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#282 「日本郵便輸送事件」大阪地裁(再掲)

2011年3月30日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第282号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【日本郵便輸送(以下、JP社)事件・大阪地裁判決】(2009年12月25日)

▽ <主な争点>
「期間臨時社員」制度の廃止と「地域社員」の募集に応じなかった従業員
に対する雇止め等

1.事件の概要は?

本件は、約13年にわたって有期労働契約を更新し、旧日逓(以下、旧NT社)において勤務してきたXが、雇止めが無効であると主張して、旧NT社を吸収合併したJP社に対し、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに未払い賃金の支払いを求めたもの。

なお、旧NT社においては期間臨時社員を正社員化するという人事制度改革にともない、期間臨時社員制度を廃止することになった。そして期間臨時社員に対し、正社員である「地域社員」の募集をしたが、Xはこれに応募しなかったため、旧NT社はXに対し、期間臨時社員としての契約を更新しない旨通知した。

2.前提事実および事件の経過は?

<旧NT社、JP社およびXについて>

★ 旧NT社およびJP社は、郵便物および通信事業に関連する物品の運送事業を目的とする会社である。なお、JP社は平成21年2月、旧NT社を吸収合併した。

★ Xは、平成7年9月、「契約期間3ヵ月、勤務場所を旧NT社近畿統括支店近畿運行管理センター、職種を大型運転士」とする「期間臨時社員」として旧NT社に雇用されて以降、契約更新を繰り返し、20年10月までの間、約13年間にわたって旧NT社において勤務してきた者である。

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<旧NT社がXに対して契約更新しない旨の通知を行うに至った経緯等について>

▼ 平成20年6月、旧NT社近畿統括支店近畿運行管理センターのA所長はXに対し、「地域社員およびシニア社員の取組みについて」と題する書面を手渡した。同書面には、期間臨時社員制度が同年10月をもって廃止されること、これに伴って、期間臨時社員を対象として地域社員およびシニア社員を募集すること、具体的な募集要領および地域社員制度の概要が記載されていた。

▼ Xは応募期限である同年6月30日までに上記地域社員制度への応募書類を提出しなかった。

▼ 旧NT社近畿統括支店長は同年8月、Xに対し、期間臨時社員制度の廃止に伴い、同年9月1日以降の契約については、同年10月31日をもって終了となり、更新できない旨の通知をした。

▼ Xは旧NT社に対し、書面をもって、同年9月1日から11月30日までの契約締結および雇止め理由証明書の交付を求めた。これに対して、同社は同年10月31日までの契約でなければ応じないと回答したことから、Xは同回答の内容に沿った契約書に署名押印した。

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