<G社およびXについて>
★ G社は、翻訳、印刷およびその企画、制作等を行う会社であり、その主たる業務は翻訳業である。
★ X(昭和26年生)は、昭和56年6月、G社に採用されて以来、同社の制作部において、翻訳物の手配、編集等を行ってきたが、平成21年9月30日をもって退職した者である。
★ G社制作部の業務は、受注した翻訳対象の原稿を翻訳者に割り振り、出来上がった翻訳文をチェックし、発注者に納入する作業であり、同社の業務の中心をなすものである。Xは平成3年頃には制作部の最高責任者である次長に昇進し、以後、退職時までその地位にあった。
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<Xの賃金に関する定めと本件賃金減額等について>
★ 21年5月当時のXの賃金額は、次のとおりであった。
(1)基本給 27万2600円
(2)職務手当 9万6000円
(3)家族手当 2万6800円
(4)役職手当 5万6000円
(5)住宅手当 3万0000円
合 計 48万1400円
▼ 21年5月、G社は業績悪化を理由に役職者全員を対象として、同年6月分以降の報酬ないし賃金を20%減額することを提案したところ、Xはこれを了承しなかった。しかしながら、実際にXの賃金は同月分以降20%減額支給された(以下「本件賃金減額」という)。なお、本件賃金減額に際し、就業規則または給与規程の改定が行われた事実はない。
▼ 同年9月、G社はXに対し、「2010年度 労働条件通知書」を手渡し、同年10月以降のXの雇用条件として、(1)「制作部監督」となり、基本給は15万3000円に減額され、役職手当も付されなくなる、(2)外部フリーランスチェッカー・編集者になる、(3)同年12月末日まで上記(1)の基本給のみの支払いを受けて就職活動をすることを認め、同日をもって雇用契約を解除するといういずれかを選択するよう迫り、回答がない場合には(1)を選択するものとみなすと通告した(以下「本件雇用条件通告」という)。
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