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#325 「Y社事件」大阪地裁

2012年12月12日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第325号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【Y社事件・大阪地裁判決】(2012年4月26日)

▽ <主な争点>
自宅待機命令期間中の賃金請求など

1.事件の概要は?

本件は、雇用主であるY社から自宅待機を命じられ、賃金の6割相当額のみを支給されていたXが賃金請求権に基づき、上記支給額と差額(将来分を含む)の支払いを請求するとともに、Y社の上記行為が不法行為に当たるとして、損害賠償の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Y社およびXについて>

★ Y社は、飲食店の経営等を目的とし、関連会社においてキャバクラ等を全国展開している会社である。

★ Xは、平成22年7月1日、職種に限定のない総合職としてY社に採用され、法務部法務課配属となり、各種契約書の精査および作成の業務を命じられたが、試用期間が満了した同年10月1日、一般職に降格されるとともに、試用期間が1ヵ月延長され、同年12月1日には危機管理部へ配置転換された。

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<本件自宅待機命令に至った経緯等について>

★ Y社の人事評価については、試用期間中のXにつき、一次評価者は「基本的なビジネスマナーができておらず、また、実務経験が少なく知識に頼るため、弁護士対応は厳しいと見られる。ただし、考え方については非常にポジティブであり、人間性は評価できる」としていたが、試用期間終了後の22年10月~23年3月期には「期待にそぐわない点も多く、以後雇用することは難しいと考えている」として、総合評価は5段階のうち最低の1とされた。

▼ Xは23年3月4日、Y社から合意退職を要求された。また、同月9日から11日にかけて、同社から法務担当者としての専門能力、社会人としての基礎的能力の欠如を理由に解雇の可能性を示唆しつつ退職を促され、退職合意書のひな形が手渡されたが、Xは一貫して退職を拒否した。

▼ Xは同月、労働組合(以下「組合」という)に加入し、組合からY社に対して、Xに対する退職強要等についての団体交渉申入書が送付された。Y社は同月25日、組合に対し、団体交渉に応じる旨の回答書とともに、Xに対し、同月26日、28日および29日の自宅待機を命ずる旨の回答書を送付した。

▼ Y社は同月31日、組合に対し「これまでのスキル不足から、任せられる業務がないため」として、同年4月1日から21日までの自宅待機を命ずる旨の通知書を送付したが、以後も延長が重ねられ、現在に至っている(以下「本件自宅待機命令」という)。

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